第73話

「側室にするぐらいなら、僕の婚約者として、迎える」

マティーが放った一言で、3人とも驚きを隠せなかった。


「マーぷ、お嫁さんにしてくれるの?」とマティーの顔を除き込んだ。


「ケイト、違うよ。養女にしてまで、ダンフォース皇子の側室にするようなら、と言う事だ。ケイトは、幸せな結婚をさせる事が一番なんだ。」と眉を顰めた。


「ケイトちゃん、残念だね。僕は、側室を持たない主義だからね。」とニヤリと笑っている。


「ケイトは、平民です。本気で后に迎える事は、考え直してください。アトウッドキャクストン国の平民でなくとも、自国のカポーティブレナン王国で、お探しください。」と、怪訝そうに言う。


「そうだね。自国でも探すことにするよ。

そうだ、スチュアート王子、カルヴィンは、このまま問題がなければ、留学を続行していいかな?

この国の、魔法学園で、魔力を持った平民の教育とか、待遇を少しだけ、見せて貰えると助かるよ。

僕の国では、平民と貴族の通う学園、事体が違うのだよ。

興味があるので、頼みたい。」


「それは、全く問題ありません。カルヴィンは、成績も優秀と聞いていますし、出来れば、我が国のの女性を婚約者として、連れて帰られても、問題はないと思います。」と穏やかに笑顔になってった。


カルヴィンの留学の続行も決まり、ケイトとマティーは馬車にのり、マティーの屋敷に向かった。


「マーぷのお屋敷に行くの?学園の寮に戻るのではないの?」


「今日は、ハンナもこちらに来てもらっているよ。ケイトの侍女だし、たまには、屋敷でゆっくりしても、良いんじゃないか?」


「マーぷのお屋敷に行くのは、始めてよ、娘でも、婚約者でもないのに、屋敷でゆっくりって、マーぷ、さっきのダンフォース皇子の側室から変よ。」


「ああ、その事は、気にしなくていいよ。

始めから、今日は屋敷で、たまには、ゆっくりと話をしたかった事もあるから、予定をいれていたよ。だから、ハンナも呼んであるんだ。」と微笑んでいる。


マティーの屋敷に着くと、執事や、侍女長達から挨拶を受けた。


「ケイトさん、お待ちしておりました。マティー様から、話を聞いております。」と侍女長からの挨拶を受け、部屋に案内されると、ハンナが先に来ていた。


「ケイトさん、着替えて、ゆっくりされてください。バクスター公爵様から頼まれています。」と安心させるように笑顔を見せた。


「ハンナ、マティー様から、いつ頼まれていたの?

帰りの馬車の中で聞いて、びっくりしたわ。」


「昨日の、呼び出しの時ですよ。今日の王宮からの呼び出しで、疲れるだろうからと言われていました。」


その夜、マティーと食事をしながら、王宮での話になった。


「ケイト、ダンフォース皇子とは、本当は、どんな話をしたんだ。

皇子が、ケイトに、猛アタックして、結婚を迫った様には、感じなかったんだけどね。スチュアート王子が、ダンフォース皇子の側室などと言うから、つい向きになって言ってしまったがな。」と苦笑いをした。


「マーぷ、もう少しだけ待って欲しいの、明日は必ず話すわ。」目を伏せると、


「ケイト、本当に、ダンフォース皇子から、申し込まれたのかな?」と訝しげに見ている。


「マーぷ、それは、ないわ。でももう少しだけ、時間が欲しいの、明日話すから、待って欲しいの。」


「解ったよ。無理に聞かない、ケイトが話せるようになってからでいいよ。」

と寂しげな表情だった。


その夜、ハンナとたわいのない話をし、ベットに入った。


(マティーに、明日、話そう。ダンフォース皇子は、兄だと。

そして、ダンフォース皇子は、ケイトの生き方を尊重すると言ってくれた事を話そう。)


次の日の朝、早く目が覚めて、部屋にあるバルコニーに出て、庭を眺めていると、マティーの声がする。

「おはよう、ケイト、やっぱり朝が早いな。」と笑顔を向けてきた。


「マーぷ、おはようございます。」

隣のバルコニーでやはり、庭を眺めている様だった。


「ケイトはゆっくり寝れたかい?それとも、寝れなくて、朝が早かったのかな?」


「寝れたよ。マーぷこそ、朝早いんだね。」


「そうかな。いつも、この時間には起きているよ。それに、今から、少し仕事が、あるんだよ。一応は公爵家の当主だからね。」と、苦笑いをしている。


「ねえ、マーぷ、お昼に時間がある?二人だけで、話がしたいの。大丈夫かな?」


「大丈夫だよ。昨日の事だろ、少しは落ち着いたのかな。無理はしなくていいよ。それに、ダンフォース皇子やスチュアート王子が言った事は、本気にしなくていいんだからね。」


「うん、大丈夫だよ、マーぷにどうしても話を聞いてもらいたいの。

そして、これからの事も話したいんだ。」


(気持ちは、この国で、平民として生きていくと決めている。

ただ、王家の秘密を話さずに、マティーに、どう説明し、話せばいいのかと言いう事だけだ。)


「今日は、少し仕事が、入っているんだ。午後から、時間がゆっくり取れる。その時に、話を聞くよ。」と言って、仕事に出かけて行った。


侍女長が、朝食の用意をして部屋に持って来てくれた。


「マティー様は、朝早くから、仕事ですので、ケイト様にはゆっくりと寝させて、朝食もゆっくりで良いと聞いていました。」とにこやかに話してくれた。


「あの、マティー様は、いつもお早いのですか?今朝、バルコニーで、少しお話しました。」


「そうでしたか。ケイトさんも、朝、早かったのですね。

今朝は特に、マティー様は早かったのですよ。

まあ、公爵家のご当主に成られたのですから、少しは仕事をしてもらいませんとね。」と目を細めた。


「本当に、公爵家のご当主なのですね。」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る