マリアナ王国とサーナス侯爵領
セシルによる勉強指導がはじまって1週間が経った。2歳だから字を読めるようになることからはじまるかと思いきや読み書き、計算そして貴族の作法や言葉遣いなど同時並行で行わなければならず、かなりハードであったが、すでに高校生程の頭脳であるアルスにとって、勉強面は難なくこなすことが出来た。
「アルス様、この歳にしてここまでこなされるとは、鬼才ですな。サーナス侯爵家も安泰でございます。ハッハッハッハ」
セシルは誇らしそうに笑っている。
なぜなら、王立学園に入学するために勉強すべき内容の半分程度を1週間でマスターしたからである。
王立学園とは、マリアナ王国の国営の学校であり、10歳になったマリアナ王国の子供たちは受験資格を得る。貴族と庶民による身分差別はなく、完全実力主義である。難易度はマリアナ王国で1番高く、貴族にとってのベースラインとなっている。
「セシルの教え方が上手だからすぐ理解出来たよ!」
アルスは笑顔でセシルに応えてみせた。
しかし、実際は小学校高学年程度の勉強であり、簡単すぎる!なんて言えなかったのであった。
さて、かなり暇になってしまった。本来数年かけて勉強する内容の殆どを1週間で終えてしまっている。アルスはこの世界のことを知りたくてセシルに次を教えるように催促した。
「セシル、あとなんの勉強をすればいいの?」
「はい、アルス様。残りはマリアナ王国の歴史、地理でございます。」
「ほんとに!やったー!!」
アルスは前世の知識はあっても、この世界の歴史や地理は一切分からなかった。
知らないことを勉強することから、アルスはとてもワクワクしていた。
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マリアナ王国の勉強を始めて1ヶ月がたった。試験内容的には浅く内容を覚えるだけで試験は大丈夫である。
しかしアルスは必要以上に勉強をした。
そして、ようやく一通りの事が分かってきた。
まず、このマリアナ王国には騎士爵から公爵そして名誉貴族を含めて122家の家があることがわかった。内訳では、騎士爵家が26家、男爵家が38家、子爵家が26家、伯爵家が16家、侯爵家が5家、公爵家が2家、そして1代限りの名誉貴族が9家である。名誉貴族は一律名誉子爵であり、正式な子爵家と同格とされている。
この内、騎士爵家と男爵家、名誉貴族は領地を持つことが出来ず、領地を持つ貴族の領地で代官を務めるか、王都で官僚になるか、他国と繋がる街道の関所の代官になる事が多い。
子爵家、伯爵家、侯爵家、公爵家となると多くが領地を持ち、持たぬものは王都で中位官僚を務め、法衣貴族と呼ばれている。
また、伯爵家や侯爵家ともなると高級官僚つまり大臣を務めることが出来る。そして最後に公爵家である。公爵家は王室と繋がりが深い家に与えられる爵位である。現在大公家が存在しないため、王族を除く権力者としては公爵家が1番となっている。
そして人口だ。人口は全体で約400万人。この世界ではかなり多い方だという。この内、王都サルサには約86万人が住んでおり、人口規模は国内1位となっている。
そして、サーナス侯爵領についてだ。
サーナス侯爵領はマリアナ王国王都であるサルサよりコノマスとセムスの2つの領を経た先にある西には山地、北と東には平野、そして南は海に面した領地である。領都はスパムで人口は約32万人で領全体では約50万人を擁し、マリアナ王国3番目の規模を誇っている。基幹産業は農業と漁業と鉄鋼業である。領都は中央に位置し、北と東で農業、南で漁業、山地のある西で鉄鋼業とバランスの良い経済都市となっている。
アルスは、この他の領地のことやこの国の気候、更には他国のことまでかなり多くのことを学んだ。
そして、アルスが全てを学び覚えきるまでおよそ3ヶ月の月日を要した。
しかし、この勉強が今後とても役に立つとは、この時アルスは思いもしなかった。
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