第49話

「入学式の時に注意したと思うけど、無視してまで、持って来ているの?良い度胸しているね。」怪訝そうな顔で見ている。


「申し訳ありません。どうしても、このポシェットだけは、手元から、離したくなかったのです。」深く頭を下げる。


「へぇー、王子の僕が注意してもね。それ程大事な物なの、阻害認識魔法まで使うとはね。詳しい話を聞きたいね。僕もだけど、ブラッドフォード先生もだろうね。君の保護者のマシュー・バクスター公爵も呼んで、聞こうか。」


「スチュアート王子、話しますので、マティー様を呼び出すのは、これ以上迷惑をお掛けしたくありません、ご容赦をお願いします。」


(阻害認識魔法も防音結界を使ったのは、ケイトなのだから、マティーには、迷惑をかけられない。王子の指示を聞かず、不敬を働いたのは、ケイトなのだから。それに、ブラッドフォード先生は、マティーがCクラスに入る様に指示したと思っている、呼び出して、マティーに聞き出すつもりだわ。どうにか、マティーの呼び出しを避けたいわ。)


「無理だね。今朝、君の保護者のマシュー・バクスター公爵を呼び出して、いるからね。僕について来てもらおうか。」と言いつつ対話室に向かう。


(王子も先生もぐるだったのね。始めから、マティーも呼んでいて、私の対応を楽しんでいたんだ。こんな事になるなんて、どうしよう、マティーに迷惑をかけてしまうわ)


対話室のソファーに、マティーとブラッドフォード先生が、テーブルを挟んで座っている。


「ブラッドフォード先生、ケイトを連れてきましたよ。」と王子がサラリと言って、ブラッドフォードの横に座った。


「ケイト、君の保護者のマシュー・バクスター公爵の横にかけて」とブラッドフォード先生が、マティーの横を指し、腰をかけるように指示をする。


ふと、マティーを見ると、眉を顰めている。


「おい、ブラッド、もう良いだろ。全てを話すから、勘弁してくれよ。」マティーは、眉を顰めている。


「へー、マシュー・バクスター公爵、話す気になったんだ。王宮からの家庭教師も欺いていたよね。その事も話すの?」表情は笑っているが、目の奥は笑っていない。


マティーはケイトを見た。ケイトもマティーも一緒に頷き、全てを話す事に同意した、合図だった。


(多分、マティーとの二人だけの約束の秘密をこの二人に話さないと、いけないのよね。ケイトが招いた事だもの。)


「ああ、全てを話すが、魔力量や使える魔法については、僕とケイト本人しか知らないよ。

魔力や魔法の件については、まあ時間の問題だと思っていたからね。

所で、王子もブラッドもケイトの事は何処までを知っているんだ?」と、眉を顰める。


「平民の子供で、バルフォアボール辺境伯の領地から連れてきた、子供のメイドが、王都の教会本部で魔力検定をたまたまして、魔力を持っている事が判った、って事だね。教会本部は、詳しい事は連絡してこなかったよ。


平民が魔力を持っている事は稀だし、教会本部からの連絡では、どれ程の魔力なのか判らないから、王宮から家庭教師を派遣したんだけどね。

家庭教師が、言うには、魔力も、魔法も使えるのに隠していると、報告は上がっていたんだ。そして、たまにマティー君がケイトに会っている事も連絡が来ていたよ。

だから、学園側に、ケイトには注意をして貰っていた。」と、マティーを睨みながら、スチュアート王子が言う。


「僕が魔法の痕跡を見る事が出来る事をマティー君は知っているだろ。クラス分けの前に、防音結界や、阻害認識魔法を寮で使ったから、助かったけどね。

そのお陰で。クラス分け前にAクラスって決まったよ。

ただ、試験の時は、技とCクラスになるようにしている事もわかったけどね。」

続けて、ブラッドフォードが、口に弧を描いた。


「全てを話すが、頼みがある。防音結界を張らせてもらいたい事と、出生については、ケイトも両親を亡くしてから、知った事だ、その事を踏まえて、話を聞いてもらいたい。」とマティーは頭を下げる。


(マティー、ケイトの為に、頭を下げないで。

それに、あたしは、知ってるよ。森の入り口で目が覚めたから、マティーは、赤ん坊で話せないから、知らないと思ってるんだろうけど。)


マティーが静かにして防音結界を張る。

そして、話し始めた。


「ケイトは、捨て子だった、それも隣国と接している森の入り口にだ。」


「捨て子だったって、そんな報告は来ていない。」スチュアート王子が、怪訝そうに言いう。


「村の一組の新婚家庭に子供が出来喜んでいた矢先に、赤ん坊が亡り、夫婦が、教会の帰りに、赤ん坊を拾ったのだよ。それも、自分の子供と言っても過言ではない、髪も瞳の色も持っていたからね。」


「その子が、ケイトだったのか?」不思議そうにブラッドフォードが、聞くと。


「そうだよ、ただ、一つ問題があったよ。その赤ん坊が身につけていたのは、高貴族の子供が身につける様な、洋服やお包みだったから、村長が教会に、赤ん坊と夫婦を連れて、相談に来たのさ。」


「その時の、神父って、もしかして、マティー、君だったのか?」ブラッドフォードが、眉を顰めている。


「そうだよ、僕が、王宮から神父として、派遣されていた時だよ。一応は、この国の貴族の赤ん坊ではないか?と確認はしたが、居なかった、だから平民の子供として、普通に過ごしたのさ。

両親ともに、ケイトを溺愛していたし、ケイトは、毎日、教会に来て、僕が、相手をしてながら文字を教えていたからね。」

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