第20話

その日からルイスはより活発に動くようになった。剣の鍛錬も夜遅くまでやり、笑顔も増えた。幸せそうに笑う彼女を見て、アレストだけは恐怖を感じていた。

(砂時計の影響だ。上部に砂が溜まっているうちは『神』の力が強い)

(だが……それは一時的なもので……)

(砂が落ちきったときにはなくなってしまうだろう)


「アレスト、砂時計のことだけれど」

「何かあったのか?」

「ツザール村に帰れば分かるかもしれないわ。前は教えてくれないかもって言ったけれど、私が頼んでみることもできるし……弟に会えば……」

「前に言っていた弟か。だが、危険すぎる」

「え?」

「……あんたは王宮から出たらいけない」

「私の体なんかより大陸の命運が大切よ!」

「違う……違うんだ、相棒……」

アレストがルイスの肩を掴む。

「絶対にしんじゃダメなんだ、あんたは。ここに居てくれよ」

「アレスト……?」

ルイスの時計は簡易的な物だ。それでも割れたら何が起こるか分からない。

(俺は正直大陸がどうなってもいいと思っているが……こいつのせいで大陸が沈んだら、1番辛いのはこいつだ)

「大丈夫よ!アレスト、心配しすぎよ!むしろ前よりも調子がいいのよ?何も心配しなくていいわ」

「だ、ダメだ!」

「こんなことを言うのは不謹慎かもしれないけれど、母上がしんでから体が良くなってきたのよ。母上が私を治してくれたんだわ。今こそチャンスよ。ねぇ、手を離して」

「あと1年は病気を治すことに専念してくれ。大丈夫、俺が28歳になっても砂が落ちきるまでには2年ある。なぁ、頼む。相棒……言うことを聞いてくれよ」

「……その2年で」

ルイスがアレストの目を見つめる。

「私とアレストで、大陸を救う約束をしてくれる?」

「……あ」

余命1年になるかもしれない目の前の彼女に、なんて言えばいいのか。アレストは目を泳がせる。

「っ……。あぁ!約束をするさ!俺とあんたで、絶対に」

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