ヴェルサイユ国防軍創設
“ヴェルサイユ国防軍創設草案”
現在、ヴェルサイユ共和国政府で議論されている事で、諸侯がバラバラに保有している騎士団を解体・統合して強力な一個の軍隊を創設するというものだ。
これは公安委員会委員長ロベスピエール公爵が強く推進しているもので、先の遠征の失敗で権威が失墜した共和国議会は思うように反論できず、創設草案の可決は時間の問題と言われている。
共和国議会が設置されているリュクサンブル宮殿では、今も議員達による白熱した議論が繰り広げられていた。
「諸侯の騎士団を統合するとなれば、議会の力が公安委員会に奪い取られてしまう!」
「それは断じて避けねばなりません。国防軍創設は断固拒否すべきです」
「革命以来、ここまで育ててきた共和政を守るためにもロベスピエールの要求は受け入れられません!」
元々権力志向の強かったロベスピエールの下に巨大な軍事力を与える事に不安を覚える議員は少なくなかった。
しかし、その一方で軍の創設に好意的な議員も存在した。
「ブルターニュ遠征の失敗で、ヴェルサイユの軍事力は大きく損なわれた。先の敵の攻勢は退けたが、国内の戦力を再編して立て直しを図る必要がある!」
「ロベスピエール公爵は共和国建国の第一人者だぞ。そんなお方が共和政を滅ぼすとでもお思いか!?」
議論は纏まるどころか泥沼の様相を呈した。
国防軍創設賛成派の数は反対派よりも少なかったが、先の大遠征の失敗で勢いから賛成派の勢いは加速されていたのだ。
一進一退の攻防が繰り広げられる議場に突如、公安委員会委員長ロベスピエール公爵が姿を現した。
公安委員会と共和国議会は独立した別の機関であり、これまでロベスピエールが議場に足を運ぶのは特別な儀礼等を除いて一度も無かった。
ロベスピエールは普段は空席になっている公安委員会委員長用の席へと向かう。
「今日は国家の危機を前にして公安委員会委員長としてではなく、共和国を愛する一国民として来た。我等が共和国を建国して三年、私は失望している。かつて王政を打倒した時に我等が実現した団結はもはや過去のものと成り果てている事に! 私はかつて言った。全ては諸君等の働きに掛かっていると。しかし、どうだ!? 諸君等は己の利益と権勢のみを追い求め、革命の志を完全に見失っている! 諸君等は腐敗し切ったかつてのヴェルサイユ王室と同じ堕落の道を歩もうとしている! 諸君等は共和国が外敵に蹂躙され滅び去る時まで、ここで不毛な議論に興じているが良かろう! 私は一人でも戦う! 我々の革命を完結させるために! 愛する共和国を守るために!」
ロベスピエールの言葉に議場の空気は一変した。
議場は盛大な拍手と喝采の声に包まれる。
「ロベスピエール! ロベスピエール! ロベスピエール!」
皆がロベスピエールの名を叫び、バラバラだった議会が一つへと纏まった。
ここにヴェルサイユ共和国国防軍の創設が可決されるのだった。
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