第72話

「今回、僕が来たのは、リズをこの眼で確かめたかったからだよ。」


「確かめるだけで、良かったのですね。」


「本当は、国に連れて帰りたいよ。父上も兄上もリズの事を知っているのだからね。

3人の中で、アトウッドキャクストン国に来て、リズにどうやって会うかを話し合ったくらいだよ。

まあ、僕が、国政に一番遠いからね、外遊という形で動きやすかったね。

母上は、可哀そうだけど、最初から、外されていて、悔しがっていたけどね。」と笑顔になった。


「生きている。今幸せに暮らしていると、伝えてください。」


(捨てられたんじゃ無かったんだ。話に聞く限りは、王家の人達は仲が良いみたいだし、家族でいがみ合っていなくて良かった。それだけは、会えて良かったと言える事だわ。)


「リズ、このまま、平民のケイトとして生きていくのかい?

カポーティブレナン王国の王女エリザベスとして、この国に残ると言う選択肢もあるよ。

魔法学園では、平民として、大変だと言う事も、カルヴィンからの報告で聞いているよ、いくらバクスター公爵の後ろ盾があっても、苦労をしていると、聞いているんだ。その点だけが、心配なんだけどね。」


「ダンフォース皇子」と言うと


「ダンと読んでほしいな。ダン兄さんと呼ぶ様に頼むよ。」とにっこりと笑っている。


「今だけで、お願いします。ダン兄様」と呼ぶと、ダンフォースは、目尻を下げながら喜んでいる。


「はぁ~、僕が来て、正解だった。14年間逢えなかったけど、リズから、ダン兄様って呼ばれたんだから。

ねえ、リズ、バクスター公爵を始め全ての人に、エリザベスと言う事を話してはどうかな?」


「少しだけ、考えさせてください。」


「リズ、僕は、この国の外遊を終え、国に戻る。

今回の事で、スチュアート王子とバクスター公爵をカポーティブレナン王国に招こうと思う。その時に、リズも一緒に来て貰うよ。

その時までは、として、学園生活を楽しめばいいよ。

後ね、リズの、身辺警備の為に、カルヴィンをそのまま、留学させておくよ。」


「カルヴィン様は、リズの事を知っているのですか?」


「勿論だよ。報告を上げさせ、その上に、身辺警護をさせるのだから、気づかない方が可笑しいだろう。」と口角を上げ、笑っている。


「カルヴィン様は宰相のご嫡男と聞いています。その様な方が、ケイトの身辺警護って、可笑しくありませんか?」


「表向きは、留学のままだよ。だから、可笑しい事はないよ、

それに、身辺警護といっても、命を狙われる事もないから、簡単に言えば、リズの虫よけだね。

例えば、スチュアート王子とかだね。」ニヤリとした。


「スチュアート王子は、知っているのですか?」


「教える必要はない。リズが、ケイトとして、この国に残るのだから、言う事はしないよ。

でもね、バクスター公爵には、話した方がいいかもしれないね。

リズの気持ちが落ち着いて、カポーティブレナン王国に招く前に話した方が良いだろうね。

バクスター公爵も、リズの口から聞く方がいいからね。」


「そうですね。私が、エリザベスと言う事を認めないといけないんですよね。」


「リズ、でも、少しは気が付いていたんじゃないかい?

魔力量も多い事や、魔法もすぐに使える事を少し考えれば、貴族の子供だと、判る事だよ。その事に、ただ目を逸らしていただけだと思うのだけどな。はそう思っているけど。」


(兄さん、一人っ子だった、あたし兄妹が欲しかった。頼れる兄、相談出来る姉、甘えて来られる妹や弟。でも、兄妹はいなかった。父も母も一人っ子だったから、親子で本当に兄妹って、憧れだった。


そして、レスには、子供を産むことが難しいから、妹や弟が欲しいなどと言えなかった。


この世界で、血の繋がった兄がいる。)


「ダン兄様、認めたく無かった。育ててくれた、両親と過ごしたかったから。そして、今も両親と暮らした生活と変わらない生活をしたいと思っています。

だから、認めず、目を逸らしていたのです。」


「そうだね。でも、育ててくれた両親は亡くなったよね。

それに、思い出してごらん。


『傍にいられるから。ずっと見守っているから。笑っていてくれ。』と

リズの育ての親は、言っていたよね。

笑って欲しいだけだよ。リズが平民だろうが、貴族だろうが、笑っていれば、良いんじゃないかな。

その事を考えて、答えを出せばいいよ。」


「解りました。」


「この話は、ここまで、スチュアート王子には、ケイトに猛アタックを掛けていたと、言う事にしておこう。カポーティブレナン王国に呼ぶ理由にもなるからね。

リズ、良いね。」とにっこりと笑った。


3人が、応接室に入ってから、ダンフォース皇子が、ケイトに猛アタックを掛けて、カポーティブレナン王国に来て欲しいと口説いていたと話をした。


スチュアート王子は、ケイトが平民であるから、王家に嫁ぐなら、マティーの養女にするか、バルフォアボール辺境伯の養女にしてからなら、側室なら、大丈夫ではないかと提案していた。


その途中で、マティーが養女にしてまで、側室にさせる気はない。と激怒してしまった。


そして、最後には、

「側室にするぐらいなら、僕の婚約者として、迎える」と。

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