第50話

「両親ともに、ケイトを溺愛していたし、ケイトは、毎日、教会に来て、僕が、相手をしてながら文字を教えていたからね。」


「マーぷ」と呟くと、マティーはケイトの方を見て目を細めた。


「ケイトは、高貴族の子供で魔力があったら、大変だから、赤ん坊の頃から、様子を見る為に来ていたんだよ。

5歳の魔力検定の時は、魔力なしでだったけどね。」


マティーは、ケイトをいて、微笑んでくれた。

ケイトも、マティーをみて微笑みながら、頷く。


「三年前に、ケイトの父親が、森の入り口で、魔物に殺された。

その時に、ケイトは、拾われた事を知ったんだ。

そして、二年前に母親が病気になり、母親が亡くなる前に、村長と僕にケイトを託したんだ。

そして、ケイトが一人になった時に、領主である、アイクの所で働く事にしたんだ。

教会本部の水晶で魔力が判ってからは、ケイトに魔法の練習をしたら、伸びたんだ、だけど、平民として生きたいと、ケイトが、願ったから、その希望は、叶えてやりたかった、だけだよ」


ケイトは、マティーの手を握って、見つめていると、マティーもケイトを見て、目を細め、お互いに頷いた。


「バクスター公爵、ケイトは急に魔力が多くなり、魔法が使えるようになったという事ですか?」スチュアート王子が、睨みながら聞いてきた。


「マティー、ケイトは君の恋人?」ニヤリとしながら、ブラッドフォードが言う。


ケイトとマティーは、手を握ったまま、顔を見合わせて、頭を傾げた。


「ブラッド、何?恋人じゃないよ。娘の様なものだよ。」平然とマティーが言うと、


「ケイトは、どうなの?マティーの事が好きなの?」とブラッドフォードがケイトに聞いてきた。


「マーぷ、あっ マティー様は、お父さんと同じです。」つい、いつもの呼び名を言ってしまった。


(そうよ、マティーは、ケイトは、赤ん坊の時から見ているから、娘のように接してくれている。あたしは、たまに、恋人が、マティー見ないなら、いいなと憧れはあるけど、恋人と言われると、違うわ。)


「ふーん、マーぷ、ね。二人さ、ずっと手を握って、見つめ合って、頷いているけど、それって、恋人同士の仕草だよね。気づいてる?」

とスチュアート王子が呆れたように言う。


マティーの手を強く握ると、

「ケイトの事は、赤ん坊の時から、面倒を見ています。今でも、赤ん坊の頃と変わらないですよ。」


「ふーん、二人を見ていると、秘密を持った恋人の様だよ。違うんだ。今も手を握っているよね。どうして?」


「スチュアート王子、よろしいですか。」


「何?言っていいよ。」


「はい、ありがとございます。

マティー様には、いつも、手を繋いで貰ってましたし。膝の上に、いつもケイトは、乗っていました。話をする時は、目を合わせて、話をしていました。

それに、ケイトが、不安になる時などは、手を握ってくださるのが普通でした。それは、父も母も同じようにして貰っていました。

だから、王子様が言われるまで、恋人同士のする仕草と言われて、驚いています。」


「ふーん、じゃあ次の話だけど、僕がポシェットを持ち歩かない方が、良いと言ったね。なのに君は、阻害認識魔法まで使って、持ち歩いているよね。どうして?」


「それは、父と母の最後に作ってくれた、形見の品です。作って貰ってから、ずっと持ち歩いていました。両親が亡くなってからは、二人が私の傍にいてくれるようで、身に付けていないと不安あになるからです。」


「君はさ、不安になるからと言って、形見の品を持ち歩き、マティーが、傍にいれば、不安だからと言って、手を握るの?」


(違うわ。ポシェットの中は、バード達からの形見品や、マティーから貰った本も入っている。隠したい物を入れているから、手を繋いで、合図をしてしまうのは、今までと同じ、二人だけの秘密だからよ。秘密を持った、親子だからよ。)


「なぁ、マティー、俺たちを信じないか?」


「ブラッド、いきなり何だよ。」


「マティー、もう一度言うが、俺は、使った魔法の痕跡も判る、他にもあるだろ、使っている魔法がさ。

お前が、娘の様に可愛がっているのは、解った、だけど、学園だぞ、今のままだと、ケイトは、孤立するぞ、事情を知っている、味方がいた方がいいだろ。

俺達を、味方に付ける為にも、正直に言ってくれよ。」


「ブラッド、そうだよな、お前には、隠せないのか・・・・・、ケイトの味方にか。」ゆっくりと、マティーは、ケイトの方を見ながら、頷いた。

ケイトも、覚悟を決め、頷くと。


「ああ、全てを話すよ。学園でケイトの事を守ってくれ、頼むよ。」


(ブラッドフォード先生は、マティーの昔からの友達の様だから、使ってる魔法や、使った痕跡がわかるなら、話さないと仕方がない、でも、スチュアート王子には、教えたくないんだけど、無理なのよね。)


「知っているのと、知らないのでは、サポートの仕方が違うよ。

今朝だって、ソフィア嬢から、守ったつもりだけど。少しは、信用してよ。」とスチュアート王子が、口角を上げ、目を細めている。


(やっぱり、上から目線の、スチュアート王子、苦手だわ。)


「スチュアート王子、お願いがあります。今の話が、全てです。これからの先の事は、王子とブラッドの胸の内に収めてもらえますか。」

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