第64話

「産まれたばかりの赤ん坊の君を誘拐し、その犯人が、捨てたとして、だよ、それでも、血の繋がった親は、どうでもいいのかい?」カルヴィンが、眉を顰める。


「解らない。考えた事がないもの。もし、そうだとしても、会いたくないわ。だって、会っても、何を話すの?今の生活がお互いにあるのだから、そのまま、しらない方が、お互いの為だと思うの。」


「本当の親に興味はないのかい?」


「興味・・・・ないと言えば嘘になると思います。

でも、今のままで良いと思う方が強いの、だから、そのままにして欲しいです。


カルヴィン様、もう、これ以上は何も言わないでください。


私の瞳の色で、何かを思ったのでしょうけれど、これは、魔力の枯渇の事故で起こっただけです。それ以上もそれ以下でもないです。」と微笑んでみせる。


「カルヴィン、もう良いだろ。気が済んだかい。お茶会は終わりだ。


ケイトの事で、これ以上の事は、バクスター公爵かバルフォアボール辺境伯を通して、話してくれ。」カルヴィンを睨みながら言った。


そのまま、お茶会が終わり、寮に戻った。


「ケイトさん、お茶会は、大丈夫でしたか?スチュアート王子やカルヴィン様から、無茶な事は言われませんでしたか?」ハンナが心配そうに聞いてくる。


「うん、何もなかったわ。そう、王子がドレスを見てね、いつもと雰囲気が違うって言ってきたのよ。それにね、王子が『、ケイトでも失礼だぞ』って、言ったら、カルヴィン様が、『』という方が失礼だって、言ってくれたのよ。」微笑んだ。


「そうですか。良かったですね。で、何かありましたか?」眉を顰めてる。


「何もなかったわよ。後は、ハンナの事を聞かれたから、そのまま答えただけよ。ハンナ、何を心配しているの。心配しすぎよ。

そうそう、マティー様の事を話したわ。甘やかしすぎの親、とか、干渉し過ぎの親だと、言われてたわ。」笑顔を作った。


に何もなかったのですね、でも、少し、顔色が悪いのですよ。」


「それは、気を使って疲れたの。ハンナ、悪いけど、今日は、二人に気を遣ったから、疲れたので、もう休んでいいかな。明日も、学園は休みでしょ。ゆっくり寝ていい?」


「そうですか、気を遣って疲れただけですね。解りました。今日はお休みください。辺境伯様には、明日でも連絡しますね。」


「ハンナ、お願いしておくわね。」


(やっと、一人になれた。カルヴィンは、ケイトの出生を知っているのかも、ケイトの瞳を見て、確認をしたくらいだもの。


誘拐されて、捨てられた?誘拐する価値がるほどの、赤ん坊だったの?


もし、判ったとして、あたしは、どうしたいのだろう?

どうすれば、良いのだろう?


今は、学園を卒業したら、平民として、何か仕事に就いて、今迄過ごして来た様に・・・・

出来ないのかもしれない。



前世で、父も母も一人っ子だった、私も一人っ子。

祖父母も両親が亡くなり、親戚もおらず、頼る人もいなかった。

相談する相手もいなくて・・・・そうよ、友人も、いなかったのよね。


自分の容姿を変える努力もせず、学歴があれば、と自分勝手に思い込んでいたし、仕事でも・・・・、

あの時、あたしは、人を見下していたから、友人も出来なかった・・・・。

自業自得ってとこかしら。


もし、あの時に、気が付いていれば、一人くらいは、友人も出来たのかもしれない。

全て、過去の事よね。



でも、

今は、育ての親は、亡くなってしまったけど、相談できる人がいる。


あの時と違うのよね。


今のケイトは、色々な人に助けられて、生きている。

ケイトの知らない所でも、助けて貰っている。


拾われてから、ずっと、沢山の人に、助けられていた事は、赤ん坊の身体だったけれど、あたしの意識はあったから、知っている。


そして、魔力がある事が分かった今、魔法学園に通っている。

平民として、村に戻り元の生活に戻れる事はないのだろう。


それなら、魔法学園を卒業した後は、どうすれば良いのだろう?

学園を卒業するまで、残り一年、自分の身の振り方を考えないといけない、それだけは、判っている。)


『ケイト、聞こえるか、今日のお茶会は、どうだったかい?』

マティーからテレパシー念話の声が、聞こえて来た。


『マーぷ、今日の、お茶会は、楽しかったわ。

それにね、マーぷから、貰ったピンクのドレスを着て行ったのよ。可愛く見えたみたい。王子もカルヴィン様も褒めてくださったのよ。マーぷ、心配しないでも、大丈夫だったから、少しだけ、取越し苦労だったみたい。安心してね。

今日は、王子とカルヴィン様だったから、気を使って疲れたの、もう寝るね。良いかな?』


『本当に、何もなかったんだね。』


『うん、何もなかったよ。』


『わかった、今日は疲れたろう。ゆっくりお休み』


『おやすみなさい』


マティーとのテレパシー念話を終えた。


(マティーに、誘拐されて、捨てられた可能性が有った事を話すだったかもしれないわね。


拾われた時に、マティーが、調べてたのは、アトウッドキャクストン国内だけ、カポーティブレナン王国のでの話だから、判らなかったのよね。


だから、カポーティブレナン王国の子供だと、そのまま、魔力なしで、気付かれずに、平民として、暮らせていたはず。


バードとレスが亡くなり、王都に出て来た為に、魔力の事が分かってしまったから仕方がないのだけれど、カポーティブレナン王国の貴族の子供で、誘拐されたとしたら。)

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