第59話
そのまま、意識を手放した。
(あれ、ここは?)
「ケイト、目が覚めたかい。」マティーが、いる。
「マーぷ、どうして?
「ああ、そうだな。あれから一週間、寝ていたよ。ケイトの身体の中で、魔力が暴れていたようだ。急に魔法を使っていたんじゃないかな?」心配そうにマティーが顔を覗き込んだ。
「もしかして、マーぷ、ずっと居てくれたの?」
「連絡をもらってね。アイクも、バルフォアボール辺境伯としてこちらに来ている。今回の事については、抗議しているんだ。」
「抗議しなくても・・・・」
「いや、これから先の事を考えれば、抗議した方がいいんだ。
寮の部屋にしても、生徒の部屋でなく、侍女の部屋だったし、授業での怪我の経緯も聞いた、侯爵家のお嬢様の嫌がらせらしいな。ケイトがそこまで、庇う必要はないよ。」
「庇ってたんじゃないの、これ以上、嫌がらせをされるのが、嫌だったの。
何も無かった様にすれば、もう、仕掛けて来なくなると、思ったから。」
「多分、それはないよ。味を占めて、まだ酷い事をされるだろう。
今回、アイクが、正式に抗議をし、ソフィア嬢は、謹慎を言い渡されたよ。
他の、御令嬢も少しは、大人しくなるだろう。」
マティーの優しい瞳で見られ、優しく頭を撫でる。
「ケイト、我慢をしなくて良いんだよ。ここは、魔力を持って要る者が、通う学園なのだよ。平民でも、学ぶんのだから、それに、ケイトは学園の勉強についていける様に、教えたつもりだよ。」
「そうだね。マーぷは、学園に通うと思ってたの?」
「半分はね。バード達と同じ様に、平民で生涯過ごせるなら、通わなくてもいいと思っていたし、でも、ケイトの魔力の暴走や枯渇などが起これば、学園に通っていた方が、良いとも思ってた。ケイトの為には、どちらが良いかは、判らなかった。ただ、バードもレスも亡くなった事で、学園に通った方が良いとは思ったけど、ケイトは、平民に拘ったろ、無理強いはできないからね。」
「うん、今回の事で、少しだけ解った気がする。学園に通って、魔力の事を少し考える様になったもの」と少しだけ、笑顔になれた。
「ケイト、少し、鏡を見て貰って良いかな。」と言って、マティーは、手鏡を渡してくれた。
「驚かないで欲しいんだ。」
「何?寝ている間に、太ったとか、顔中に吹き出物が出来ているとか?何?」
手鏡を持ち上げて、顔を覗き込んだ。
「瞳の色、バードと同じ色の赤色が、何で?これって、どうして?」
「ケイト、落着いて」と抱き締める。
「全部の色が変わったんじゃないよ。瞳孔と虹彩の縁だけが、金色になっているんだ。よく見ると、判るかい?落着いてよく見てご覧。
大丈夫だ、ケイト、周りは見えるのだろ。何も変わってないよ。大丈夫だから。」
「今回の、魔力の枯渇のせいなの?」
「いや、体の中で、魔力が暴れていたらしいよ。だから、一週間も眠り続けたんだよ。
色々と、無理も我慢もし過ぎだったんだ。学園側も非を認めたしね。」
「多分、学園に行っても、前と違って、過ごしやすいと思うよ。
それに、ケイトの大事なポシェットの持ち込みも了解をもらったから。」
「スチュアート王子は?」
「王子も反省しているよ。今まで、貴族令嬢としか接点がなかったから、平民のケイトへの対応が、杜撰だし、横柄だったとこを認識した様だよ。」思い出し笑いなのか、ニヤリとする。
(マティー、腹黒王子に何かを言ったのよね。そうでないと、悪巧みの様な顔をしないもの。一体何を言ったの?)
「マーぷ、王子に何を言ったの?顔が、悪巧みをしているような顔しているよ。」
「何も言ってないよ、強いていうなら、ブラッドの方だな。まあ、その内に話すよ。」
トントン、
「マティー、ケイトはどうだ?」と聞いてくる声がする。
「アイクか、ケイトは目を覚ましたよ。もう大丈夫だ。」
アイザックが部屋に入り、
「今回は、大変だったね。もう、大丈夫かい?
魔力を持った者は、平民でも学園で学ばなければいけないんだ。その対応が、出来ないのなら、貴族だけにすれば良いと抗議をしたよ。
ケイトの他にも魔力を持った、平民がいた時には、同じ事が繰り返されるからね。」と穏やかな笑顔を向ける。
「ありがとうございます。大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「後、今回の事で、ケイトにも侍女をつける事にした。
これは、バルフォアボール領民で、魔力を持ち学園に通う事になったら、同じ様にするから、気にしないでくれ。」笑顔が怖い。
暫くして、ハンナと言う30代の女性を侍女として紹介して持った。
そして、今
「マティー様、ケイト様の事は、私がお世話致しますので、お帰りください。
また、何かありましたら、ご連絡いたします。」
「じゃあ、ケイトを頼んでおくね。」と手をひらひらさせて、部屋から出ていった。
ハンナは
「ケイト様、マティー様は、子離れできない様ですね。」
「ハンナさん、様はいらないですよ。私、平民なのでケイトで良いですよ。」
「ケイト様、ここは学園です。辺境伯様が私をお遣しになったのは、ケイト様を平民だからと言って、軽んじたからです。そして、私の事は、ハンナと呼び捨てにしてください。」
「そうですね。ハンナ、私は、せめて、”様“は止めてせめて、”さん”はどうですか?」
「無理ですね。お嬢様で」
「お願いです。二人だけの時には、呼び捨てでお願いします。人がいる時は、様でいいですので。」と懇願した。
「仕方がないですね。ケイトさん。人がいる時には、ケイト様でよろしいですね。」
「はい。それでお願いします。」
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