第17話 横浜デート

 何とか乗り越えた後期期末テストを乗り越えることができた。

 わたしは朝早くに起きてしまって、何を着ていくのかずっと迷っていた。


 今日はかなでさんと横浜へ遊びに行くんだ。





「今日はおしゃれしてるね」


 それを言われてちょっとドキドキしてしまうけど、やっぱり気がつかれてると思ってしまう。


「え、うん。横浜まで行ってくる。帰りは夜になっちゃうかも」

「気をつけてね」

「うん」


 父さんは少しだけ気にしていたけど、とても楽しそうなことをしているのが見えた。





 地元の最寄り駅で奏さんと待ち合わせているので早めに家を出ることにした。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 駅前に向かうと改札前にある宝くじの売店の隣にいることがあったけど、わたしは奏さんが来るのを待つことのしたんだ。


「奏さん、いつ来るかな」


 待っていると改札から奏さんが来るのが見えて、思い切り手を振ってみた。


「あ、美琴みことちゃん、お待たせ」


 そのまま彼はそっと手を繋いで改札へと向かうことにしたの。

 自然な感じで繋いできたので少しドキドキしないことが多くなってきた。


「これから、初めてです。横浜、神奈川に行くのも初めてなんです」

「うん、美琴ちゃんが行きたい場所ってどこ?」

「中華街とみなとみらいに行ってみたいです」

「いいじゃん。中華まんを買って食べたいね。これからは楽しいと思う」


 奏さんと一緒に電車に乗って新宿まで行ってから乗り換える。

 横浜方面の電車は多くの人がいるけど、席にちゃんと座ることができた。


「疲れてない?」

「うん、奏さんも大丈夫ですか?」

「疲れてないよ。とても楽しみ」





 電車に揺られて一時間が経って、横浜駅に到着すると最初に元町中華街の方に向かうことにした。

 中華街の門を見ると、とてもワクワクしていた。


「何を買う? 美琴ちゃんは中華まんとかが良いかな?」

「えっと……まだお腹が減ってないから、良いかな」

「うん。まだ十時だしね」


 奏さんと一緒に中華街の有名な場所を見ていくけど、どきどき聞こえてくる声がとても地元違うんだ。


「美琴ちゃん。あれ見て!」


 手を引いてくれる奏さんがとても楽しそうに話をしているのを聞いて、目の前に広がっている風景を見て驚いてしまった。

 とてもきれいな洋館が目の前にあって、それがとてもきれいだったんだ。


「外交官の家だった場所だって」


 説明をしてくれた奏さんは目をキラキラさせて洋館を見ている。

 スマホで何度か写真を撮りながら回ることにした。


 わたしは明治から戦前にかけての建築とかファッションが好きなので、こういったことを大学で勉強がしたいなと思っていたんだ。


「こういった建物とかが好き? 奏さん」

「うん。明治から昭和の初期の建築とかを専門に行かなければ勉強してたかもね」

「そうなんですね。でも、被写体としては最高だと思います」


 奏さんがとても楽しそうな顔で写真を撮影してくれて、みんなが話しているのが見えた。

 そのまま洋館を見てからはお腹が空いていたので、中華街に戻って中華まんを食べることにしたんだ。


「お熱いのでお気をつけて」

「はい、ありがとうございます」


 わたしが中華まんを二つ買って一つを奏さんに渡したんだ。


「うん。ありがとう。ここの中華まん、食べてみたかったんだ」


 お店の中華まんはとてもおいしくて有名で、一度食べてみたかったんだ。


「いただきます」


 中華まんにかぶりついたときに熱かったけど、中身はとてもジューシーな感じで肉汁が少し熱かった。


「おいしいね。これだけでも、お昼満足かもしれないね」

「意外とお腹に溜まる……これで普通にご飯を食べるのはきつい」


 中華まんはとてもボリューミーでちょっとだけ他の料理を食べるのはきついかなと感じていたところだった。





 それから電車に乗ってみなとみらいへ向かうことにした。

 桜木町駅で降りるとみなとみらいの風景が広がっているんだ。


 目の前に停泊している帆船が見えたり、右側には大きな建物とかがあったりと見慣れた風景が広がっている。


「美琴ちゃん。カップヌードルの博物館があるんだって」

「そうなんだ。行ってみたいです」

「じゃあ、行ってみるか」



 一緒に横浜のあちこちを歩いて、あっという間に夕暮れ時を迎えた。

 寒さもだんだんと厳しくなってきて、コートの襟をぎゅっと手で持ってしまうことがある。


「寒くなって来たね」


 とても大きな客船が停泊しているのが見えて、これから世界一周の船旅に行くのかもしれない。

 あの船でいろんな場所に向かうのかと思うと、とても楽しそうだけど叶うことはないと思っている。


「すごい大きいね」


 奏さんが思わず写真を撮っているけど、お客さんが何人もその船に乗っていくのが見える。

 去年のオリンピックもあって外国人観光客はかなり増えてきている。


 横浜は何個かのアニメの舞台にもなっているから、それを目的に来ていることがあったりしている。


「あれ、外国の豪華客船じゃない?」

「すごい。あんなに大きいの初めて見た」


 その表情を写真に撮りたいなとスマホを取り出したときに日菜からLINEが来ていた。


「奏さん。これ、渡したかったやつ」


 わたしはさっきコンビニで買ってきたチロルチョコを渡したの。


「バレンタインのチョコ、テスト期間で作れなかったけど。来年はかわいいのを作ります」


 心臓がドキドキしてとても話すことができない。


「うん。ありがとう、美琴ちゃん」


 チロルチョコを手に取って懐かしそうに見ている。


「とてもうれしいよ。これ、子どもの頃から好きだったやつだよ」


 そのときに言いたかったことが思い出してきた。

 奏さんはチロルチョコを食べてから桟橋の手すりに寄りかかって海の方を見ている。


「奏さん」

「どうした? 美琴ちゃん」

「名前、呼び捨てで呼んでほしいです」


 何とか言うことができたけど、奏さんはびっくりした表情をしてこっちを向いている。

 わたしは心臓がドキドキしてなかなか落ち着くことができない。


「美琴って呼んでほしいってこと?」

「うん」

「いいよ。美琴」


 そう言われたときにとてもうれしくなって、少し泣きそうになってしまったんだ。

 ぎゅっと優しく抱きしめてくれたので余計に泣いてしまいそうになる。


「奏さん、好きです」

「俺も……これからもそうだから」


 その言葉を聞いて、優しく頭をなでてくれた。


 にじんだ視界にはまぶしい太陽の光に照らされて、奏さんが笑っているのがとてもまぶしく見えた。


「うん。ありがとう」





 そのときにスマホで時間を確かめたかったので、スマホのロック画面を見ることにしたんだ。

 すると、日菜ひなからメッセージが来ているのが見えたんだ。


和真かずまさんから告られた。つきあうことになった』

「えっ⁉」

「美琴ちゃん、どうしたの?」

「え、日菜が……和真兄ちゃんとつきあうらしい」


 その文面を見てとてもびっくりしてしまったんだ。

 奏さんも同じような表情をしているけど、少しだけ安心したような顔をしていた。


「なんか……ホッとしたかも」

「あ、わかる」


 和真兄ちゃんはあまり恋人がいたことがないというか、好きな人がいるっていう雰囲気を感じたことがなかったんだ。

 でも、日菜のことが好きなのは薄々気がついていたけど……告白するまで行くのかわからなかったんだ。


「でも、よかった」





 そのまま観覧車へと向かうことにしたのは、夕暮れを過ぎて夜景がきれいになって来た時間帯だった。

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