第11話 クリスマスイブの夜
「え、
ちょっと困っているような声が聞こえてくる。
風が吹いて髪の毛が視界を遮るのを手で押さえていた。
真冬の寒さが涼しいと思うほど体が暑くなっている。
心臓がドキドキしているし、耳に血流が通っていくのがわかる。
「それって本気ってことだよね?」
「はい、本気です」
わたしは心臓がバクバクと鳴っていて、答えるのもほぼ即答みたいになっている。
本気だから告白してるのにと言いたかったけど、その気持ちが伝わっているのかわからなかった。
「そっか……えっと」
お互い黙ったまま時間だけが流れていくような感じだ。
ライブハウスの周辺は店舗の照明があるけど、奏さんといたときにライブハウスの照明が消されて暗くなってしまった。
「美琴ちゃん」
「は、はい」
「返事は……今度でもいいかな? 今日は遅いし、考えさせてくれないかな」
「はい。いいですよ……すみません、いきなり」
「いいんだよ。気持ちは受け取ったら……俺から連絡する」
奏さんと一緒に駅前の改札に行くと、
「あ、ようやく来た」
「ごめん、遅くなって。早く打ち上げ行きましょう! 美琴ちゃん、日菜ちゃん。またね」
奏さんは少し早口で居酒屋のある南口の方へと向かった。
「それじゃあ、美琴。今日は早めに帰れ」
「今日は日菜の家に泊まるから」
「そうだったんだな、じゃあ」
『リンネ』のみなさんと別れて、日菜の家に行くことにしたんだ。
「ところで美琴は
スマホで動画を見ていたときにベッドから降りて日菜が話しかけてきた。
入浴と夕飯を済ませた後、日菜の部屋で話をしていた。
「え。いきなりどうしたの?」
「遅れてきた理由」
入浴後はお互い部屋着でくつろいでいるところだった。
日菜が気になっていたのか、ぐいぐい聞いているのがわかった。
わたしは今年の文化祭で着た黒のクラストレーナーに青い中学のジャージの長ズボンを履いて、トレーナーの上からジャージを着ている。
ジャージの上着はファスナーが半分しかないタイプでそれを中間地点まで上げている。
「え……えっと、告白した」
顔がとても赤くなってもう敷いている布団にくるまりたい気持ちになってしまう。
「え、マジで⁉ 白濱さんからの返事とかって」
日菜は顔を赤くしてとても自分の肩に手を置く。
「返事は今度、たぶんLINEでこの日に会おうって来ると思う」
「そうなんだ」
「でも、フラれたと思うんだよね」
「難しいよね……対象外ってことか」
日菜も和真兄ちゃんのことを片想いしていて、お互い片想いの相手が年上のことが
「うん。友だちでいてほしいって言われたことがあって」
それを言うととても悲しくなってきて、涙で視界がにじんでくるのがわかった。
「それがとてもつらかった。ほんとに好きでいいのかなって」
「うん」
「それだけじゃ、なくて……前みたいに、距離が、できるんじゃないかって、怖いの」
まだ紘一との関係みたいになるんじゃないかって怖くなっている。
過去に引きずられたまま、ここまで来てしまったのがとても怖い。
このままずっと怖いままでいるのをやめて、新しい場所に進みたいと思っているのにできない。
「美琴は十分白濱さんに想いは伝わってると思う。向こうからの返事を待ってよ」
「うん、そうだね。もう泣くのはやめるよ」
わたしは日菜に励まされて、少し気持ちが楽になれた気がする。
「このあと、何話す?」
「え、冬休みの課題ってどうなった?」
「もう二週目で終わりそう」
「ええっ⁉ もう終わるの、さすが優等生だね」
「そうかな……」
うちの高校の授業のレベルはかなりペースも遅めだ。
そのため、中学で真ん中の成績を取っていれば、高一の最初の前期の成績の学年順位を見てびっくりすると思う。
実際に三者面談で学年とクラスの順位を教えてもらってびっくりしたほどだったし。
「でも、美琴が赤点取ったのって二年の後期中間だけ?」
「うん……マジで追試が受かってラッキーだった」
赤点を取った科学の追試は学年で百人以上、そのうち受かったのは一割だったと話していることが多かった。
そのなかで受かったのは奇跡に近いレベルで問題は奏さんから教わったものが多かった。
「美琴、今度の学年末テストは平均以上目指す? うちは目標にしてるけど……」
「うん……普通に授業で出てるところを押さえて、テストに挑むみたいな感じだな」
部屋のなかはあたたかな色のルームライトのみが照らされているけど、カーテン越しから近所のイルミネーションの装飾の光が入ってくる。
最近はこんな装飾を見るのは久しぶりに見たかもしれない。
それで今日はクリスマスイブだと思い出した。
小学生とかのときはこうやってプレゼントがいつ届くとか、それを起きていられる限り見てみようとしたことがあった。
体も温かくなってきて眠気もしだいにやってきて、そろそろ寝落ちしそうになって来た。
時刻はもう日付を超えそうになってお互い布団に入ったけど、話は尽きないまま起きたままだった。
「進路、決めた?」
「日菜は短大に内部進学?」
「いや、外部受験。短大だと編入試験とか受けないといけないし、あと編入学後に費用が掛かると家庭に負担がかかるし」
最近は短大へ内部進学するのは少し減ってきているらしい、取得できる資格は保育士と図書館司書とかだったはず。
「うちは、家政学部のある大学に進学したいんだよね」
短大には内部進学できる成績があるので、一応内部進学を視野に入れているけど……四年制大学の家政学部に外部受験に挑戦しようと思う。
インテリアのデザインとかをしたいなと思っているし、インテリアプランナーになりたいなと考えている。
「指定校推薦がある大学のなかでオープンキャンパスに行ってくる。今度、オープンキャンパスがあるから……」
「うちも行っても良いかな? 冬休みなら年明けから予定は真っ白で」
「うん……」
布団を被って寝返りを打ったら、オープンキャンパスの話したのはそれ以降の記憶がなかった。
いつの間にか眠ってしまった。
なんとなくざわざわした気持ちと、楽しい気持ちが混ざったような感じだった。
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