第16話 ネコ科はネコ科でも

「やっぱダメだよね」


逆にどうしたらオッケーだと思ってたんだ。


「てか、そもそもなんで俺の部屋にトラがいるんだよ!」


「防犯カメラ見てみたら、あんたのクラスの数人がトラをこの部屋に入れてたわ」


「何考えてんだあいつらは、俺と妹が襲われたらどうするつもりだ!」


「一応そうならないように調教はされてるみたいだけどね」


そう言うと妹はなんてことなさそうにトラの横に座ってトラを撫で始め、

トラは気持ちよさそうに体を伸ばしてもっと撫でろと要求してくる。


「なんか猫みたいだな」


「ネコ科だしね」


「にしてもお前、怖くないの?」


流石にいくら人に慣れてるとはいえ、トラである。

知らないで部屋を開けてこれなど俺な失神物だ。


「事前にセンサーで誰かが開けてたのは分かってたから確認してトラが居るのは分かってたし、それにトラくらいなら私一人でも無力化できわよ」


「お前何者だよ」


「未来から来た美人エージェントよ」


「それが噓じゃないのが困るな」


「にしたってなんで又、部屋にトラなんて入れられる様な事したのよ」


「別にそんな事した覚えはないんだけどな」


するとナイスタイミングでメールの着信が響いた。

何となく嫌な予感がしてメールを開くと、まあ何か予想通りだった。

しかめっ面が顔に出ていたようで


「どうしたの?」


妹にそのままメールを見せた。


「猫カフェに行くなら練習にトラを送っておいたのでそいつで練習して下さい、あなたの親友共々より」

「追伸、必要以上に仲良くなるような事があれば・・・」


「まごう事無き脅迫文ね」


「今日先輩と猫カフェ行こうって言ってたのが誰かに盗聴か、盗み聞きされてたな」


「この学校って何気にみんなスペック高いわよね」


「そうなんだよな」


この学校の基準の馬鹿は、そこら辺の普通高校の中ではそれなりに頭がいい方に属するのだ。

まあ、そしてなぜかその馬鹿がオレの周りに多いのだが。


「であんた明日先輩と猫カフェ行くんだ」


「そうだな」

「無事に帰ってこれるかどうかが分からないけど」


「それなら明日、私もついて行ってあげてもいいわよ」


「マジか、そうしてくれると助かる」


体育祭で部ごとの出し物や立ち回りのすり合わせとして、この一週間の事をみんなに説明しているがその程度では止まらない輩も一定数この学校にはいるのである。


女性と仲良くして命を狙われる奴なんて世界を探しても早々いないだろう、まあ仮に俺の親友たちが恋なんかの素振りを見せたら問答無用で同じ様な事をするのだが。


「全く、あのゲス共(親友たち)と一緒にいるとこっちまで、馬鹿に(楽しく)なるな」


「教室の中ではせいぜいその建前と本音を間違えないようにね」


「おっとついうっかり、俺は噓がつけないからなぁ」


「噓から出来たお兄ちゃんが何言ってるんだか」


ふと気になって尋ねる


「所で妹よ、未来の恋愛とはどうなっているのかね」


「う~ん、そうね」


トラに寄りかかり、目を閉じながら話し始める。


「…そうね、今とそんな変わらないかな」


「と言うと?」


「顔が良かったり?頭がよかったり?運動出来たり?頭がよかったり?」

「まあ、多少頭がいい人の方がモテる割合は多いかな」


「なるほどな、ちなみにお前はどんな人がタイプなんだ?」


すると喜々として話始める。


「そうね、イケメンで優しくて、お料理上手で!あ、家事が出来きてね!

話してて面白くてね、高級な飛行艇を乗り回しててお金持ちで!なにか辛いことがあった時はどうしたの、なんかあったって声かけてくれて。

記念日とかは毎回しっかりとお祝いしてくれて、プレゼントくれるの!

それからね、仕事だと完璧なんだけど私の前だと少し抜けてる所が可愛いの!

それから、それから


「なるほど、つまり要約すると俺だな」


「顔が面白い以外全く条件と一緒じゃないし、私のお兄ちゃんは頭の方も面白い事になってるの?」


「そんなに褒めるな、我が妹よ」


「だめだこの兄、早く何とかしないと」


「しかしまあ今の会話で分かった事がある」


事によってはこれは今回の相談にも使えるかもしれない。


「お兄ちゃんの顔と頭は面白いって事?」


「いや、違うわ!」


要は過程と結果、方法と目的。

言葉で指摘する方法は簡単で手間は取らないしすぐにこの問題を解決出来るが、今回はまだ時間もある。

所々でこの様な会話をしていれば模月先輩なら気付くのではないだろうか。

でもそもそも何で今回模月さんがいきなりデートして欲しい何て結論を出したのだろうか、まあそこは俺の考える所ではないだろう。


それにせっかくのあの模月先輩とデート出来るならこれを逃す事は出来ない。


「宇宙でもモテるのはその基準なのかな」


「知らないわよ、あの変体にでも聞いてみれば?」


「それもそうだな」


チャットアプリから悟史の名前を探し通話ボタンを押す。

普段から交友関係が狭いとこうゆう時に楽なのだ。


2コール目で聞きなれた声が聞こえてくる。


「もしも~し、良太君どしたの?きゅうに俺の声が聞きたくなっちゃたの?」


「そんなロマンチックな事はないから安心してくれ、宇宙のモテる基準について教えて欲しいんだけど?」


「それなら簡単、地球と同じだよ」


「やっぱり、お金とか顔とか性格か?」


「だいたいはそうなるね、この僕みたいな感じ」


「そのネタはさっきやったからいいとして、だいたいって言うことは基準が違うところもあるのか」


「当たり前じゃないか、地球でもそうだろ?」


「そうか?」


少し頭を捻って考えてみるが思い浮かばない。


「ほら、部族とかの結婚とか儀式とかあるじゃないか、そうゆうところだとまた少し違ってくるだろう?」


「なるほどな」


言われてみればその通りだ。


「ありがとう、参考になった」

「ちなみに悟史の好きなタイプってどんな人なんだ?」


「それはもちろん、キミさ☆」


「わーめちゃくちゃドキドキする、どうしよう」


「棒読みじゃなきゃ嬉しいんだけどね」


女の子の状態の悟史に言われるならまだしも、俺にはそうゆう性癖は持ち合わせていない。


「こっちは結構言うのドキドキしたんだけどな、なんなら今から二人でその研究もかねて惑星旅行でもどうかな?」


「もう夜も遅いし遠慮しておくよ」


「残念だよ、行きたい時はいつでも言ってね」


「多分ないとは思うけどその時はお願いするよ、じゃあな」


「うん、また学校でね」


独特な効果音を立てながらスマホの通話が終了した。


そしてふと考える、琴音さんはどんな恋愛をするのだろうか。

人の考えてることが読めてしまう彼女が好きになる人はどんな人なのだろうか。

今はまだそこまで踏み込む気も、勇気もないけどいつかは聞いてみたいと思う。

ただ今は、友人として彼女に出来る事があればしよう。


そんな事を彼女からメールが来た


「話しながらだときっと上手に言えないから伝えたい事だけ書きます。

今回の彼女の依頼内容は半分ほど噓が入ってます。

私にはその半分がどんな意味なのかは申し訳ないですが分かりません。

伝えるのが遅くなってごめんなさい。」







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