第60話

ハンナが侍女として、着く様になる事で、寮の部屋も少し広く、静かな所に移った。

そして、ケイトの身の回りの世話をしてくれている。

今まで、全て一人で、済ませていた事をハンナが、してくれる。

食事の準備だったり、洋服の手入れだったり、お風呂の準備まで全てだ。


部屋も静かになった事で、防音結界も張らなくて良くなった。


入学して、数日の事が嘘の様に変わった。

部屋に戻ると、ハンナが身の回りの世話をし、学園での様子を聞いてくれる。

レスの様に話を聞いてくれる存在だ。

時々、アイザック辺境伯やマティーに学園の様子を報告している様だ。


あれから、授業の時の嫌がらせも、全く無くなった。

偶に、スチュアート王子が声を掛けてきても、御令嬢達の嫌がらせもない。


一番変わったのは、スチュアート王子だ。


「おはよう。体調はどうだい?」

「マティーに会ったら、僕の所に寄る様に伝えて貰えるかな。」


上から目線の言葉使いや、俺様の言い方がなくなった。

御令嬢達にかける言葉と同じ様に変わった。


それも、急に変わると怖いものがある。

一体、私の意識のない間に何があったのだろう?


平穏な日々が続いている。

急に、教室の外が騒がしくなった。


魔法の失敗で爆発が起こったと。

一人の令嬢の片足が無くなったと騒いでいる。


緊急で聖属性を持っている者が、医務室に来るように言われる

ケイトも、一応は聖属性を持っているので、行くことにした。


スチュアート王子とケイトと上学年の二人の4人だった。

上学年の二人は、怪我をして、聖魔法が使える状態ではない事がはっきりとわかる。


片足位を無くした、令嬢は気を失っている。


「スチュアート王子、私が、やってみます。宜しいですか?」


「大丈夫か?魔力の方は?」


「多分、大丈夫です。それに、今、使って問題はないと思いますよ。」


「頼む」頷いた。


御令嬢の傍に行き、膝から下のない片足のない方に手をかざし、


エンジェルブレス光治癒天」と大きな声を出す。手のひらから、淡い光で、足を再生していく。綺麗に足が出来上がるのを見届けると、そのまま、意識を手放した。


意識が、戻ると、ハンナが横にいる。

「ケイト様、無理しすぎです。アイザック様とマティー様には連絡をいたしました。もうすぐ来られると思います。無茶しすぎです。」にっこりと微笑んでくれる。


「ケイト、ありがとう。今回の件は、助かった。魔力の方は?体調はどうかな?」スチュアート王子が頭を下げる。


「王子、体調は、少しだけ、魔力を使い過ぎたかな、と言う感じです。他には、変わった事は、ありません。ご心配ないです。」


(魔力の枯渇だったら、また瞳の色が変わるのかな?)


「ケイトが居なかったら、彼女の足は無かったんだよ。今回、上級生は自習だったそうだ、そして、間の悪い事に、教師の中に聖属性で聖魔法を使える者が、王宮に出向いていたからね。


ケイトが、自分の魔力量を超えて治療したお陰で、彼女は貴族として、やって行けるだろう。

それにしても、エンジェルブレス光治癒天を使えるなんて、魔力量も、技術も誰にも文句は言われないな。」


アイザック辺境伯とマティーが部屋にやって来た。


「王子、今回はどの様な事ですか?」マティーの怒りの表情が鬼のようだ。


「あまりにも、この様な事が続けば、平民の入学を考えた方が良いのではないですか?」辺境伯も怒っている。


学園長とブラッドが部屋入ってきた。


「バルフォアボール辺境伯にバクスター公爵、今回は、上級生の教室で、魔法の爆発が起こり、一人の令嬢が膝から下を無くす所だったのを治療してもらった。普段は、聖俗性魔法を使える教師や、医師がいるのだが、今回、王宮に呼ばれていて、不在だったのだよ。

今回、ケイトさんに助けて頂いた。無理をさせた事は謝る。

故意では、ないので、許してもらいたい。」二人は、頭を下げる。


「理由は、解りました。本人も自覚はあったでしょう。」とマティーが、ケイトを睨んでいる。


「それにしても、聖属性魔法を使える者はいないのですか?」怪訝そうに言った。


「そうですよ。聖属性の魔力を持っていても、魔力があって、聖属性魔法を使える者は少ないですよ。」と学園長がにっこり微笑んだ。


マティーとスチュアート王子を残して、他の人達は、部屋を後にする。


「王子もう大丈夫です。理由も分かりましたから、少し、ケイトと話します。」


「僕にも、責任があるので、居ますよ。」とマティーを見る。


「あーそうですか。

ケイト、今回の魔力は大丈夫だった?」少し、イライラしている。


「マーぷ、大丈夫だよ。魔力量が無くなるって感じたくらいだったから。

それに、前の様に、怠くて、起きれない状態でも、ないよ。

それより、マーぷ、私の瞳は?」というと、マティーは、ケイトの顔を覗き込んだ。


「大丈夫だ。あれからの変化は無いよ。心配しなくても、良いよ。

でも、少しは、考えて、魔法を使うんだぞ。

使えるからと言って、無理するなよ。」と言いながら、頭を撫でてくる。


(すぐに、頭を撫でるんだから。ケイトも子供じゃないと思うんだけど。)


「あの、マティー、ケイト、瞳の色って?」不思議そうに聞いてくる。


「前回の時に、瞳の色が変わったんだ。ただ、視力も何も変わっていないから、大丈夫だ。ただ、同じ事になれば、また、変わってしまうかもと思っただけだよ。」


「知らなかった事とは言え、無理をさえてすまなかった。」と頭を下げ、部屋から出ていった。


「マーぷ、王子に言ってよかったの?」


「良いのさ、少しは、王子にも責任を感じて貰いたいしね。

まだ、学園生活は残っているんだ、ケイト、本当に無理はするなね。」






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