第8話 青田君は相手を見ない

「えっと今なんて?」


思わず聞き返す。

自分の耳が信じられなかったが、どうやら自分の耳を信じるしかなさそうだ。


「だから緑が振られたって言ってんの」


少し苛立ちが含んだ声が返ってくる。

どうゆうことなのだろか、こんな好条件を断る男子は片手に収まるレベルなのだがどうやら彼は片手には収まらなかったらしい。


「その時の状況を聞かせてくれ」


「本屋から出て来て告白して、少し話して涙流してさ」

「初めはうれし涙かなって私思ったんだ、でも様子がおかしくて緑がこっちに向かって来たからどうだったの?って聞いたら振られたって。

振った理由が分かんなかったから青田君を探したけど既に居なかったわ」


「ちょっと行ってくる、青田君の今の場所教えてくれ」


「変動前は普通にいたけど今日は分からないわよ」


「了解、あんがとな」


軽く羽織ってそのまま靴を履き玄関から飛び出した。


「青いわね」


自虐的に笑った声が部屋に静かに響いた。





「はー」


ため息をついた。

何とかしなきゃと部屋を飛び出したはいい物のまだ家には帰っていなくて無駄足だった。

とゆうか俺は何をしてるんだろうか。

自分の不甲斐なさを棚に上げていったい青田君と何を話そうとゆうのか。

自分は話す資格がるのだろうか、過去に過ちを冒してしまったに。

そもそもこれは青田君と緑さんの話ではないのか、俺がそこに入る意味があるのだろうか。余計なお世話、お節介ではないのか。

結局は過去の自分に対する自己満足なのかもしれない。


こんな事を考えながら、取り合ずいそうな候補として考えた公園に彼はいた。


「いっちゃったか」


そうつぶやくと自販機でお茶とコーヒーの二つ買った。


青田は公園のベンチでこの世の終わりのような顔を浮かべて下を向いていた。

近くまで歩いて行き取り敢えず隣に座りお茶とコーヒーを差し出した。


「好きな方飲んでよ」


少し戸惑っていたようだが大体の事情をあっちも察したようだ。


「ありがう」


そうゆうと彼はコーヒーを選んで蓋を開けた。


「コーヒーおいしいよね、この間カッコつけてブラック飲んだら嫌になったけど」


「ふっ」


軽く二人して笑った。


「なんで緑さん振ったか教えてくれ貰ってもいいか?」


「僕と緑さんが付き合ってるっていきなりみんな知ったらどうなると思う?」


ああ、そうゆう事か。


「僕なんかとは不釣り合いだし、彼女にはもっといい男がいっぱいいる」

「それに周りからはきっと笑われる、僕は笑われるのは構わないけど彼女が笑われるのは僕には耐えられないんだ」

「なら、最初からそんな事起こさなきゃいいやってそう思ったんだ」


「お前の気持ちはどうなんだ?」


「今すぐ彼女の所に行って僕も好きだって伝えたいよ」


同じだあの時の自分と。


「・・・」


沈黙に耐えかねたように彼は言葉を継ぎ足した。


「・・・ならそうしろよって言わないんだね」


「俺もいろいろあってさ、少し聞いて貰いたい昔話があるんだけどいいか?」


「いいよ」


「昔、俺ってモテモテだったんだ」


「ブゥゥーーーーー!」


青田が飲みかけてたコーヒーをマーライオンのごとく盛大に口から噴出し、

ついでに何か茂みから音が聞こえるが野良猫かなにかいるのだろうか。


「ははははは」


「そんなに笑うなよ」


少しむくれて、そっぽを向く。


「ごめん、ごめん続けて」


笑いをこらえながら続きを促されるの仕方なく続ける。


「ある時さ、告白を断ったんだよ。

周りの目を気にしてさ、なんかそんなので浮かれるってガキみたいだなってさ」

「ひどい断り方だった、今でも後悔してる。

いざ自分が恋して告白するってどんなに大変かってやっと分かってさ。

そして彼女が他の男と話す度に痛くなるんだ。

でももう失った物は取り返せない、いくら後悔してもさ」


言い終わるとお茶を思いっきり飲んだ。

苦かったがお茶くらいの苦みだったら、昔ほど感じなくなっていた。


「緑さん言ってたぞ、自分が好きで相手の気持ちが知りたいから告白するんだって

緑さんともう一回答え合わせして来たらどうだ?

これは命題だから答えは簡単にでるぞ」


少しの間の両者の沈黙。


「僕も今から直接会いに行って来るよ」


「頑張れよ」


「うん、ありがとうこのお礼はいつか」


「気にするな日頃のお礼だ」


青田君が公園から出ようとした所に目当ての人が現れ、茂みからガサゴソと音がしたかと思うといつもの3人が現れた。


思わず苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。


「やだなぁ、良太君そんな嫌そうな顔しないでよ」


俺の顔とは対照的に悟史君は天使のような笑みを浮かべている。

いや残る二人でもある。


「どこから聞いてた?」


未咲が笑いながら、俺の真似をしながら答える。


「俺、昔モテてたんだ」


もう二人して大爆笑である、しかし琴音さんだけが違う種類の笑みを浮かべている。


「かっこよこったですよ良太君!命題だから答えは簡単だろだなんて!私にも言って下さい!」


「あああああああ、忘れてくれえええええぇぇぇ!」


二人は更に笑いを加速させオーバーヒート寸前であった。


「まあでも、あんたの少しかっこよかったわよ」


「そりゃどうも」


未咲から甘いコーヒーが投げられる。


「俺は苦いのが好みだ」


せめてものカッコをつけた。



その後の二人の話については割愛させて頂く。

誰もそんなの聞きたくないだろ?




・・・成就してしまった物ほど面白くない物はない。



帰りのホームルームが終わり思いっ切り背伸びすると、後ろの席からちょんちょんと肩をつつかれる。


「なんだ我が妹よ、構って攻撃か?」


「キモ、邪魔なのと後今日はあんたが部室の鍵を持って来る番だからね」


「へいへい」


「じゃあ先行くから」


そう言って部室へ向かった。


「私もついていきましょうか?」


琴音さんが話し掛けて来てくれるのは嬉しいがそのおかげで相変わらず男子からの殺気が消えてくれる気配がない。

ちょっと男子~、妬み嫉みは見苦しいですよ。


「大丈夫だよ、俺も鍵とったらすぐ行くから先行ってて」


「分かりました」


「じゃあ一緒に行こうか」


悟史が横に並んで話掛けるが相変わらず仲が悪いようで


「お断りします」


「つれないな~」


そうして二人も教室を出て行く。


バックにに教科書を詰めようとしたら手紙が入っていた。

これが果たし状か、殺害予告か、呪いの手紙かと思っていたが、ハートのシールで封が抑えてあった。


私にも春が来ました。











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