第63話

「わざわざ、サマンサ様が私の為に、頼みに行かれたのですか?」


「そうよ。サマンサ様は、ケイトさんの事が心配だったのね。

それに、私も話を聞いて、心配になってしまったから、ここへ侍女としてきたのよ。

ケイトさん、何もかもを一人で、抱え込まなくても良いのよ。」


「抱え込んでいませんよ。私は、幸せ者です。周りの人に支えられていると、思っています。」


(この世界で、目が覚めてから、幸せだと思う。幸せの価値って、人それぞれだけど、あたしは、幸せだ。こんなにも周りの人に心配をして貰えている事だ。


スチュアート王子も、意外な事だけど、侍女の件では心配をしてくれていた事を始めて知ったわ。


もしかして、あたしが、知らない事が有るのかも、しれない、ただね、王子、言い方だよね。


でも、最近少しだけ、感じる事は、あたしも、ハンナと話をする時は、ゆったりとした話し方だけど、王子やカルヴィン様に対しては、棘のある言い方しているかもしれないって事。

特に、御令嬢達から嫌がらせがあってから、身を守りたいから、王子やカルヴィン様を遠ざける為に、言い方がきついのかもしれない。


お茶をする時に、話せるなら、少しは気にして話してみよう。)


次の日、学園での授業も昼休みもいつもの様に過ごし、一日が終わって、寮に戻ると、ハンナが、招待状を持って来た。


「ケイトさん、スチュアート王子からの招待状です。」と蝋印のされた、招待状だった。


「ハンナ、これって、断れないのよね。」


「諦めましょうね。他には、誰が招待されているのですか?」


「多分、カポーティブレナン王国のカルヴィン様だと思うわ。」


「ケイトさんに、侍女を付けた事は、王子様もご存じですし、私が、付いたのは、奥様からの頼みだった事を話されれば、宜しいのではないですか。心配しなくとも、大丈夫ですよ。」

穏やかな表情を向けてくれる。


「ありがとう。ハンナのおかげで、気持ちが楽になったわ。」


(そうよね、カルヴィンは、バルフォアボール領地での平民と貴族の話を聞きたいだけだもの。あたしの言い方が、とげとげしいし、ご令嬢の手前、学園では話せないから、お茶かいなのよね。少し、考えすぎだわ。ハンナの言う通りね。)


お茶会は、王宮の庭園で、3人だけだった。


「ケイト、ようこそ、今日は一段と、雰囲気がちがいますね。」とスチュアートが、笑みを浮かべている。


普段学園で着ているドレスは、グレーの地味な色だ。今日は、ハンナが、他の令嬢がいないのならと、マティーが用意してくれていた、淡いピンクのドレスを着せてくれた。


「スチュアート王子、お招きありがとうございます。」とお辞儀をする。


「ケイトらしい、挨拶だね。」とカルヴィンが声を掛けて来る。


カルヴィンに向かっても一礼をすると、


「ケイト、こちらに掛けて、今日は、ご令嬢もいないから、ゆっくりと話を聞かせて貰いたいんだよね。いいかな?」とカルヴィンが、微笑んでいる。


ケイトが知っている事であれば、話せるとおもいます。」とほほ笑みを返した。


侍女が、紅茶とお菓子が持ってくると、

「ケイト、この紅茶とクッキー美味しいよ。食べてみてよ。」とスチュアートが声を掛けて来る。


(えっ、今まで、上から目線だったのに、少し感じが違う。)

「ありがとうございます。」と言って、紅茶を口にした。


「ねえ、ケイト、君の生まれた村の事を聞いてもいいかな?」

カルヴィンが、私を見ながら、聞いてくる。


「カルヴィンは、気が早いね。ゆっくりとお茶を楽しみながら、話を聞いても、いいじゃいか。」


「そうだね。学園では、ケイトは、僕を寄せ付けないようにしているからね。だから、少し、焦ってしまったかな。」とカルヴィンの目元も穏やかだった。


飲んでいた紅茶のカップを置き、カルヴィンの目を見て、ゆっくりと話を始める。

「カルヴィン様は、バルフォアボール領での何を知りたいのです?」


カルヴィンは、ずっと、ケイトの顔から眼を放さず、じっと見つめたまま、


「そうだね、始めに知りたいのは、バルフォアボール領ってカポーティブレナン王国の隣の領地だよね。君の生まれた村って何処の方なのかな?」


「多分、村の森を抜けたら、カポーティブレナン王国ですよ。」


「そうなんだ。えーーと、所で、ケイト君は平民だよね。両親んは魔力を持っていたの?」少し、焦った様子になっている。


「ちょっとまって、カルヴィン、何を聞くんだい?ケイトが、侍女をつけてくれた、バルフォアボール領の村の生活の話じゃなかったのかい。」

スチュアートが、カルヴィンの言葉を遮るように言った。


「それもだけど、ケイトの両親について、少し教えて欲しいと思ったんだ。

ほら、バルフォアボール領の平民って、少しくらい、魔力を持っているかもしれないと思ったから、聞いたら、いけなかったかな。」


「カルヴィン、ケイトの両親はもう亡くなっているんだよ。だから、王都のバルフォアボール邸でメイドをしていたんだ。」


「スチュアート、君は、ケイトの事を詳しく知っているよね、どうしてだい?それは、ケイトが平民で魔力がある事が、珍しいからだろ。僕も少し、ケイトに興味があるんだ、出来る範囲で構わないから、ケイトと話させてもらえるかな、その為のお茶会だろ。」


「そうだが、ケイトに無理強いをして、聞きだす時には、僕が止めるよ。ケイトもそれだったら、話せるかな。」


(スチュアート、ケイトに、配慮してくれているんだ。

それに、カルヴィンは、一体何を聞きたいんだろう。)


「はい、別に話せるとおもいますよ。」


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