第31話
4歳の誕生日から肩掛けバッグにブローチをつけて、毎日持って歩いている。
中身は、ハンカチだけしか入っていない。
二人が作ってくれた物だから、身に付けていたい。
いつものように、教会に向かって歩いている。
「ケイトちゃん、今日は一人で行くのかい?」
「おはようございます。ギル村長。後を見てもらえると、わかります。」
「ワハハ、そうだね、心配なんだろう。気をつけてね。」
「はい」
後ろで、ギル村長とバードの声がする。
4歳過ぎると、大抵の村の子供は、教会に、一人で、行っている。
もうすぐ、5歳になるのに、未だ、両親のどちらかと一緒に教会に来るのは、
過保護過ぎると、村の人達から注意され、心配だから、
(後から付いてきているの、判ってるんだけど、気づかない振りをしないと、バードとレスの申し訳ないものね。二人とも心配性よね。)
教会の敷地に入ると、二人は安心して、戻って行くのが、最近の毎日の光景。
最近は、教会の隣の建物を
「マティー神父、おはようございます。」
「おはよう、入れ」
(マティーと二人の時は、今までの様にマーぷと呼ぶけれど、マティーに譲歩してもらってからは、人から見られる場所は、マティー神父に変わったのよね。)
執務室に入ると、エマがソファーに腰をかけていた。
「エマさん、お久しぶりです」と頭を下げる。
「ケイトちゃん、久しぶり、やだ〜、畏まっちゃて。しっかりしたお嬢さんって感じになってる。」と上から下までじっくりと見られている。
マティーは、エマの横に腰をかけ、
「ケイト、話があるから、そこに腰をかけて」と前のソファーを指した。
「はい。」言われるままに、ソファーに腰をかける。
苦虫を潰したような、表情のマティーが、口を開く、
「ケイト、今日は、敬語を使わなくていいよ。そして、今から話す事は、ケイトにとって、大事な事なんだ、そして、誰にも訊かれたくない。」と言って、防音結界を張った。
「ケイトは、もうすぐ5歳だね、5歳になったら、魔力検定をする事が、この国の決まりだ。ケイトも知っているね。」
「はい、知ってます。」
(そうよ、魔力検定の時に魔力なしの判定を貰うために、魔道具を身につけているんですもの)
「ケイトに魔力があるのも、わかって要るよね。」
「はい、でも、少しですよ。魔法は使えませんから。」
「そうかな〜、ケイトちゃん、髪飾りとネックレス外してみようか?」
「エマさん、何故、急にそんなこと言うんですか?」
「ケイトちゃんは、解ってるでしょ、魔力を吸い取る魔道具になってるって事を、だから、1回外してみて、本来の魔力量を知りたいの。」
髪留めとネックレスを静かに外し、テーブルの上に置く。
マティーは、机の引出しから、木箱に入った小さな水晶を取り出した。
(前に、魔力の属性を調べた水晶よね、あの時は、水晶が、赤、青、黄、茶、と点滅したと思ったら、白く光り始めて、マティーが慌ててたわよね。)
「ケイトちゃん、この水晶に、そっと手を乗せてみて」
エマに促されて、水晶に、掌をそっと当てると、
やはり、水晶は、強い光で赤、青、黄、茶、と点滅し眩く光りを放った、その、眩しさと、驚きで思わず手を離した。
(この光は何?前は、こんなに強い光じゃなかった、えっ、もしかして、魔力量が増えたって事?魔力検定隠し通せる?)
「マティー、もしかしてだけど、ケイトちゃんの魔力量の事、判ってた?闇属性以外の全属性持ちだったよね。ケイトちゃんも、解ってたのかな?」
「・・・・」
「ケイトは、自分の属性は知らないよ。話していないからね。
それに、エマに魔道具を頼んだ時には、これ程の魔力量は無かったんだ。ケイトの成長と共に魔力量が増えたと思う。」
「マティー、ケイトちゃんに、何処まで話すの?バードさん達には、どう説明するの?」
「お父さん達と離れたくない、ずっと一緒にいる為に、勉強をしたんだもの」
(今は、
「ケイトちゃん、髪留めとネックレス、付けてもう一度、水晶に手を触れてみようかぁ」
エマは、
水晶は、赤、青、黄、茶、と点滅し白い光を出した。
その光を見て、思わずネックレスの石を強く握った。
水晶の光が、だんだんと薄くなる。
「エマ、水晶の光が減っている。魔道具が機能しているんだ。魔力検定は大丈夫だよ。」
「マティー、ケイトちゃんに本当の事を教えた方がいい。そして、バードさん達にもね、魔道具士として、魔道具が役に立つは、嬉しい事よ。だたね、この魔道具の石は、魔力を吸込み溜め込む事はするけど、限界を超えれば、溜め込まないの、魔法を使って放出しないといけないから。ただ、欠点でね、溜めた本人じゃないと、放出できないのよ。」
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