003 水魔との戦い
「なんの、こういう時こそ私の出番よっ!」
そして前に出たのは、かっぱらってきた家宝だという、魔導士用の杖を構えるシャルロットだった。
「シャル、なんとかできるん?」
「ふっふっふ……カナタ、『
質問に質問で返されるカナタ。その間ユキは身体が水でできている
「土は水をせきとめる。つまり弱点は土属性の魔法なのよ……そして私は土属性の魔法が使える!」
そしてシャルロットは、呪文を唱えた。
「今回はちょっと大技よ……【
射撃系土属性刺突魔法【大地刺突・射撃】、周囲の大地から土の刺突槍を形成し、射出されていく。未だに
そんな中、微妙に冷めた目をしたカナタが、シャルロットに問い掛けた。
「……なあ、シャル。ポ
「前世で子供の頃、やってたわよ。それ……」
おそらく、『それが?』と言葉を続けて、質問の意図を聞こうとしたのだろう。しかしシャルロットは、カナタが言わんとしていることにすぐ気付いてしまった。
ポ
それは何故か?
「質量が足りないと……水をせきとめられない?」
他にも理由はあるだろうが、相応の量の土を用意しなければ、水圧で全て流されてしまうのは、必ず起こり得る物理現象の一つだ。だからもし、水の塊を相手にするのであれば、それ以上の量をもって
むしろ土の壁でもせり上がらせて押し倒した方が、まだましだったのかもしれなかった。
「そもそも水の身体やったら、核とか壊さんと普通に再生するんちゃうん?」
実際に、カナタの言う通りとなった。
ユキの打撃もシャルロットの土属性魔法による攻撃もものともせず、
そして、さすがにもう体力の限界が来たのか、ユキは
「くそ、紙一重か……」
「お
とりあえず水で
「……すみません。欲に目が
「ようやく冷静になってくれて嬉しいんやけど……もう逃げられへんて」
自分の
「というかシャル、自分、相手を凍らせたりとかできへんの?」
「できたら最初からやってるわよ……あ、でも電撃はできるから、それで体内にある核を攻撃すれば……」
「……で?」
片手に
「シャルロット嬢ちゃん、まだ魔法は使えるのか?」
「あ……」
以前魔法を使っていた時に、その途中で突然消えたことがある。今回もまた同じように使えないのではないか。ブッチはそう言っているのだ。
「【
「やっぱりな……」
ブッチは組んでいた腕を解き、
「お前等もう気が済んだろ? 後は俺が……」
最年長として若者の
『人間よ……』
「しゃべったっ!?」
「いや、魔物にだって、それだけ知能のある奴もいるからな。単に珍しいだけで」
シャルロットにそうツッコむブッチ。
しかし
『命
どうせ誰かを
『……
『…………は?』
だが、その言葉に意識を持っていかれてしまう。全員が、だ。
元々人を喰う魔物だというのは理解している。女子供を喰うことはしないというのも、事前に調べた結果、そういう話もあると聞いただけに過ぎない。
だからユキも、最初はその話を信じて自ら
「えっと……念の為に確認しておきたいんだが、何故男なんだ?」
本来ならば『誰も渡さない』と
全員が好奇心に包まれる中、ユキが代表として問い掛けた。
『何故男か、か……答えは簡単だ』
そして、
『男の方が…………性欲も食欲も満たされるからだ!』
『変態だーっ!』
ブッチを除く、全員が叫んだ。
「まさかそんな理由で男を欲しがるとは……」
「カマキリかよ、おい……」
「なあ、ところで気になっとってんけど……」
今度はカナタが、
「……自分、性別は?」
「あ~、そういえば……」
筋肉質かつ人型は男寄りの顔立ちだが、だからといって
『性別か。たしかにあるが、我は人でいうところの……』
そして、
『…………
『やっぱり変態だーっ!』
このままでは色々とやばい。
特に誰かを犠牲とする発想はないので、全員が武器を構えた。しかし、
一体どうすればいいのか?
『さあ、どうする? 人間よ……』
――ドキュゥン!
『…………へ?』
今まで黙って様子を
「……お前さん、本当はあれが核だろ? 体内じゃなくて別の場所に隠していたってところか?」
『ギクッ!』
ユキ達が
「言っておくが、俺をどうにかしようとしても、そこのカナタ嬢ちゃんもこっからあの核を撃ち抜けるからな」
おまけにこちらは四人。
ユキやシャルロットが盾になれば先程のような鎮火も防げるし、それ以前にブッチの
『ふっ…………』
この状況を理解できたのか、
人型に変えた足で大地を踏みしめ、そしてゆっくりと膝を付き……
『……………………すみませんでした』
……それは見事な土下座をして見せたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます