親友の絆

「ローラン、学年一位おめでとう!」

 オリヴィエは満面の笑みを浮かべて祝いの言葉を掛ける。


 ローランとオリヴィエは自室の部屋で、細やかなお祝いをしていた。


「あ、ああ。ありがとう」

 しかし、当のローランは複雑そうな顔をしている。


「ローラン、どうかしたの? ほら。ローランの好きなお菓子も色々と用意したんだよ」


 ローランとオリヴィエは奴隷から解放されて平民階級へと上ったが身寄りは無く、当然収入も無い。

 そこで生活費全般は騎士学院の特別奨学金制度を活用して、そこから捻出されていた。


 しかし、それは生活費全般をカバーできるほど潤沢では無く、ローランとオリヴィエが日々使える小遣いは微々たるものだった。


 ローランの小遣いは、支給されるとすぐに食べ物へと変わって、ローランの胃袋へと消える。

 対してオリヴィエは特に使い道も無いからとコツコツと貯めていたのだが、その貯金を全て叩いてこのお菓子の山を用意したのだ。


 いつもなら、お腹の虫を豪快に鳴らしてお菓子に飛びつくところだろうが、なぜかローランは不機嫌そうだった。

「オリヴィエ、お前、わざと悪い点数を取っただろ」


「え? ま、まさか、そんなはずないでしょ」

 オリヴィエは分かりやすく否定してそっぽを向く。


「……オリヴィエは相変わらず嘘が下手だな。お前の実力は一緒に試験勉強してた俺が一番よく分かってるんだよ」


「……はぁ~。やっぱりローランに隠し事はできないか」


「当たり前だ!」


「でもさ。僕等が二人揃って好成績を出したりなんてしたら、きっと不正を疑われて、また嫌がらせをしてくる奴が出てくるかもしれないだろ」


 いつもなら、ローランは陽気に笑いながら、本気を出せば上位に食い込めたと言いたげな口ぶりだな、とオリヴィエを茶化すところだろうが、今のローランは本気で怒っていた。

「だとしてもだ! これじゃあまるで俺はオリヴィエを踏み台にして一位になったみたいじゃないか!」


「僕は踏み台でも構わないよ。それでローランの役に立てるならさ」

 一切の迷いも無い笑みを浮かべて言うオリヴィエ。


「ダメだよ! オリヴィエは踏み台なんかじゃない! 俺の大切な親友なんだ! 一度は離れ離れになっちまったが、これからは生きるも死ぬも一緒だ!」


「ローラン……」

 ローランの言葉に思わず感激したオリヴィエは言葉を失う。


 グウウウウ~


 その時、ローランのお腹が鳴る。


「ローラン……。せっかくの雰囲気が台無しだね」

 苦笑いを浮かべながら言うオリヴィエ。


「うぅ。我ながら情けない」

 流石のローランも顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする。


「ふふふ。お腹が空いたのなら、まずは二人でこのお菓子でも食べようか」


「お、おう! そうだな。食べよう食べよう!」


 ローランとオリヴィエは一緒に用意したお菓子を掴んで口へと運んだ。


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