木炭色の森の中、延々と同じ日々を繰り返す「わたし」の、小さな変化から始まる物語。
物悲しく、どこかうら寂しい雰囲気が魅力の物語です。
ジャンルの「詩・童話・その他」の通り、童話のような骨組みのお話ではあるのですけれど、でも子供向けのそれではない感じ。
どちらかといえば神話か民俗的な伝承のような、きっと大人にとっても(むしろ大人にとってこそ)読み応えのある物語でした。
細やかに組み上げられた全体の雰囲気、どっぷり浸れるこの世界のありようが好きです。
全体に通底する「死」の色味から伝わる、何か無常観にも似たゾワゾワするような手触り。読み始めてすぐ絡めとられるというか、あっという間に首まで浸からされました。
特に惹きつけられたのはやはり結末。果てのなさのような、延々繰り返されるであろう営みをしっかり見せつけた上での、ある種の解答でありそしてドラマでもあるその帰着点。問答無用の良さがあるというか、どうしたって圧倒されるものがあります。
スケール感、という言葉では少し大仰かもしれませんけれど、何か果てのなさのようなものに手足がすくんでしまう作品でした。雰囲気というか空気感が好き……!