第32話
「魔道具の石は、魔力を吸込み溜め込む事はするけど、限界を超えれば、溜め込まないの、魔法を使って放出しないといけないから。ただ、欠点でね、溜めた本人じゃないと、放出できないのよ。」
マティーは静かに手を合わせ、その上には額を乗せて、下を向いたまま、何かを決断するかの様だった。
その静けさを裂いたのは、エマだった。
「マティー、今、貴方は、ケイトの親ではないのよ。親はバードさんとレスさんなの、何故?両親に全てを打ち明けないの?
ケイトちゃんには、判断は出来ないのよ。
バードさんとレスさんを呼びましょう。」
(そうよね、
判断出来ない、親の承諾がいる。当然の事を言ってる。解ってる。だけど、バード達に心配は、掛けたくない。)
「・・・・」
「マティー、何か言ったら?」
「ここでは、駄目だ、ケイトの家でギル村長も含めて話す事にするよ。エマ悪いが、一緒に頼むよ。
ケイト、マーぷちょっと頼りなかったね。」
「ううん。マーぷは、ずっと、一緒だもん。師匠だもん。」
その夜、
6人は一つのテーブルに向かい合わせに座っている。
座ったまま、誰も口を開こうとはしない。
最初にエマが、
「ケイトちゃん、今、みんなが、何か隠しているのわかるかな?」
バードが
「
バードが、
「そうよ、ケイトちゃんの魔力の事なの。ケイトちゃんには少し辛い事を、これから話すけど、ケイトちゃんの事を大事に思っているのよ。それだけは、解ってね。」エマはテーブルの上に両手を組み、眉の間に皺を寄せながら、言葉を選ぶように話してくれる。
「5年前にケイティという赤ちゃんが、突然亡くなった。
それは、病気だったんだ。赤ちゃん特有の突然死だったよ。その両親は、とても、悲しみ、村中の者が見てられないくらいにね。
丁度、その前の年にね、マティー神父がこの村に来て、教会が使える様になっていたからね。それまでは、隣村まで行かないと、教会は無かったんだけどね。
その両親は、ケイティの死を受け入れられずに、毎日、村の教会に足を運んでいたよ。
二ヶ月くらいだったかな?その両親はね、やっと、ケイティのしを受け入れた日の教会の帰りにね、森の入り口で、赤ん坊を拾ったんだ。
自分達の瞳と、髪の色を持った赤ん坊をね、それもケイティが亡くなった頃のね。
その両親はね、神様からの贈り物と思ったそうだよ。」
ギル村長が、静かにケイトを見つめて、ゆっくりと話してくれる。
バードもレスも
「俺にね、その両親が、神様の贈り物だから、大事に育てるって、村長だから、認めて欲しいと頼みに来たんだ。
それは、俺としても、最初は喜んだよ、ただね、その子が身に付けていた物は、上等だったんだよね。まあ、神様からの贈り物だからね、上等でも可笑しくはないけどね。
神様の贈り物なら、教会に報告しに行ったんだよね。」
(ギル村長、捨て子だった事を話して、魔力の事はマティーに振ったのね。ギル村長が、気づいて、マティーの所に連れて行ったのに。
でももし、私が、魔力のない、平民の捨て子だったら、バードもレスもギル村長も、
「ケイト、魔法の本を読んでいるよね。その中に、魔力の事が書いてあるよね。魔力を持っているのは、貴族だよね。平民は持っていないと書いてあったよね。」
「はい。書いてありました。」
「ギル村長達が連れて来た、神様からの贈り物かもしれない、赤ん坊はね、凄い上等な服や御包みだったんだ。
僕はね、その赤ん坊を一眼見て、貴族の赤ん坊かもしれないと思ったんだよね、この国で、誘拐された赤ん坊、未婚の貴族の女子が産んだ赤ん坊とね、調べたけど、いなかったよ。
でもね、その赤ん坊に、もし魔力があったら?
この国では、魔力があれば、平民でも王都にある魔法学園の入学が義務だよね。平民で、ここから遠い王都に通わせるのは、大変な事だし、下手をすれば、そのままこの村には戻ってこない事も多いからね。
その赤ん坊を連れて来た人達にね、5歳の魔力検定の時に、魔力なしと判定して欲しいの頼まれたんだ。
僕もね、ここの村に神父として、派遣されたばかりだったし、その子が魔力を持っていたとしても、多分、魔力なしになるから、大丈夫だろうと、思っていたんだ。
それに、この村の子供達に文字を教える事を考えていた時だったから、その赤ん坊に本の読み聞かせをして、他の子供達を集めようと思いついてね。
ケイト、ここまで話せば、解るよね。」
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