第15話 ギャップ萌えの模月先輩
「模月先輩、今日の放課後って用事ありますか?」
「取り敢えずこの一週間は空けたわ」
「わざわざ、すみません」
「別にそのくらい構わないわよ、今回依頼したのは私だし、逆に付き合って貰って悪いわね」
「気にしないで下さい、部活の活動の一環だしさらに模月先輩の彼氏役になれるなんて嬉しいですよ」
「お世辞が上手ね」
「お世辞じゃないですよ」
先輩と付き合う事になった次の日、取り敢えず食堂で一緒に昼食を食べることになった。
ここ、白塚高校の学食はお金持ちの家庭が多く、それに恥じない様な作りになっているのが今先輩と食べている第一食堂。
普段多くの学生が利用するのが第二食堂でリーズナブルな価格が多い。
俺は普段はよくこっちを使うのだが流石に今回は先輩に合わせるのが筋だろうし、いくら第一食堂が高いとは言え払えない額でもない。
またこの高校自体、大体の生徒の雰囲気が良く、金持ち以外第一食堂を使ったらいけないや、マナー良く食べろなんて風潮もない。
よって俺は頼んだ海鮮丼を気兼ねなく美味しく頂いている。
しかも今回は妹が経費で落とすとか言ってくれてるので普段の3倍はおいしく感じる。
「先輩は今日どこか行きたい所とかあります?」
「今日は放課後一緒に本を読みたいと思ってるの、どうかしら?」
「読書ですか」
いきなり悟史に教えてもらったデートコースを使わなくていいのは助かったがまさかの展開である。
妙な間を察したのか、少し心配そうな顔で覗き込んでくる。
「駄目だったかしら」
「えっと、いいと思いますよ」
「良かったわ、男の人と遊ぶなんて今まで無かったから楽しみだわ」
「なら良かったです」
とは言ったものの内心はどんなデートになるか不安でいっぱいだった。
取り敢えずセーブ機能を探したが見つからない、やはりこの世界はクソゲーである事は間違いないようだ。
どんな鬼畜な死にゲーすら基本あるとゆうのに。
と言う訳で現在先輩と一緒に読書をしているのだが俺は物の10分程度で飽き始めていた。この学校はラノベや漫画が無いのである。
「先輩よくそんな難しいの読めますね」
先輩の持って来た本のタイトルをざっくり見てみてみると実用書の類が多く
どれもこれもなりなりの厚さで、中には英語で書かれた物も混じっている。
「私なんて全然よ」
謙遜と言った感じでもなく本に目を通しながら答える。
「そんなこと言われちゃうと、俺らなんて遊んで疲れたら寝てるだけですよ」
「それでいいじゃない、それこそ学生の本分よ」
「そうですよね、これからも沢山遊びます!」
「とは言いつつも立場上言うけど勉強もしっかりね」
「ですよね」
向けられた苦笑いに苦笑いで返す。
「でも先輩元々成績いいですよね、それ以上勉強して何か目指してるんですか?」
「う~ん、特にないかな」
「特に目標がないのにそんな勉強するんですか・・・」
「家の跡継ぎだから多少勉強しておこう、みたいなのはあるけどきっと元々勉強自体好きなのかもしれないわね」
「跡継ぎですか」
「そう、跡継ぎ」
「ただそうならない可能性も十分あるんだけどね」
「いろいろ大変なんですね」
「物心ついたころからこんなだから慣れちゃったわ」
「あなたには将来の夢とかないの?」
「う~ん、世界平和とかですかね」
「それはまた大きな夢ね」
「そうですよね、あはは」
でもこれがあながち間違いじゃないのが困る。
「子供の頃はいろいろ夢があったはずなんですけどね」
「例えばどんなのかしら?」
「笑いませんか?」
「笑わないわよ」
「・・・正義のヒーローになるだったり、お金持ちになるとかですね」
「子供っぽくていいじゃない」
「次は先輩のも教えて下さい」
「え、私?」
「俺だけ恥ずかしい思いをするのは不公平です」
「えー恥ずかしいなぁ」
赤くなった顔を本の中に隠す。
ギャップが可愛いなこの先輩。
「あー俺も凄い恥ずかしかったのになー」
「分かりました、言いますよ!」
「お嫁さんですよ、お嫁さん、これでいいですね!」
そう言うとぱっと立ち上がって読み終わった本を戻しに行ってしまった。
「まあ、先輩ならすぐ叶えそうだな」
うつ伏せになって適当に視線を遊ばせていると先輩の持ち物の中の小難しそうな本の中に隠すように何冊が気になるタイトルが並んでいた。
モテる恋愛術!これで男はあなたの物に!
男子に聞いたきゅんとする瞬間best100!
先輩かわいい、これがいわゆるギャップ萌えか!
普段は真面目で話しかけずらい雰囲気があるが、内面を知ってしまえばどこにでもいる普通の女子高生だ。
俺のパラメータが高ければ喜んで攻略したが、あと二、三周同じ人生を歩まなければパラメータは満たされないだろう。
先輩が帰って来て再び席目の前の席に着いた。
顔を見るとまだ少し赤いのが分かる。
「えっと、先輩の子供の頃の夢もいいと思いますよ」
「それはもう忘れてくれていいから」
力なさげな声が帰ってくる。
「なら出来るだけ早く忘れるようにします」
「そうして頂戴、それよりあなたが読んでるその本はどんな内容なの?」
「これですか」
読みかけでハの字にしてあった本を先輩に渡す。
「猫の種類とその解説ですね」
せめて写真が多くて読みやすいのを選んだ結果がこれだった。
「猫いいわよね、私も飼いたいのだけど家族に猫アレルギーの人がいてね」
「それだと飼えないですもんね、なら明日は猫カフェに行ってみませんか?」
「いいわね、前から興味あったのだけど中々行けなくて」
「じゃあ明日の放課後はそこで」
「楽しみだわ」
今度は楽しそうに写真集を読み始める。
最初は読書しながらのデートなんてどうなるかドキドキしていたが、いざ始まってしまえばとても楽しかった。
「そろそろ帰りましょうか」
「そうですね」
猫の本に二人して熱中していると時間はあっという間に過ぎていた。
本を元の場所に戻して二人で校門まで歩く。
「でわまた明日ね」
「はい、また明日」
そしてルンルン気分で家に帰ると俺のベットで妹ではなくトラが寝ていた。
「お帰りお兄ちゃん、トラ飼っていい?」
「ダメに決まってるだろ」
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