第98話

「部屋に、戻ろう。たまたま、廊下で会い、別々に庭の散策をしていても、知らない者から見れば、行きも帰りも同じだと、付き合っていると、間違われる。

リズ、先に寮に戻って欲しい」


「スチュアート様、先に戻って下さい。もう少しだけ、ここに居たいのです。」


「日も落ちかかっている。

女性を一人置く訳には、いけないな。リズが良ければ、寮まで一緒に戻りましょう。」


「そうですね。侍女に心配かける訳にもいけませんし、スチュアート様にも、お立場的にも、問題ですよね」


二人で、寮に戻る道を歩いていると、寮の入り口には、王家の馬車が止まっている。


「リズ、短い時間を過ごす暇はない様だね。

決断を早くしないと、いけないのかもしれないね。」と言われながら、寮に戻った。


寮についたら、ローレッタが待っていた。

「リズ、待ってたわ。どこに行っていたのかしら?」と言うと、後ろに居た、スチュアートに気が付く。


ローレッタは、スチュアートにカーテンシーをして挨拶をした。


「スチュアート様、この間の晩餐会では、話せませんでしたね。私、エリザベスの叔母にあたります、ローレッタ・カポーティブレナンと言います。宜しく」


「此方こそ、挨拶が遅れました。アトウッドキャクストン国、第二王子、スチュアート・アトウッドキャクストンです。よろしくお願いします。」


「スチュアート様も、この魔法学校に留学されるのですよね。

リズの事をよろしくお願いしますわ。」


「我が国ならば、何とでもできますが、私も留学生の身です、何もお役に立てないと思っております。」


「いいえ、少しでも、話し相手になって貰えれば、リズも心強いでしょう。」と口角を上げ、ニヤリとする。


二人で、何か腹の探り合いの掛け合いを始めそうだった。


「ローレッタ様、こちらに来られたのは、何かありましたか?」と慌てて、聞くと。


「リズ、貴方の寮の部屋に行きたかったのよ。待ってたの。部屋に入れた貰えるかしら?」


「はい。では、案内をします。」と言いうと。


「リズ、案内は大丈夫よ。リズの前に私が、部屋を使っていたのよ。」と笑っている。


スチュアートに先に寮の部屋に戻る事を告げ、ケイトと、ローレッタは、寮の部屋に向かった。


寮の部屋に戻ると、侍女のウォーリーが、待っていた。

ローレッタが一緒に戻って来たので、お茶の用意を始めた。


「リズ、この部屋は、どう?王族だけ使用出来る部屋は、開けられた?」


「はい、鍵はかかっていませんでした。誰が鍵を開けたのかはわからないのですけれど。」


「鍵は、有るけれど、無いのよ。」


「?」


「王家の血を引く者だけが、開けられるの。だから、王家以外の者が、部屋を使っても、開かないわ。

王族だけが、使える部屋は、正しく言えば、王族の血を引く者にしか、開けられない部屋なの。

だから、私が、来たのよ。」


「どういう事ですか?」


「王妃、貴方のお母様は、公爵家から、来たの、だからこの部屋は、開けられないし、秘密も知らないの。リックやダンは、国王から、話を聞けるけれど、女性は、叔母からの教えるしかないのよ。」


「ありがとうございます。」と頭を下げる


「リズ、そんなに、頭を下げなくてもいいのよ。姪と叔母なのだから。

それよりも、気が付いた?この部屋の仕組み。」


「仕組みって、何かありますか。この部屋は、何もないですし、」と言うと、ローレッタが、部屋の隅に手を翳すと、戸棚が出て来た。


「これは・・・・空間魔法?」


「そうよ。空間魔法で、大切な物を閉まっておくの。例えば、初恋の日記とかね。」


「でも、それって、次の王家の血を引き継ぐ者にに見られてしまいますよね。」


「残念ね。これは、個人の空間魔法なの。空間魔法って、物に掛けて持ち歩いたりしているでしょ。


リズ、認識阻害魔法で、何かを持っているよね。それって、多分、空間魔法を掛けているでしょ。だから持ち歩いている。違う?」


「そうです。」と正直に答えると。


「ここからよ、秘密はね。ここの空間魔法は、個人って言ったでしょ。だから、この場所で開けられるのは、王族でも空間魔法を使った人だけ、そしてね、この空間魔法は、王宮の部屋にもあるのよ。最初の頃は、王宮と学校の2か所を繋いでいる、空間魔法」


「最初の頃ですか。」


「そう、最初なの、ここでは、魔法の練習をする為と、人間関係を築く為に通うのよ。

魔法の初期は、王宮でも教えられるけれど、人との関りによって、必要な魔法を考えるでしょ。

そして、必要になれば、自分で練習し、魔法の技術を向上していくの。

だから、最初の頃なの。王族でも、この空間魔法の使い方はそれぞれよ。」


「ローレッタ様は、どの様につかっているのですか?」


「そうね、一つは、日記を入れているわ。」


「日記ですか。」


「リズは、書いていないの?文字を覚え始めた頃から書き始めるものよ。」


ケイトは、マティー様が、教えて下さっていた、教会で皆と一緒に習ったので、必要な時にしか、書く事もありませんでしたし、日記などつける事を、今、始めて知りました。」

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