第62話

(やっと、これで話しかけてこない筈よね。)


授業が始まり、カルヴィンとの会話も終わる。


昼休みに入ると、カルヴィンは、スチュアートの所に直ぐに向かった。


(良かったわ。王子の所だと、ご令嬢達もそちらに集まるから、ゆっくりお昼が、食べられるわ。)


食堂には、アトウッドキャクストン国の高貴族のご子息とカルヴィンが、一緒に食事を取っていた。

ご令嬢達も、近くで、食事を取り始めている。

ケイトは、外の大木の下で、ゆっくりと、食事を取るようにする。


カルヴィンは、昼の時間が終わると、席に着き、授業の始まる少しの時間だけ、ケイトと、授業や先生の事などの他愛の無い会話をする様になっていた。


授業が、自習になった時に、カルヴィンが、突然、聞いてくる。


「ケイト、この国では、貴族と平民の間の垣根って、そんなに開いているのかい?」


「一部では、ないですか?私の住んでいた、村では、感じていませんでした。ただ、王都に来てからは、貴族と平民の差は感じています。」


「君の村の事を聞きたいんだよね。」


「村の事ですか?スチュアート王子の方が、詳しくないですか?」


(カルヴィンが、バルフォアボール領の事を知りたいの?

カポーティブレナン王国との境だから、話す事を気を付ける様に言われていたわ。王子に話を振ったほうが、正解よね。)


「悪いけどね。ケイトって平民でしょ。普通は、魔力が無くて、学園に通わないよね。でも、魔力があって、学園に来る事に、なって、侍女までつけて貰えるって、どんな村にすんでいるのかなぁ。と思って、興味が沸いたんだ。だから、聞きたいんだよね。」


「それなら、スチュアート王子が、詳しくしっていますよ。

ケイトの村の領主様と王子が話されて、決めたようですので。」


「今度、スチュアート王子も踏まえて、一緒に、お茶でも飲みながら、話してもらえるかな。僕から、スチュアート王子には、頼むから、いいだろ。」


(『いいだろ。』って決定事項じゃない。ケイトからは、断る事が、出来る訳ないじゃない。)


「はい。」と頷いた。


寮に戻り、いつもの様に侍女のハンナとおしゃべりをする。

学園では、貴族ばかりなので、やはり、今でも、なかなか話せないから、ハンナとの会話が唯一の話せる時間。レスの様にハンナは、話をゆっくりと聞いてくれる。


「ハンナ、今日ね。魔法の授業の時に・・・・・・」

「そうなの。ケイトさんは、出来たの・・・・・」と学園であった話をいつもしている。


いつもの様に、ハンナに、話をする。


「今日ね、カルヴィン様が、バルフォアボール領主様が、ハンナを私に付けて、くれたでしょ、その事で、話をゆっくり聞きたいんですって、それで、今度、スチュアート王子とカルヴィン様とお茶をするそうなの。どうすれば良いのかな?断れないでしょ。」


「そうですよね。断れないですよね。バルフォアボール様に連絡しておきます。ケイトさんは、バクスター公爵様に連絡をお願いいできますか?」とハンナは笑顔を覗かせる。


「マティー様には、ケイトが連絡を入れておきますね。」と目元を緩ませる。


「ケイトさんは、バクスター公爵様に、連絡などされないのですか?」


「あまりしない様にしているの。直ぐに、心配するから。」


「そうですね。でも、連絡を入れると喜ばれますよ。」

優しい眼差しで見ている。


その日の夜、久々に、マティーにテレパシー念話をした。

『マーぷ、聞こえる。』


『聞こえるぞ、ケイト何かあったのか?魔力量は大丈夫か?』


『大丈夫よ、要件だけ、話すね。今、カポーティブレナン王国の宰相のご子息、カルヴィン・キャラハン様が留学で来られていて、平民のケイトに、侍女までつけている事に興味を持たれて、話が聞きたいと、スチュアート王子を通して、お茶をしたいと、言ってこられたの。

まだ、どうなるか分からないけど、連絡をしたの。

その時に、マーぷも来られるかな?』


『わからないな、スチュアート王子次第だろ。こっちから、参加するとは、言えないからね。

ケイト、充分に、気を付けるんだよ。』


『うん、大丈夫よ。何かあったら、ハンナに相談しているよ。』


『本当に何かあったら、連絡するんだぞ。』


マティーとのテレパシー念話で、会話も終わり、まだ魔力が、残っている事に、気が付いた。


(前まで、テレパシー念話で話をすると、魔力が無くなり、身体も怠かったのに、今はないわ。少しは、魔力が増えたのかしらね。

魔力を考えて、話していたけど、気にする必要が、少しは減ったのかも。)

と、ぼんやりと考えていると、ハンナが、ホットミルクを持って来た。


「ケイトさん、身体は大丈夫ですか?疲れたでしょ、ホットミルクを持ってきましたよ。少し休んでください。」


「ハンナ、ありがとう。少しハンナに聞きたいの。」


「何ですか?」


「ハンナは、平民の私の侍女にどうして、付いてくれたのかなぁと思ってね。」


「ケイトさんの前は、バルフォアボールの王都の屋敷でサマンサ様の専属の侍女だったのですよ。

でも、娘が出産するにあたって、お暇を頂いたのよ。


ケイトさんの事で、スチュアート王子とご主人様、バクスター公爵様と学園の間で、平民でも侍女を付ける事になった時にね、丁度、私が王都に戻って来たのよ。


その事を聞いた、サマンサ様が、ケイトさんの相談相手をして貰えないかと、学園生活の間を頼みたいと、わざわざ、私の家に訪ねて来られたの。

話を聞いて了承したのよ。」



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