第11話
〜夜 王宮近郊〜
「相棒!そっちに行ったぜ!」
「やめてよ!その呼び方で呼ぶの!」
「ギャハハ!!!ギャハハ!!!負けは負けさ!認めるんだね!!」
「うるっさ……。集中できないって!」
剣を振る度に相棒のポニーテールが揺れる。戦闘中、アレストはメルヴィルよりも短いそれを後ろから見るのが好きだった。
「あんたが昨日の夜に賭博場でヤケになって俺に負けたからねェ………くっくくく」
「その話はもういいじゃない!……はあぁ。簡単に乗るんじゃなかったわ」
「ギャハハ!!」
「……まぁ、相棒って言い方は良いわよ。けど、負けたからそう呼ばれるって言うのが気に食わないわ」
「ふふふ、あんたのその顔が見たくて提案した甲斐があったぜ」
後ろからアレストが魔法弾を飛ばす。
「ぐっ……」
「大丈夫!?反動受けてるじゃない!」
「大丈夫さ」
「もう……着いてきたいって言うから連れてきたけど、リヒターやヴァンス様にバレたら怒られるのは私なんだからね……」
「ふふふ、さァて……逮捕しちまおうか」
砂の上に盗賊を倒し、腕を掴んで手錠をかける。
「ん?俺の身体を触りたいのか?だァめだ。これ以上罪を重ねるつもりか?くっくく……」
器用に足を縛る。相棒はそれを見つめて安堵のため息をついた。
「あ……」
前方から明かりが近づいてくる。アレストと相棒は路地裏に隠れた。
「な!?指名手配されていた賊のリーダーが縛られているぞ!」
「まただ。これで10件目……。一体誰だ?賞金稼ぎなら直接王宮に突き出せばいいのに」
シャフマ王国騎士団が盗賊を回収する。それを見ながら、相棒の手がアレストの口を塞いでいた。
「ぐっ……ぷはっ!ギャハハ!!」
騎士団が見えなくなったタイミングで相棒がアレストの口から手を離す。案の定、破顔して盛大に笑う。
「ヤバ!ヤバ!!俺たちがやってると知らずに……ギャハハ!!」
「そんなに面白い?」
「面白いさ!!相棒、また誘ってくれよ」
「……あんたが勝手に着いてくるだけじゃない」
「ギャハハ!!そうだな!悪いね、楽しいからさ!」
こんな毎日がずっと続けば良いのに。
ルイスの横顔を見つめながら思う。
(でもそのためには)
前に、進まねばならない。
「相棒」
「どうしたのよ?帰るわよ」
「……うん」
言えない。言えるわけが無い。
だって、変わって欲しくないのだ。たとえ3年と少し後に時計が終わりを告げても。幸せが今だけのものだとしても。
(相棒とずっと一緒にいたい)
それだけなのに。
(それだけなんだ、俺の望みは)
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