徒然なる髪に (ねこやなぎ会#5 髪)
髪は大事だ。そんなこと言われても、みたいな声が聞こえてくる気がする。しかしこの変わり映えしない日常を過ごしていく中で、髪は身近にあるものの中でも手軽に楽しさや喜びを与えてくれる素敵なアイテムだ。これは髪を愛し、眺めるのを趣味とする一般人の書き散らしである。
まず長さの話をしよう。髪には長さがたくさんある。坊主から始まって床に着くぐらいまでのロング、そのどれもが魅力的だ。髪が好きというと長いのが好きなんでしょ? と思われるがそうではない。どちらかと言うと長さより質の方が大事だ。艶は髪の毛一番の飾り。
と、話が脱線してしまった。短い方からいくが、坊主はもう究極だ。顔の造形が前面に出てくるのでオシャレとはかけ離れているかもしれないが、野球部などのマーク的意味があったりもして、長さのミリ単位でも印象が変わる面白い髪型である。以前坊主のモデルさんが大きな耳飾りをしている写真を見たことがあるが、物凄くカッコよかった。
続いてショートである。一概にショートと言っても色々あるが、ベリーショートと普通のショートに分けよう。
大抵の男性はここら辺に当てはまっていると思うが、ベリーショートをワックスなどで固めた髪は動きがあってカッコいい。普通のショートであれば女性にも多いがこのくらいの髪の長さだと派手な色にしても地毛との違いが分かりやすくて魅力的だと思う。すぐに伸びるので髪質の管理がしやすいのも利点といえよう。
次にボブ。男性人気一番の女性の髪型というが、アレンジがしやすくなるのが理由だろうか、それとも髪の先が顔まわりにくるので顔の魅力が引き立つのだろうか。いずれにせよ女性からも人気の髪型だ。どんな髪型でもそうだが、ボブは特に外ハネと内巻きの差が激しい。印象も大きく変わる。そういうアレンジの楽しみがあるのもボブの魅力だ。
セミロングに移ろう。個人的には一番好きな長さなのだが、他の人からするとどうなのだろうか。ここまで来ると結んでも少し髪が余る感じになってくる。そうするとヘアアレンジは自在になってくるのだ。纏めてもよし、少しだけ垂らすのもよし、髪飾りを止めるだけの髪もある。視認もできるし、ものすごく楽しい。
次はロングだ。アレンジの話で言えばさらに幅が広がるが、一つ難点がある。ここあたりになってくるとお風呂に入るのが億劫になってくるのだ。正確に言えば髪を洗うのと、上がったあとに乾かすのが面倒くさくなる。ショートに比べると乾かす時間だけでも雲泥の差だ。美容院でもロング料金を取られたりもする。しかしロングぐらいになると後ろに流していた髪を前に流しても勝手に戻らなくなってくる。髪をマフラーがわりにできるあの夢はここら辺から叶ってゆく。冬は暖かい。
スーパーロングの話をしよう。スーパーロングとは? と疑問を持つ方もいると思うが、ロングより長い状態、のことをいうらしい。……とはいえ曖昧な表現だ、ロングを肩甲骨あたりの長さだとして、スーパーロングは腰あたりと定義してみる。ちなみに、腰あたりの髪の長さの人なんてあんまりいないと思われるかもしれないが、実は街を歩いていると結構いたりする。実際これを書いている私もスーパーロングだったことがあるくらいだ。このぐらいの長さの髪の毛はほんとうに可愛い。歩くたびに揺れ、髪の毛の存在感は凄まじい。その代わり重量が凄まじいので、肩凝りと契約を交わすかたくさん梳いてもらうか、究極の選択が必要だ。
最後にそれ以上の話をしよう。それ以上の長さの人の髪が与える第一印象は大体が『髪』である。髪好きにとっては天国以外の何者でもないが、顔の印象を大事にするなら結ぶやらなんやらをすることによってスッキリ見せる方法が必要不可欠といえよう。髪質の管理も大変なので、摩擦を防ぐため寝る前にもまとめて、可能ならオイルやナイトキャップやらなんやらで保護して優しく労ってあげよう。
ここまでは長さの話をしてきたが、髪は前髪も大事だ。あるかないかで言えば好み的にはあったほうがいい。けど髪質ってのは残酷なもので、前髪は一番癖毛やら湿気やらの影響を受けやすい場所だ。ちなみに、癖毛の前髪は雨の日人権を失う。うねった毛はあらぬ方向に向かっていき、湿気を吸収した時の髪の状態はまあ悲惨。女子高生やカップルの片割れが事あるごとにトイレで前髪直し──彼女らが携帯用のヘアアイロンで前髪のカールやちぢれを直したりヘアキープで必死に形を固めたりする事を化粧直しに倣って私はそう呼んでいる──をするように、前髪が命という人までいるのだ。
前髪にも種類がある。ぱっつんだったり、流したり、ワンレンは前髪に入るだろうか。でも前に垂らしてたら前髪か。
ぱっつん前髪のいいところはミステリアスな雰囲気が出るところだ。髪色にもよるけど、黒髪ぱっつんの前髪で眉毛が隠れていると、表情が出にくくてかわいい。
雑誌を見ていると前髪の幅を少なめにとってシースルーのようにするのが最近の流行りのようだけど、いい感じに透け感がある前髪は本当に魅力的だ。眉毛の形もわかる。うん、よくわかっているじゃないか。
流した前髪も本当にかわいい。個人的に流すときの前髪は八対二が理想だが、みんなはどうだろうか。少し長めの流してた前髪がバサッと前に落ちて少し目が隠れるのもまたかわいい。邪魔だから切ろうかな~となるのもそのあたり。
ワンレンは前髪に入るんですかって話をさっきしたけど、後ろにまとめたらそれは後ろ髪、前に垂らしてたらそれは前髪だという説を推していく。というわけでワンレンは前髪。あれのなにが魅力的かというと、おでこが出てくれるところである。
横髪の有無はその時の流行りにもよるだろうか。
二次元と三次元でも違う。二次元だと後ろ髪と同じぐらいの長さの可愛い横髪デザインは多いが、現実にやってみるととてもダボったくなったりする。
流した延長で顎あたりまでの横髪はよく見かけるが、そのぐらいの横髪は巻くと顔まわりに動きが出て非常に魅力的だ。
二次元の横髪というと、一昔前にインテークなんてのも流行った。車の空気吸入口から来ているらしいそれは絵柄の変遷と共に消え去ったかと思われていたが最近また出てきたりしている。頭頂部を一度持ち上げて下ろすそれは小顔にする効果もある。なかなか動きを出しにくい頭頂部を飾ってくれるそれはまるでティアラのようだ。
髪色も大事である。人は見た目に第一印象を引っ張られがちであるが、まず真っ先に見るのは顔周辺だという。そうすると目に入るのは顔立ちの詳細な情報よりも髪、ひいては髪色が真っ先に飛び込んでくる。第一印象は髪色と言っても過言ではない。
まず現実に多い髪色の話をしよう。
正直嫌いな文化ではあるがこの国では黒髪は誠実さや真面目さを表すものとして使われることがある。黒髪でも不良はいるし、金髪でも真面目な人はいるわけで、そんなわけは全くないのだがこれはもうお国柄としか言いようがない。
ただ、黒髪にも魅力は沢山ある。重めのカットにすればミステリアスな印象が生まれるし、カット次第ではモダンな印象にもシックな印象にもできる変幻自在な髪色である。
茶髪はどこに行っても見かけるが、色だけの話をすれば茶色は実は嫌悪色と呼ばれる色である。不思議と多く見かけるのは顔の雰囲気が明るくなるからだろうか。黒髪だと色が強すぎて顔のトーンが少し落ちてしまう時も、茶髪にすればそれほど目立たないこともある。また、少し色が乗ることによって影が入りやすくなるため、アレンジした時の魅力も上がりやすいのも茶髪が多い理由の一つだろう。
最近だとアッシュ系の色も流行っている。くすんだ色が乗り、いわゆる透明感というものが出てくるものだ。光の当たり加減で色味が若干変わったりするのもこの系統の髪色の魅力だ。
金髪も捨てがたい。一目で明るい印象が入るのは金髪の大きな魅力だ、そこに艶が乗るとそれ以上ないぐらい魅力的だ。欧米では元々金髪の人でも歳をとるにつれてだんだんと色素が濃くなってきて、わざわざ色を抜く人もいるという。この国では先の黒髪の話のようにあまり好まれる髪色ではないし、色を抜くためブリーチを重ねることによって髪の毛に恐ろしいダメージが入るのであんまり推奨はされないが、惹かれる髪色ではあるとおもう。
派手髪というのも流行りつつある。元々漫画やアニメなどの二次元キャラに多い髪色であったが、そこからの影響で赤や青、ピンクなどと言った派手な髪色にする人が増えてきたのだ。今までにも高年齢層の女性では紫や赤は稀にみたが、街を歩くと鮮やかな髪色の人たちが歩いているのは多様性が認められているようでとても嬉しい。
カットや髪色の仕方だけでなくてアレンジの話もする。
巻くか巻かないかという話であればストレートはプレーンタイプのドーナツといった感じだ。そのままでとても美味しい。髪の毛の向きが揃うので、艶がもっとも出る髪型で、長さもこれが一番出る。
巻くのもかわいい。巻きにも種類があってフォワード巻きはゆるふわな雰囲気が出るし逆にリバース巻きはしっかり顔まわりが出るので明るくて可憐な雰囲気が出る。二つを合わせるミックス巻きはお互いのいいとこ取りができるし、手間をかけた髪型という印象もでる。
どこから巻くのかというのも重要で、毛先にだけ動きを出したい時は毛先から巻くと控えめにしつつ魅力が乗算されるし、根元から巻くとボリュームが出て愛らしさが増す。どちらをとってもかわいい。
また、毛先だけワンカールさせるという手法もある。外ハネなんかはその代表格で、逆に内側にワンカールさせても先が丸くなって柔らかい印象になる。最近だと根本から少し膨らませて毛先だけ外ハネにする複合的な髪型も流行っている。
波型に癖をつけるのも可愛くて、それ専用のヘアアイロンもあったりするほどだ。三つ編みにして寝ると似たようなクセがついて、朝のアレンジが楽だというのは便利すぎて誰にも教えたくないので、秘密にしておこう。
ここからは髪自体を加工するのではなく纏めたり編んだりの話をして行こう。
そうなると代表的なのは三つ編みだ。髪を三つに分けて、順番に位置を入れ替えていくと三つ編みになる。最初は難しいが慣れるとお手軽。大人になると使い所が難しいが、二次元だとかなり多用されているアレンジである。
似たようなもので編み込みというのもある。三つ編みは最初に結ぶ髪を三つに分けた後は新しい髪を使わないが、編み込みはその後位置を入れ替えるたびに新しい髪をそれぞれの束に追加していく。そうすることで髪に埋め込まれたような模様を作ることができるのだ。引っかかりができるので編み込みをすると飾りをつけるのも楽である。
手軽さでいうとくるりんぱというのもある。結えた髪の結び目を少し緩め、穴を作ってそこに余った束を通すものだ。見た目で言えば捻ったような髪の束ができて、美容室の雑誌でよく見かける『こなれ感』なるものを簡単に手に入れることができる。
捻るだけのアレンジもある。髪の毛を二本に分けて両方を同じ方向にそれぞれ捻ったのち、できたその束を合体させるのだが、その際にさっき捻ったのとは逆の向きで捻って止めるのだ。まさにツイストドーナツみたいな形になるが、まとめ髪の最後などに華やかさをプラスするのに使うと非常に効果的なアレンジである。
結ぶだけのアレンジだって多い。横で結んだり二つで結んだり、昔だと三つに結ぶなんてのもあった。結んだ髪の毛の余をさらに結んでボールが連なっているような髪型にするのもポップでとてもかわいい。
結ぶ時にできるのは結び目だけではない、髪の分け方も重要で、二つ結びなんかだとそれは顕著に出る。真っ直ぐ綺麗に分けてもいいがギザギザに分けても可愛いし、わざと結び目を目立たないようにグジャグジャにしても良い。
最後に私が一番好きな髪型を紹介しよう。誰がなんと言おうとポニーテールだ。一番はポニテ。
ポニテを横から見てみた時にそのバランスを考えたことがあるだろうか。理想は顎から頭の中心を通って真っ直ぐ線をひいた位置に結び目がくることだ。そうすると顎も引き締まって、結び目の位置に少し膨らみが出る。その膨らみから降りる髪がなんとも魅力的だ。
長さの話をすると批判を呼ぶこともあるかと思うが、あえて言おう。ポニーテールだ。ポニーの、テールだ。尻尾になりきれなさそうな長さのそれは、ポニーテールではない一つ結びだ。せめて結んだ状態で顎ぐらいまではほしい。
なぜ長さにこだわるのか、それは揺れにある。髪の毛の魅力はほぼここに詰まっていると言ってもいい。移動した時や頭を動かした時、一つにまとめた髪の束はバラけて動きに追従した揺れを見せる。
バラけた時、その間からは頭の形だったり、それまで隠れていたうなじや服が見えたりする。いわばこの世で最も尊いチラリズムといえよう。髪と髪の間から見える何かという概念そのものがもう魅力なのだ。
これが短いとぴょんぴょんと跳ねるだけになってしまう。揺れというか、跳ねだ。それはそれで可愛いのだが、ポニテの魅力として話すには私の中では納得がいかないので、長さが短い一つ結びはポニーテールの中から除外する。
先ほどポニテの位置の話をしたが、実は一番下で一つに結えるのもポニーテールとしては納得していない。ポニー、テール……お尻の一番下から尻尾は生えてないでしょ! 真ん中より上! いやぎりぎり真ん中よりちょい下までなら! ぎりぎり!! ……失礼、取り乱しました。
兎にも角にも上記のように、ポニテはとても魅力的な髪型なのだ。みなさんもポニテにしてみたり推しにさせたり気軽にポニーテールを楽しんでください。ポニテはいいぞ。
そんなこんなで好きなだけ髪について語ってきたが、好きな髪型は見つかっただろうか。これをもし最後まで読んでくれた気の長い人がいたとしたら是非、今後の髪への付き合い方について一考してくれると幸いである。良い髪の毛ライフを!
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