第16話 テスト初日
朝六時半、スマホで設定していたアラームが鳴り始める前に目が覚めた。
「う~ん。よく寝た」
わたしはいつも通りの時間に起きた方が安心するんだよね。
そのときに着ていた部屋着を脱いで制服に着替えていくことにした。
紺色のセーラー服、襟と袖口には赤い三本線がついているのは伝統のデザインだ。
初等部から高等部まではデザインが同じなんだけど、襟とカフスについている本数は違うのでそれで区別している。
アラームを止めたその手でLINEが来ているか確認していく。
二年生の文化祭で作ったまま放置されたクラスLINEが稼働していた。
クラスLINEのメッセージが来ていたのは午前二時過ぎ、テスト範囲を教えてほしいと書かれてあった。
みんな遅い時間になっても勉強していると聞いていたけど、平日は午後十一時前には寝ないと体がつらいタイプだ。
すぐにスマホとダッフルコートと今日行われるテストの教科書やノート、問題集が入っているサッチェルバッグは少し重くなっている。
一階のリビングのソファに荷物を置いてから、先に朝食を用意していくことにした。
テレビでは一週間前から開催されている冬季オリンピックのニュースが流れてきた。
うちも休みのときとか見ていたけど、とても選手たちが活躍しているのを見ていた。
あまり興味がなかったのに中継を見てしまうことがあった。
「
「父さん、おはよ。お昼には帰るから。ご飯を用意してほしい」
「わかった」
父さんはキッチンでトーストとスクランブルエッグ、新鮮な野菜サラダを持ってきてくれた。
一方、母さんは今年初めての海外出張からの帰りでまだ寝ているらしい。
朝のニュースは冬季オリンピックで日本代表が活躍しているニュースが大半で、今日は午前中から試合が行われる競技の注目選手を紹介している。
父さんからもらったトーストとかを口に頬張りながら、テレビを見ているけどコーンスープの良い匂いがしてきた。
「美琴。コーンスープも飲んでいきなさい。今日は冷えてくると思うから」
「ありがとう。父さん」
「体を冷やすと、あまり集中できないしね」
カレンダーには三日間にわたって矢印が書かれてある。
『美琴 後期期末テスト』
今日は二年生で最後の定期テストがスタートする。
朝食をすませてすぐに歯磨きと洗顔、寝癖とかを直してから髪を結って学校に向かう。
「行ってらっしゃい。美琴」
「うん。行ってきます」
「あ、ちょっと待って」
玄関先で呼び止めた父さんはマフラーについたゴミがついていたらしい。
「もう大丈夫だよ。行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
家を出るとタイツを履いても寒さが伝わってくるけど、今日はあまり寒さが厳しくない。
電車のなかはとても混雑していて、制服を着た人が何人もいるのが見えた。
でも、そのときにスマホで音楽を聞いてリラックスして通学している。
二年生はこれが終われば修学旅行が待っているので、早くテストを終わらせたいなと感じている。
三年生になる前に良い成績で終わりたいけど、ちょっと気にしていることが多くなっているんだ。
二月に行われた中高の入試が終わると、三年生を除く在校生の後期期末テストが始まるの。
テスト時は教室の席も出席番号順に席順が指定されているので、いつものように話をしながら歩いていることが多い。
わたしは廊下側から三列目、後ろから三番目の席で
「おはよ」
「美琴、マジで世界史がわからない……」
日菜は文系が得意ではなくてときどき楽しい話をしている。
「今日は世界史が最後だね」
「うん……ルネサンスってさ、小さな頃にお笑い芸人がネタであったよね? ルネッサーンスってやつ」
「それは記憶にあるけど……それは違うからね。ルネサンスは――」
彼女に自分のノートを見せながら話をしていくんだ。
自分も言いながらわかりやすく話していくことで、ごちゃごちゃになっていた記憶を整理していた。
「ありがとう。美琴、助かった」
「うん。数学のわからないところ、
最近、日菜と勉強していたことがテストにほとんど出てきてびっくりする教科とかもあったりしている。
一時間目の教科は数学が終わって黒板には現代文と世界史が書かれてある。
初日にテスト範囲の広い教科がひしめいているのに気がついて、何を捨てるかを決めていたのかもしれない。
「数学が思ってたより簡単だったね」
もう時間の流れが速すぎて怖い。
「ね、赤点じゃなければそれでいい……」
わたしは理数系の科目は平均点以上を取れれば満足するけど、いままでの成績が受験に関わってくる場合もある。
冬休み期間にはる香姉ちゃんが通っている大学のオープンキャンパスへ日菜と行っている。
そのときに現代生活学部の現代家政学科に日菜にぴったりな感じで、わたしは同じ学部の生活デザイン学科が良いかなと思っているところだった。
「次は何かな?」
「あ、次は現代文」
「そっか。テストが終わったら、体育の発表なのが嫌だな」
問題用紙をまとめたクリアファイルにしまってから、バッグを椅子の下に置いて時間を待つことにした。
日菜はどっちかというと現代文が苦手で自分のノートを見ながら、解答に出そうな文章を暗記していくことが精いっぱいだったの。
試験監督の先生が入ってきて、みんなが誰だろうという顔をしているのが見えた。
「あ~~。マジで不安なんだけど」
今回の現代文のテストを作ったのは問題数がかなり多い先生で、今回は時間内に解けるかわからないくらい。
現代文のテストは論述文で何を意味していることとかを書けというものが多かった。
でも、直前にノートを見返していたのでホッとして解答用紙を埋めていく。
みんなテストのときに時間配分をしていると聞くけど、自分は時間配分を無視して一番早くて開始時間十五分で全部解き終えることができたこともあった。
今回は例外で問題数が時間内に解けないくらい多いんだよね。
というか先生、今回のテストの問題数えげつないじゃん……という感じで声に出して言いたいのを我慢しながら解答を埋めていく。
時計を見てもう半分過ぎているのに気がついたけど、まだ問題の半分も解けていないのに焦ってしまう。
わたしは時間配分を無視して解答をしていく。
二時間目の終了を告げるチャイムが聞こえてくるけど、絶望的なため息があちこちから聞こえてくる。
なんとか解答用紙を全部埋めることができたけど、日菜は絶望的な表情をしているのが見える。
何とか初日が終わって日菜と駅まで一緒に歩いている。
今日は手ごたえが全くない。
「美琴、解けた?」
「うん……ギリギリね」
「マジか……あと二日耐えれば土日がやってくる」
日菜はうちのいとこの
「美琴は
「あるよ、
テストが終わってから少し遠出して横浜に初めて行くことになったの。
そのときに奏さんにバレンタインのチョコをあげようと思っている。
「がんばって告白するから。和真さんに」
「うん。がんばってくる」
その会話をして駅前で別れて帰ることにしたんだ。
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