第47話

ただ、部屋にポシェットを置いていくのは、どうしても嫌だった。


バードとレスが作ってくれた、最後の形見の品、そして、その中には、空間魔法で、髪留めとペンダントが、収納をしている。


(どうしよう。王子は、身につけないように、と言われたし、でも、この部屋に置いておく気になれないわ。)


部屋は、王都のバルフォアボール邸で、住んで居た部屋よりも、少し狭いが、全ての物は、揃っている。


この寮に入る時は、少し小さめのバッグに、必要な物を入れて運こんだ、まだ、必要でない、学園で必要だろうと思われるドレスなどは、バルフォアボール邸の部屋に置いている。

それは、バルフォアボール夫妻が、時々、私が屋敷に来させ、様子を知る為に、指示を出していたからだ。


また、辺境伯夫妻は、私の魔力量、魔法の技量や文字などの事はある程度知っているが、マティーが、詳しく教える必要は無いからと、空間魔法の収納スペースが広くなって、バッグに全ての荷物を入れられる程の空間が出来きる事は、マティー以外には秘密にしている。


そして、ドミニク神父からの連絡では、教会本部が、王宮へ、平民で、魔力を持っている子供が、王都にいた事実だけを報告したと聞いた。


だから、王宮から、貴族と一緒に学ぶのだから、魔法や文字を教えると言う名目で、家庭教師が派遣されたのだと。


マティーと辺境伯夫妻が、家庭教師は、王宮へ報告するのだから、あまり魔法を使える事や文字などの勉強ができる事は知られないようにした方が、良いだろうという意見だった。


(マティーが、何故か魔力量や、魔法について、秘密にしたがるのか、理由が判らないわ。村に住んでいた時は、平民で過ごす為に、魔力を隠す必要があったから、だけど、今は違うわ。

それに、辺境伯夫妻は、私の秘密も知っている。なのに、マティーは、隠したがるのよね。)


時々、マティーが、来て、中級魔法の練習に付き合ってもらっているが、辺境伯夫妻には、の魔法の進捗を報告している。


「ケイト、今日は、移転魔法を練習しよう、覚えると、便利だよ。ただ、一度、行った所じゃないと、いけないのが、欠点なのだよ。」


「一度、行った事がないと、駄目なの?そうしたら、マーぷ、村の教会には、転移魔法を使って行ける?」


「最初は、近い所から練習をして、段々と距離を伸ばせば、使えるようになると思うよ。

ケイト、移転魔法の事は。」と言って、人差し指を口に当てた。


ケイトも、同じように人差し指を口に当てる。

マティーと二人だけの秘密の合図。

合図をしていると、静かに頭を撫でる。


本を読んでいたからか、マティーの教えが良いのか、魔法の上達が早く感じた。


(そうよ、阻害認識魔法で、ポシェットを見えなくする。持ち歩いても、相手には、見えないわ。この魔法を使えば、持ち歩けるわ。)


転移魔法と阻害認識魔法は、上級魔法に近い魔法だとマティーが教えてくれた。だから、二人だけの秘密にしていると。

たとえ、上級魔法が使えても、知られないようにする事を念押しされている。


ケイトは、防音結界を張った、寮の部屋で、ポシェットに阻害認識魔法をかける。


これで、ポシェットは、ケイト以外には、見えないはず、外に持って、出掛けてても、判らないわ。

王子から言われていたけど、大丈夫よね。


学園登校の初日。クラス分けの試験が、行われる。

爵位順に、A、B、Cクラスに入り、試験をし、その結果で、新たに、クラス編成をすると成っていた。


勿論、ケイトは、Cクラスで試験をし、結果もCクラスの予定だ。

マティーと辺境伯夫妻も意見は一致していた。

魔力を持っていると解っても、平民として、この先、暮らす為には、その方が良い事だと、教えて貰っていた。


辺境伯夫妻は、使える魔法を教えていないから、魔力量が多くても、技量が伴っていないと判断している為だ。


そして、試験結果・・・・

何故?ペーパーテストも、間違いを多く書いたし、魔法も使えないふりをした。魔力量も前日に魔石に込めた上に、ポシェットに阻害認識魔法を使い、部屋には防音結界を張って、魔力量も減らし、魔力量測定も少なかったはずよね。

どうして?と思いながら、クラス分けの掲示板を見ていると、一人の令嬢が、大声で、抗議を始めた。


「この結果は、可笑しいは、平民の子がどうして、Aクラスなの?何故、侯爵家の私がBクラスなのよ。

この子、魔力測定の時に魔力量も少なかったわよ、魔法も碌な魔法を使えなかったじゃないの。ペーパー試験も、平民が判る訳ないじゃない。平民は、Cクラスよ。」

と言うと、他の御子息、御令嬢まで、同じような事を言い始めた。


私も、Cクラスに入りたい。同じ様に抗議の声を出したいが、言える様な身分ではない。じっと下を向き、時が過ぎ、学園側がCクラスにする事を待つしかない、と思っていた時。


「ケイトは、Aクラスなんだね。僕と同じになったね。宜しく。」と、声を掛けられる、嫌な予感しかない、声のする方を向くと、そこには、スチュアート王子だった。


その一言で、先ほどまで、抗議をしていた、御子息、御令嬢は、黙り込んだ。


「ソフィア嬢、Bクラスなんだね、少し寂しいけど、来年は同じクラスになれる様に頑張ってね。」と笑顔を見せ、去って行った。


「あなた、平民くせになんなのよ。王子に声をかけるて貰えるなんて、王子にどんな手を使ったのよ。魔法の試験の時に碌に魔法を使えなかったわよね。良いわ、途中で根を上げて、クラスを落として貰えば良いのよ。」と大声で言い。

他の御令嬢と一緒に、自分達のクラスの教室に行った。


他の貴族達も、ケイトを避ける様にして、クラス分けされた教室に入って行った。


(最下位を狙ったはずなんだけど。どうして、Aクラスに行かないといけないのよ。)

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