第51話

「これからの先の事は、王子とブラッドの胸の内に収めてもらえますか」

マティーは、ケイトの手を強く握った。


(マティーと二人だけの秘密を、目の前にいる、二人に話すのね。今まで、魔法を使えても、全てを話した事はない。魔力がある事で、今までと変わってしまうのだろうか?)

そう思うと、マティーを見て、頷き、手を強く握り返した。


「話すなら、力になるよ。でも、何故そこまで、魔力を隠したいんだ。

ブラッドは、少し眉を顰めた。


「ケイトの魔力って、王家にとって、脅威になる程あるのか?」スチュアート王子が、訝しげ言った。


「ケイトの、魔力は、生まれた時からあったよ。魔力を感じたからね、でもケイトの育ての親は平民だからね。

もし、訳もわからずに、魔法を使うかもしれないし、下手をすれば、魔力の暴走も気になったから、昼は教会に来させ、面相を見たよ。」


「でも、5歳の時の魔力検定は、魔力なしだったろ。」ブラッドが、呆れた様に言った。


「前日に魔法を使ってたし、魔石で魔力を吸い取ったから、検定はうまく、魔力なしになったよ。」


「へー、そんな事が、出来たんだ。今その魔石は、どこ?」


「ここに、入っています。」と言って、認識阻害魔法を解いて、ポシェットから、髪留めと、ペンダントを取り出して、ブラッドと王子に見せた。


「ペンダントと髪飾り?それが、魔力を吸い取るのか?」

ブラッドは、アクセサリーを見ながら、不思議そうに言う。


「父と母が、ペンダントと髪飾りは作ってもらいましたが、魔石は、」と言いかけマティーを見ると、


「魔道具士エマに最後は頼んだ、ただケイトの両親はアクセサリー作成士と思っていたよ。」


「両親が作ってくれた物です。私には、とても大切なものなのです。」


(バードとレス、ケイトの家族の模様が入った、ペンダントと髪飾り、家族の証の色で、作ってくれた、アクセサリー、今はしなくなっても、大事な物よ。)


「そのポシェット、空間魔法を使ってるよね。他に何を入れているの?」


「魔法の本を入れています。」マティーから貰った、マナーの本、魔法の初級、中級の本を取り出した。


「魔力を吸い取るアクセサリーに魔法の本となると、そりゃ〜、人には、見せられないよな。でも、空間魔法に、阻害認識魔法か〜。」


「これ程、魔法が使えるなら、やはり、Aクラスで当然だな。」

クラス分けで、間違えは無かったと、ブラッドは納得している。


「他にまだ、秘密があるんでしょ。もう、言った方いいよ。後から、色々というよりも、今じゃない。正直に言いなよ。」


「そう言えば、属性は聞いてなかったけど、何を使えるの?」


「闇属性以外、全てだよ。」仕方がないと思ったのか、マティーは、はっきりと言い切った。


「「はぁ〜」」二人とも目を丸くして、驚いている。


「聖魔法を使えるよ、父親が、魔物に襲われ亡くなった時に、ソウルリバース魂魄回帰を使ったからな。」


ソウルリバース魂魄回帰を使ったって、」スチュアート王子が、額に手を充て、言った。


「父親の最後の言葉を、母親と一緒に聞いた、だから母親は、ケイトに魔法を気兼ねなく使う生活を願って、亡くなったんだ。」


「教会本部で、魔力検定をしたのは、その為か?」ブラッドが訝しげに聞いた。


「いや、違うよ。サマンサ夫人とケイトが教会に行った時だよ、村で、魔力検定の時に教会の神父として来ていた、ドミニク神父が、ケイトを見つけたんだ、

どうしても、その時の判定が、可笑しいと思ってたから、再検定に持ち込んだのだんだ。」


「それだったら、教会本部は、ケイトの魔力は知っているだろ。」


「魔力量と属性だけはね。」マティーは、ニヤリとした。


「と言うと、魔法を使う事は?」ブラッドは、眉を顰めた。


「知らないよ、ましてソウルリバース魂魄回帰を支える事はね。

それに、小さい怪我は無詠唱での、ヒール回復魔法だな。」と、二人に話した。


マティーの手を少し引っ張り、

「マーぷ、ローンジェリー洗濯フォールドゥ畳むをよく使ってるよ。」と小さな声で言う。


「水属性と風属性だね。それは、無詠唱で、使うの?」


「いいえ、詠唱を小声で言います。」


「でもさ、ヒール回復魔法は、無詠唱ができるんでしょ。」


「それは・・・・、小さい怪我の時は、怪我をした所を触って、心の中で言えば、治るだけの事です。王子様は、小さい怪我で。『痛い、早く治れって』大きな声で言いますか?」と頭を傾ける。


「言わないよ、でもね、心の中で、言っても治らないよ。無詠唱ってやつさ。

防音結界を張るよね、それも無詠唱?」


「それも、詠唱を言います。」


「でも、それだけ魔法を使っているのに、使えない振りする必要ある?

今の時点でさ、魔力持ちだと解ってるんだら、使える魔法を見せつけた方が、得策だと思うんだけど、マティーはその所、どう思ってるの?」手に顎を置き、スチュアート王子が、淡々と言う。


「ケイトの闇属性以外全て持っているけど、一番の属性は光でしょう、魔力量もあるとなれば、王家が欲しがるでしょうね。正しく言えば、魔法宮廷団がですかね。それと、問題は、ケイトが捨てられていた、場所ですよ、隣国に接している森の入り口だという事です。

我が国の貴族の子供でない、となると、隣国の貴族の子供かもしれないという事です。これだけの魔力量があるという事は、それないりの高貴族だと思って良いと思います。それが、何故か、捨てられていたんですよ。何かあると思おうでしょ。

だから、隠していた。それに、ケイトの育て親、平凡な生活を望んでいましたから」今までの、マティーの考えなのだろう。淡々と語った。


「それって、マティー達が思ってる事でしょ。ケイトは、どう思ってるって聞いた事ある?周りが思ってるから、それに応えようと、ケイトも思っているんじゃない?それって、ケイトの本心なのかな?」

スチュアート王子が頭を傾け、ケイトを見る。


あたしは、・・・・」




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