第55話

「どちらを選んだとしても、友達はできないのよね。よーし、覚悟を決めたわ。」


魔法学園の3年間は、魔法を全力を使う。魔力はあると言うけど、実際にはどのくらいなのかわからないし、闇属性以外、全て使い得るのなら、全てを使おう。

そして、『どんどん魔法を使いなよ。』と言った、腹黒王子。無責任に言ってしまったと反省するぐらいまで、魔法を使えるようになろう。


ベットに入り、すぐに、意識を手放した。

朝、目が覚めると、何故か?枕が濡れ、目の周りには、涙の後があった。

夢を見たのよね、不安で泣いたのか?寂しくて泣いたのか?夢を覚えていない。

事実は、泣いた事だけ。

全力で魔法を使うと決めたのよ。不安に思っちゃダメだ。

寂しい、どちらにしても、一人なのよ。

ただ、魔法を使えてたからと言って、自慢もしては、いけない。

傲慢になってもいけない。それだけは、忘れてはいけない。


学園に行く準備をし、寮の食堂に向かう。

食堂は開いたばかり、まだ学生は誰もいない。

給仕をしている30代くらいの女性が、ケイトを見て驚いている。


「おはようございます。もう、朝食を取っても、宜しいですか?」


「おはようございます。はい、大丈夫です。」と言いながら、頭を深く下げる。


「あの〜、すみませんが、そのように、ケイトには、対応されなくても、大丈夫ですよ。ケイトは、平民なので、多分これからこの時間に朝食を頂きに来させて貰いたいのです。」


「ここの、生徒さんですよね。本当に平民なのですか?」


「はい、だから、貴族のいない、この時間に食事を取りたくて、良いですか?」


給仕の女性が、頷き

「早く、座って、すぐに持って来るから。」と言って下がって行った。


その給仕の女性は、直ぐに、食事を持って来てくれた。


「本当に、平民なのかい?」


「はい」と頷いた。


給仕の女性は、優しく微笑みながら、

「ここで、働いているのは、平民だよ。気を使わなくても、大丈夫だよ。明日は、もう少し早く来て、開いてなくても、食べられる様に準備をしておくからね」


「ありがとうございます。ケイトと言います。よろしくお願いします。」といい、頭を下げた。


「ケイトちゃんね。私は、イルマよ。よろしくね。さあ、早く食べないと、貴族の方と一緒になってしまうよ。」


イルマに促され、食事を手早く済ませ、食べ終わり、食器を下げに厨房に向かい、

「ありがとうございました。明日もお願いします。」と頭を下げると


「おー、頑張れよ。」調理をしている、一人の男性が片手を上げ声をかけてくれた。


「ケイトちゃん、食器下げなくても良いのよ。」とイルマは、手に持っていた、トレイを取り上げる。


「すみません。ありがとう」と、頭を下げ、その場を後にした。


そのまま、学園の魔法練習場に向かう。

練習場は、学生なら、いつでも使えると、説明があったが、練習場には、誰の来ていない。


基本、貴族は魔法が使えて当たり前、学園に入学する前には、殆どの魔法を練習して来るのだから、この練習場に来るのは、下位の貴族の補習ぐらいしか、使用されていないと説明があった。


(誰も練習場を心置きなく使えるわ。

まずは、防御魔法でどのくらいまで、防御出来るのかを確かめる事と、習熟度を上げる事よね。)


物理的な攻撃を自分に向けて、放つように設定する。

設定をし、防御魔法を感知すると、火の玉が、飛んでくる。


「痛い」防御魔法が弱いから、火の玉が足に当たり、火傷になった。

防御魔法が解かれると、火の玉も飛んでこない。


「まだまだね。ヒール回復魔法」足に手を当てて、火傷を治す。


ディフェンス・シールド防御結界」声を出して、防御魔法をかける。


火の玉が飛んでくる。今度は、左腕に当たる。


ヒール回復魔法」左腕に右手の掌を当てる。


何度か繰り返していると、始業時間になり、教室に入り、静かに席に着いた。

昨日の様に、机の上にゴミは置いてなかった。


(毎日、机の上にゴミを置かれても、魔法で片付けるから良いけど、面倒よね。)


午前の授業は、魔法学と領地経営学だった。


(領地経営学・・・・関係ないけど、試験があるのだら覚えないといけないのよね。お昼は、昨日見つけた所でランチをして、午後からは、魔法の実践よね。)


お昼は、阻害認識魔法を使って、大木の下でランチを取る事にした。

腹黒王子達は食堂で食べているのだろう、ベンチには来なかった。


(今日は、王子が絡んでこないから、御令嬢達も、何もしてこないわ。このまま、そっとして欲しいわ。)


午後からの授業は、魔法の実践。

ブラッド先生の指導の元で、風属性魔法のウィンディ・シールド風力結界の練習を始める。


「風属性魔法の風力結界だが、普通は、火球を弾く時に使うが、怪我をしない為に、水球で、行うから、失敗すれば、びしょ濡れになる事を覚悟するように。」と注意があった。


それぞれの、風力結果が発動すると、水球が飛んでくる。

風属性を持っていないく、魔力の弱い人が、水球を弾き損ない、濡れる人もちらほらと、いた。


最後に、ケイトの順番が回ってきた。


ウィンディ・シールド風力結界」と言ったと同時に、大きな火球が足を目掛けて飛んでくる。


「あっ」と言ったと同時に、足にぶつかり、後に倒れてしまった。

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