第63話

「そうですね、バクスター公爵ですよね。」


(マティーは、魔法の師匠だったり、父親だったり、誰にも言えないけど、彼氏の様に思える時もある、あたしにとって、掛替えのない存在なのよね。)


「スチュアート王子は、ご存じですよね。


マティー様は、ケイトが、捨てられていた時の、村の神父様として、村にいらしていて、ケイトが、両親に育てられる経緯を全て知ってられます。


その、拾われた時に、少しだけ魔力を持っている事が、マティー様に分かったそうです。


そして、魔法を訳も分からず使ったりしない様に、マティー様の傍に居る様にしたそうです。


マティー様は、村で子供達に文字を教えると言う王命で来られていたので、ケイトにも、文字を教えてくださいました。

ただ、魔力を持っているので、5才の魔力判定の時に備えて、普通よりも、少しだけ難しい本を与えられていました。


私にとって、マティー様は、気が付いたら傍に居てくれた、掛替えの無い存在です。父が亡くなってからは、特にマティー様は父親の存在と同じですし、魔法については、幼い時から、色々と教わっているので、魔法の師匠の様にも感じています。」


「ケイト、確認だけど、バクスター公爵は本当の父親って事は、無いんだね。」カルヴィンが、真剣な眼差して聞いてくる。


あたしには、血の繋がった父親はいません。育ててくれた、両親の髪と瞳の色が同じだったのに、今では、瞳の色が少し違ってしまいまいしたし、マティー様の色は、全く持っていませんよ。」とほほ笑んで見せる。


「ケイト、バクスター公爵は、本当は、彼氏の存在では?何せ、マーぷだからね。」スチュアートは、口角を上げながら聞いてくる。


(はー、どうしても、彼氏にしたいのだろう。あたしだったら、彼になって貰いたいわ。でも、無理ね。ケイトとマティーの年齢の差もだし、赤ん坊から面倒をみているのよ、無理でしょ。)


「スチュアート王子は、どうしても、マティー様とケイトを恋人同士にしたいのですか?


残念ですけど、『マーぷ』は、『おと』とのライバルで呼ばせていたのですよ、ケイトも、昔からの呼び方が抜けないのが、悪いのですけれど、恋人とは違いますね。


後、育ての父とマティー様は、いつも張り合っていました。

多分ですけど、マティー様は、父バードの代わりをしていると思っています。」スチュアートに笑みをみせた。


「そうか、本当に恋人同士では、無いんだね。甘い過ぎる父親、干渉し過ぎる父親って所なんだね。彼氏が出来たら、大変だよ、気を付けてね。」と眉を顰めた。


(まあ、彼よりも、早く学園を卒業したいわね。)


「その様な心配はいらないと思います。」


「ケイト、本当に血の繋がった親は、この国にはいないのだね。」カルヴィンがじっと見つめて聞いてくる。


あたしは、本当に血の繋がった親が、生きているのかも知りません。別にどうでもいいですよ。


ケイトを捨てたのだから、マティー様は、一応この国の貴族で、未婚の女性が産んだ可能性や、誘拐も視野に探してくれたようですけど、該当者が、いませんでしたからね。


その様な事はどうでもいいのですよ。

今、本当に幸せなのですよ。

マティー様、始め、育て親の両親も、村の人もそして、バルフォアボール辺境伯様夫妻にも、優しく、見守ってくださり、静かに生活出来ているのですから、感謝しています。


もし、今更ですが、両親が見つかっても、どうなのでしょうね。

理由はどうであれ、捨てたのですから。

会いたいと思いませんし、名乗り出て、どうするつもりでしょうね。」とカルヴィンを見ると、悲しげな表情になっていた。


「ケイトは、今、幸せなんだね。」


「いえ、今です。亡くなってしまいましたが、両親から、沢山の愛情を貰いました。そして、今は、マティー様を始め、周りの人達に支えて貰ってます。だから、今幸せなのです。」


「そうだね。解ったよ。

ケイト、一つ、お願いがあるんだけど、君の瞳を近くて見せて欲しいな。とても、綺麗だからね。」カルヴィンが、寂しげに言った。


ケイトの瞳を見たい?」頭を傾けると、カルヴィンが立上り、傍に来る。


カルヴィンが、ケイトの頬を両手で、抑える。


(顔が近い、キスされそうなくらいの距離じゃない。瞳を見るって、そんな、近すぎる。)


「カルヴィン、おい、何をしているんだ。僕が、いるだろう、ちょっと待てよ。」慌てて、止めようとする。


「あっ、ごめん、本当に、ケイトの瞳を見ていたんだ。赤い眼の中心に金色の瞳孔、そして、輪郭にも、綺麗に金色の輪が出来ているよ。」と頬を撫で、手を離した。


「カルヴィン、いくら、ケイトでも失礼だぞ。」


って、どういう事よ。)


「スチュアート、そういう言い方は止めて貰えるかな。では、無いよ。ケイトに失礼と言ってほしいね。

ケイト、さっきは、ごめんね。でも、本当に君の瞳を確認したかっただけだよ。綺麗な瞳だ。」


「カルヴィン、ケイトの瞳に恋したのかな?

マティーが、ケイトの彼氏に認めるかな?隣国の宰相の嫡男とはいえ、手元から離さないだろうからね。」と口元を緩めている。


「スチュアート、そういう事は、心配しないでいいから。」と言い、そして、ケイトの方を再び見て、


「所で、ケイト、もし、もしもだよ、産まれたばかりの赤ん坊の君を誘拐し、その犯人が、捨てたとして、だよ、それでも、血の繋がった親はどうでもいいのかい?」

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