004 再び首都へ
「なんだ、また留守番しないといけないのか?」
「ほんま
沼地から戻った四人は、
その理由はただ一つ、魔物の賞金に関しては管轄外だったからだ。
懸賞金額に差が出るということもあるが、魔物に関しては冒険者ギルドの管轄だ。そちらに話を通さなければならない。
そして残念なことに、一番近い冒険者ギルドの施設があるのは、南の大国『ヤズ』の首都だ。この町にない以上、換金する為には遠出しなければならなかった。
「おっちゃんとシャルに換金してきてもらおうかともお
「まあこの店、未だに
「お
いっそ
ブッチやシャルロットもまた、その準備の為に自室へと戻っている。
「まあ、こっちは雇い主が忙しいから別に構わないんだが……あまり
「言う程客足が戻らんのに?」
いっそ
しかし『
「とにかくまた一週間程空けるから、留守はよろしゅうな」
「あいよ。まあ
「多分お
話は済んだ。
ユキはすでにフィルのいる工房に向かい、
「……そういえばフィル、最近忙しいらしいけど、どんな仕事受け取るん?」
「俺も詳しいことは聞いてねえよ。ただ……」
トレイシーは妙に
「……妙なんだよ。『時間は掛かってもいい。必要なら
「どっかの王侯貴族とかちゃうん?」
よくある話だ。
私兵に専用の武器を持たせたい。見た目を
ただし製作中ということは、その間武器がない可能性があるとみて、押し込み強盗等に狙われやすい。だから秘密裏に武器を用意するというのも分かる話だ。
「『時間は掛かってもいい。必要なら
「まあ、たしかに……それやったらお抱えで雇った方が安上がりやんな」
しかも相手は、フィルが今の工房で仕事すること自体を止めさせることはなかった。トレイシーを含めて、人目を避けて仕事をして欲しいという指定をしても、確実な仕事以外に何も要求してこないというのも不思議な話だ。
「犯罪者……もないやろうな。お偉いさん以上に我慢弱いやろうし」
「ちょっと不気味に思ってるんだよ。依頼人の男も『
トレイシーは目を細めて、カナタの耳にだけ聞こえるように、声を
「……俺より強い、とかいう話じゃないんだよ。底が見えないという点で、かなり不気味に思えてきてな。今でも
「……っと、客か?」
この工房の店番兼護衛であるトレイシーは、今はここにいない。ダイナーの方の留守を頼んだのはユキ達なのだ。
しかしその工房からは、工房主であるフィルともう一人、聞き慣れない者の声が聞こえてくる。話の内容は分からないが、その声音から男だということだけは分かる。
「少し待つか……」
もし内密の商談であれば、後々面倒に繋がることもある。それに自分も、面倒な依頼を出している点では同じなのだ。
ユキは水没して使えなくなった
「そういえば、最近は忙しいとか言っていたな」
「時間が掛かりそうなら、いっそ出直すかな?」
しかし向こうの商談が終わったのか、誰かが外へと出てきた。
おそらくはフィル
服装こそ黒を基調とした平服だが、腰に差した肉厚の短剣よりも、通り
その男はユキを
中にはフィルがまだ
「ユキか……もしかして、待たせてしまったか?」
「いや、そこまでじゃない。今のが依頼人か?」
木箱に鍵を掛けながら、フィルは
縦長ではあるが
「完璧主義なのか、注文が細かくてな。今回もまた再調整だ」
それが何かとは言わないまま、フィルは木箱を肩に
箱の中身が軽い可能性もあるのだが、力があることは長い付き合いから、ユキが疑うことはなかった。
「ところで、今度はどうした?」
「ああ。こいつの点検整備と、またレイさんに留守番を頼みたくてな」
「また首都に行くのか?」
今度はユキが首肯した。
フィルは一度木箱を作業場へと運び入れに行ってから、ユキの荷物を受け取った。
「今日とっ捕まえてきた魔物の換金がてら、な。
「そりゃ大変だな。ついでに新しいメニューでも探して食わせてくれ」
「あれば、な……」
首都の商会ならば、もしかしたら魚介類も流通しているかもしれない。
散々世話になっているのだ。それくらいは
「……って!
「
「間抜け
気安いというのも、考えものである。
「馬鹿とは何だこの野郎っ!」
「てめえがポカやったからだろうが! 直すの誰だと思ってやがるっ!」
カウンター上で互いの胸倉を
「というか妹
「やっぱり気があったのかっ!? 誰がてめえにやるか馬鹿野郎っ!」
一度荷物を取りに帰宅したトレイシーに引き
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