第97話

「使えるけれど、私は無くても良かったかも・・・・」と言うと。


「王族だけが、使う事が、出来るのだから、それ成りの理由が、あるんだよ。

それを、知る事が、出来るのは、その国の王族だけなのだから、ケイト、嫌、リズ君は、キチンと知るべきだよ。」と口角を上げ、嫌味のようにニヤリとする。


「そうかも知れません、ただ、ケイトは、この国の王族の一員として、この国に、住むという、選択肢もあるという事だけ、留学を終える時に、自分の身の振り方を、自分で決めて良いと、承諾してもらいました。

まだ、アトウッドキャクストン国の平民ケイトとして、国に戻る選択肢も残しているのです。

だから、隣国の平民に、この国の王族だけが、使える部屋の事を知らなくても、良いと考えています。

逆に、知ることで、国へ戻る事が、できなくなる可能性も出て来ますもの。」


そんな、話をしながら、バラの咲いている、庭に着く。

庭の端には、ベンチが並んでいる。


「スチュアート様は、私は、少し、ここで、バラを眺めたいので、失礼します。」と言って、微笑んだ。


「ここで?」と不思議そうに見ている。


「一人に、なりたいんですよ。」


「そうか。僕も一人で、この庭を散策してみるよ。」と言い離れて行った。」


私は、近くに有った、ベンチに腰を掛け、いつもは、阻害認識魔法で隠している、ポシェットの魔法を解いた。

そして、ポシェットに空間魔法で、隠している、髪留めとペンダントを取り出して、3点を見ながら、呟いた。


お父さんバードお母さんレス、今は、ケイティと一緒ですね。ケイトは、この国にいていいのかな?


あれだけ、父さん達は、私を本当の子供として、育てる為に、手を尽くしてくれたよね。この国に残るのって、全てを否定する気がして、まだ、実の家族って全てを受け入れられないの。


それと、父さんに、文句があるのよ。マーぷに言ったでしょ。

父さんと呼ばせる事はないって、あの時の約束を、マーぷは、守ってるのよ。


私、マーぷの事、好きよ、今でも、お嫁さんに成りたいんだけど、父さんとの約束が有るから、出来ないって。


私の片思い、失恋決定よ。


お母さんレス、髪を梳きながら、お話したいな。


お母さんは、私の気持ちを上手に聞きだ出してくれたよね。

自分でも、気付けなかった事を気付かして、どうしたいのか、どうすれば、良いのかを、考えさせてくれたよね。


今は、ね。

お母さん、私どうすれば良いの?」

眼から一粒の涙が、話しかけていた、ペンダントに落ちた。


『ケイト、本当の親御さんに甘えなさい。私たちの時と同じようにね。遠慮してはだめよ。

たまに、私たちの事を思い出すだけで良いの。

ケイトが幸せになる事を信じているわ。』


ペンダントの石から、レスの声が聞こえた。


「お母さん・・・・」


眺めていた、3つの形見を抱きしめると、涙が溢れだしてしまった。


「お母さん達と暮らしていた時と同じ様に、幸せになるよ。

まだ、暫くは見守ってね。」と抱き締めていた、形見に言った時に。


スチュアートが、現れた。


「リズ、まだ居たの?部屋に戻った方が良いよ。

その前に、目が腫れているから、侍女に心配かけない為にもヒール回復魔法を掛けてから、帰った方がいいね。」


と言って、ヒール回復魔法を掛けてくれた。


「スチュアート様、どうして?」

(今までの、スチュアートだったら、嫌味を言っていたはずなのに、目の腫れを抑えるのにヒール回復魔法を使うなんて、今までの事では、考えられない。)


「リズ、僕も、この国での留学の理由を聞かされて、少しは、変わろうとしているんだ。

君が、平民のケイトの身分で在っても、同じ事をするよ。


そう、変わらなければ、いけない事を、一番に兄上が僕に気付かせてくれたのだから。


留学している間に、僕は、兄上達が思っている以上に期待に応え変わろうと思っているんだ。」


「期待に応える為に?」


「兄上達が思い描いている、期待は何なのかが、はっきりと解らなが、一つは、平民を見下しすぎていた事には、気が付いたって所だ。何か変な事を言ったかな?」


「王家では、期待なのですね。

其々の、家の立場で、考えが違うから。

私の、家族は、私に期待はしていませんでした。

ただ、幸せになって貰えればと、言っていたので。」


「そうだな、私は、将来国の王を支える立場だから、その事で、期待になってしまうのかもしれない。


一個人になれば、違うだろうな。

解っているから、期待だ、国の事を優先に考えるからこそ、一個人の幸せを考える事は無いだろう。


婚姻にしても、そうだよ。私も多分政略結婚。

好きな相手が居たとしても、正室には迎えられない。

側室を持つつもりもないから、本当に、愛した人とは、結ばれる事は無いだろう。


リズは、違うだろうけれどね。」


「どうでしょうか?ケイトなら、好きな人と結婚するでしょうけれど、エリザベスと呼ばれる様になってからは、無いのかもしれません。


一年の留学期間で、自分自身どうすれば良いのかを、考える時間だと思っていますから。」


「一年、お互いに、短い時間だな。」


「その、短い時間で、お互いに、立場を考え、行動を決めるのですね。」

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