第34話

とうとう、来てしまった、魔力検定の日。

5歳になったらこの国では、全ての子供が受ける、魔力検定。


あれから、魔法学園に行くメリット、デメリットを聞かされた。

最後はケイト自身が決める事だと言われた。


マティーからは、田舎の教会での魔力検定は、簡易物で、小さな水晶に手を置き光で魔力があるのか、無いのかを調べるだけだと。

マティー神父が、ケイトの魔力量を調べた、水晶だった。


「ケイト、魔力検定の結果は、自分で決めなさい。エマがいる時に、魔力量を調べた時の事を考えれば、どうすれば、どちらの判定になるのかが、解っているだろ。」


「はい、解ってますよ。」にこやかに答えた。

(もう、どうするかを決めている。)


魔力検定をするのは、ドミニク神父。

魔力検定の水晶の横で、バルフォアボール辺境伯とマティー神父が見届け人として、見ている中で、順番が回って来た。


「ケイトちゃん、前の人見てた?水晶に手を置くだけでいいからね。」何度も繰り返し、注意事項を話してくれる。


(そんなに、言われなくても、手を置くだけなのに、前の二人の時は、それ程、言ってなかったでしょ、大丈夫なのに、ドミニク神父、何を心配しているのよ。)


「はい。」と言って、左手にペンダントを強く握りしめた。

水晶の光は、無かった。


ドミニク神父の眉間に皺を寄せながら、

「ケイトちゃん、手を離していいよ。もう、魔力検定は終わったよ。」


「はい。もう終わったですね。」

(はぁ〜、終わった。これで良かったよね、あたしが、選んだ道よ。バードとレスの3人家族で、慎ましく生活をする事を選んだ結果よ。)


村にいる5歳の子供はケイトを入れて、3人だけだった。

「今年も、誰も居なかったな。」バルフォアボール辺境伯が残念そうに言う。

「アイク、平民に魔力を持っている者は、少ないからね」口角を上げながら言った。


魔力検定も終わり、バルフォアボール辺境伯とマティー神父は、のんびりと、今回の結果と、他の村の事も話をしている。

他の村でも、誰も魔力を持っている者は、居なかったと話してる。


もし、平民で魔力を持って入れば、バルフォアボール辺境伯が、魔法学園の寮費など、必要な物も援助するから、安心して欲しい説明をしていた。


ケイトが、魔力を持っているとエマが、打ち明けた日から、4人からそれぞれの考えを教えて貰えた。


ギル村長は、バードとレスの所に残った方が良いと、それに、魔法学園に入ったら、貴族の中に平民が入っても大変だから、魔力なしで過ごす事が良いのでは、ないかと話してくれた。


バードは魔法学園に行った方が、仕事が選べるんだ、学園を卒業すれば戻ってくればいいんだ、俺達と別れる訳じゃないんだ。ケイトがやりたい事が見つかった時、魔法学園に通っとけば、良かったのにと後悔しない為にも、行った方がいいんだ。とバード自身に言い聞かせるように話してくれた。


レスは、女の子なんだから、魔法学園に行くよりも、村に残って欲しい。

ただ、ケイトが居なくなって、お母さんが、寂しいから我儘を言っているのよ。

と、寂しそうに話してくれた。


そして、マティーは、どちらでもいい。自分が好きな方を選べばいいんだ。

ただ、村に残るにしろ、魔法学園に行くにしろ、選んだ後のフォローはしてやるから、安心しろ。と言われた。


魔力検定の前日に、ケイトは、マティー神父に会いに行き、お願いをしている。


「マーぷ、お願いがあるんですけど・・・・」


「ケイト、珍しいね、お願いって。何?マーぷが出来る事?」


「うん、マーぷにしか、頼めないよ。」


「何かな?まあ、魔法の事だろ。何を教えれば良いのかな?。」


「空間魔法を教えて欲しいの。」


「空間魔法って・・・・結構難しいぞ、それに魔力量に応じた空間になるからな。」


「うん、マーぷの本読んで、知ったの、このバッグを空間魔法で、物をもう少し入れたいの。出来るかな?」


「出来るだろう。いつ、練習しようか?」柔かに微笑んでくれる。


「マーぷ、今から、教えて欲しいの。」と両手で、マティー神父の手を取って。甘えて頼んだ。


「ケイトが『マーぷ』と言われると、弱いんだよね。

ケイトは、良いのかい?今から練習しても、後悔はしないんだね。」真剣な眼差しで、見つめた。


「後悔はしないよ。お父さんとお母さんと一緒に居たいし、

マーぷから、魔法を教えてもらいたの。お願い。」


魔力なしの判定にして、マティーに魔法と貴族に対するマナーを習う事にする道を選んだ。

今までと同じ様に過ごす事を、後悔はしない。自分で、考え選んだ道だもの。


そう、4歳の誕生日にもらった、肩に掛けるバンドは深い緑色、バッグは赤色だ、そして蓋の中心には蔦とバラは我が家のモチーフをつけているバッグ。


毎日、持ち歩いている、大事なバッグなのだから、空間魔法で、中身を広く使えたら便利だし、魔力検定の前日、しっかり魔法を使って、魔石の魔力を放出させる事を考え、マティーに習えば良いと思いついた。


マティーに話した後に、一日中、空間魔法の練習をして、やっと、バッグに空間魔法で、ハンカチ以外を入れる事が、初めて出来た。

マティーからもらった、分厚く重たいマナーの本も入れる事が出来る。

本の重さを感じさせず、バックの形もそのままになっている。

いつでも、本を持ち歩ける様になった。


そして、今日の、魔力検定の時、髪飾りもペンダントの魔石の魔力量は減っている、その上で、ペンダントを強く握ることで、魔力を魔石に吸い取ってもらいながら、魔力検定をする。


マティーだけは、ケイトが、空間魔法を習った事で、村に残る事を選んだと知っている。


魔力なしにする為に、これが、ケイトの出した結果だった。

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