第15話 放課後
一月も終わりを迎えた。
初雪がやってきてからは何度か雪が降るような寒さが続いている。
三学年のなかではいくつかのクラスがインフルエンザが流行っていて学級閉鎖をしているところがあるという。
「さよなら~、先生」
「気をつけて帰るのよ」
学活が終わってすぐに班で各自掃除する場所に向かっているのが見える。
「
スマホを持ってきてくれた
「うん。先に行ってて」
わたしは先に掃除用具入れのある廊下でほうきを持ってきて先にごみとかを集めていくことにした。
同じ班の人で三人はどこかへ行ってしまったみたいで、先生が少し怒っているように見えた。
教室にはクラスメイトが何人か後ろにある鏡でメイクをしたり、誰かに電話をしていたりしているんだ。
「来週から中等部、臨時休校だって~」
「いいよね~。三日間休みがあるなんて……うらやましいな」
「うん。そのときにはカラオケとかディズニーとかに出かけてた」
中等部から上がって来た
在校生はその日は臨時休校で大半が遊びに行くことが多いみたいだ。
「うちも遊びに行きたいけど、バイトをがっつり入れちゃったんだよね」
「
「あ、駅前のカフェというか喫茶店みたいなもの」
「そうなんだ」
わたしのバイト先はカフェだって思っていたけど、最近になってからはどちらかというと喫茶店のような感じのお店だと思っている。
担任の
「あれ?
「見てないですよ」
同じ班の島田さんと
「あれ、今日は三人でやってて……明日は三人にやらせるから」
先生は職員室に帰って、みんなで話をしていくことにしたんだ。
わたしと日菜、鈴木さんの三人で教室の掃除を行って、日菜と共に図書館に向かうことにした。
「寒いね……今日は」
「うん。セーラー服にカーディガン来ているのに、まだ寒いのは嫌だな……」
寒そうに体を前かがみにして話をしている日菜はセーラー服の上から学校指定の真っ白なカーディガンを着ているけど、それ以上に寒いのがわかっている。
セーラー服に似合う丈は膝が見え隠れする程度。
それが嫌でほとんどがスカートを折っている人が多い、なかにはウエストで折っているのに裾を切ったりしていることがある。
正直言ってスカートは長い方がセーラー服は似合うと思っているし、意外と長い方が体育のハーフパンツとか履けると思うから。
「こんにちは、
「こんにちは~、静かに勉強してね」
司書の豊田先生が入口近くのカウンターで声をかけて、二階の階段を上っていく。
図書館では後期期末テストが近いのでテスト勉強をしている生徒が何人か来ている。
いずれも三年生ではないことは明らかで上履きのつま先の色が黄色なので一年生ということがわかった。
「美琴、三年生ってもう試験終わってるでしょ?」
「うん……明日から授業がなくて、登校日が設けられているはずだよ」
三年生は後期期末テストが今週行われて、それ以降はテスト返却などと卒業式の練習など以外は登校することがない。
去年は部活の色紙とかを先輩への寄せ書きをしていくことがあったけど、今年は部活に入っていないのでとても楽な感じになっていた。
図書館は静かで、ときどき来る人の声や物音が聞こえてきた。
「美琴、数学の問一。解けた?」
「うん……解答一覧を見せてほしい」
日菜とテスト前に提出できるように問題集のテスト範囲を終わらせようと進めていた。
家に帰ろうとしていたときに日菜と一緒に駅前のベンチに座って話を始めた。
指定のサッチェルバッグはずっしりとした重さになっているけど、肩に結構な負担がかかってしまう。
昼は暖かったのにあっという間に冷えてきて、セーラー服なので首回りがとても寒いのを防ぐためにマフラーをしている。
日菜はセーラー服の上にカーディガンを着て、マフラーと手袋をしている。
わたしは日菜とほぼ同じ格好をしているけど、そのセーラー服の上にダッフルコートを着ているんだ。
「今日、勉強した内容が入っていたけど、意外と簡単だったね」
「バレンタイン、どうする?」
「え、テスト期間中だけど、今年も作るの?」
「うん。美琴も息抜きに作ろうよ。家で食べても良いから」
バレンタインは毎年テスト期間にぶつかることが多いけど、今年はテスト最終日の翌日ということでみんなからもらうのかもしれない。
去年はクラスの子からもらったりして意外と量はとても多かった。
日菜みたいに手作りする子もいれば、うちみたいにコンビニとかで買って行くことが多い子もいる。
「うちはいいよ。お菓子作り……最近してないし」
「じゃあ、一緒に作ろうよ」
「え~、バイトがあるから作る時間ないよ」
「そっか、そうだね」
わたしはお菓子を作るより食べていた方が好きだし、逆に作るのはめんどくさいと思っているタイプ。
日菜は正反対でお菓子作りはとても好きでときどきクッキーとかをもらったりしていることが多い。
「美琴は
それを言われたとたん、ドキッとしてしまった。
わたしは持っていたシャーペンを落として、日菜はびっくりしている。
「そんなに動揺するかな?」
「あげるつもりだよ……付き合い始めたし」
「付き合い始めたんだ。おめでとう」
「ありがとう。日菜……最近、会えてないけど」
つきあい始めたけど、あまり実感がなくて困っている。
これからも気持ちは変わらないけど、紘一とすれ違ったのは気まずかったなと思っている。
「うちも
わたしは一瞬フリーズしてしまった。
日菜が和真兄ちゃんのことをいままで「
「え。日菜、いま……」
「あ、忘れて! 年の差がありすぎて、少し怖いけど……告白する」
しまったという顔をしてから顔を真っ赤にしているし、その気持ちがわかるから……日菜も知らない場所で悩んでいるのかもしれない。
「わかったよ、日菜が次の番だよ。応援しているよ」
「うん。ありがとう、美琴」
和真兄ちゃんに日菜の気持ちが伝わってほしいなと感じているところだ。
ちょうどこの街に響くチャイムが聞こえてきて、お互いに帰ろうという顔をしている。
「あ、そろそろ帰ろう」
「うん」
「じゃあね~」
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