第26話
魔道具士エマは、この村では、アクセサリー作成のエマ、マティー神父の元彼女として、時折、村にやってくるようになっていた。
今日も、馬車を上手に扱い、
「今日は、バードさん達に用事があったのよ。マティーには、別に用事はないからいいの、ジャン、悪いけど、馬の世話を頼める?」
「構いませんよ。マティー神父様は、明日戻られます。」
とやり取りをしている時に、
「エマ
「あら、ケイトちゃん、走るの上手くなったのね。」とにっこり笑っている。
駆け寄ると、エマは、
「うん、転んだの」と膝に手をやり、心の中で、詠唱を唱えても変化はない。
(そうよ、髪留めを付けてからは、傷が治らないのよね。
今までは、手で撫でながら、心の中で唱えれば、傷は消えたのに、今は、小声で、『ヒール』とはっきり言わないと出来なくなった。髪留めで魔力を外に出しているのだから、仕方がない事は、解っているけど、怪我をして、すぐに治せるのは、良かったのよね。
それに、最近は、マティーも魔法が使えないと解ったから、領主様の所や王都に出かける事も増えたけど、今は、マティーが、教会にいなくても、来れるようになったのよね。)
「そう、転ばないようにしないとね、ケイトちゃんは、怪我をしても、直ぐには治らないんだからね。」と眉の間に皺を寄せた。
(解ってるわよ、髪留めをしていたら、魔法が使えないと念を押さなくたって)
「うん、わかってるよ。」とにっこりと微笑んで返事をした。
少しの間、エマは
(もうすぐ、誕生日よね、そのプレゼントよね、前にエマとマティーが話していたから、でも、バード達には、そんな余裕はないわ、今、必要な物で、少しだけ上等にした様なものでないと、バード達に負担が行くに決まってるじゃない。それに、今の髪留めだけで、魔力量が減っているから、魔法も使いえないのだから、他のアクセサリーは必要ないわ、バード達には誕生日プレゼントは、一人で寝る事にしてもらおう。)
バートと一緒に家に戻ると、レスとエマが、テーブルで、話をしてる。
「バード、ケイトお帰り、エマさんが来ているのよ。」
「バードさんお邪魔してますよ。」と微笑んで挨拶をしてくる。
「やあ、エマさん、久しぶりですね。今日は、マティー神父は、領主様の所だったはずですよ。」
「そうなんですよ〜。明日戻ってくるらしいんです。でも。今日は、奥様達と話が出来て、良かったんですけどね。」と笑っている。
「何かありましたかね?」
「バードさん、男の人達の話も聞きたいんですよね。」
「話だけなら良いですけど、エマさん、もし、女性達にアクセサリーを買ってやれ、と言う話は、聞けませんけどね。」
「まさか〜、貴族くらいですよ、アクセサリーを買える事が出来るのは。」
「それが、解っているなら、大丈夫ですよ。この間、村に商人が来て、色々と売りつけられそうになったから、警戒してましてね。」
「奥さん達に、聞きましたよ。大変でしたね。金額も高かったと聞きましたよ、私の話は、違いますよ」とニヤリと口角を上げた。
その日エマは、バード達と話した後、教会の方に戻って行った。
最近、教会の横に、子供達が勉強をする場所が出来き、そして、領主様の計いで、宿泊場所も出来上がっている。
その、宿泊場所が出来てからは、エマは、泊まる事が多くなっいた。
次の日、
「アクセサリーを売りつけるのか?いくら、マティー神父の知り合いでも、無理だ」と一人が言うと、次々に、売りつけるなと言い始めた。
「ちょっと、待ってください。誰が売ると言いましたか?」
「アクセサリー作成するんだから、売るんだろ」と怒鳴り声がする。
「違います。アクセサリーを作って貰いたいんです。そして、私に売って欲しいんですよ」
「作って、売る?俺たちが?アクセサリーなんぞ、作れるか」
「ケイトちゃん居る?あっ、こっち来て」と呼ばれて、エマの所に行くと、
「この髪飾りの土台は、バードさんが作ったんですよ。中に入っている、石は、私が入れましたけど。皆さんには、木彫りのアクセサリーを作って貰いたいんです。まあ、最初だから、手始めに奥さんたちに作ってから、考えてもらえませんか?」
(この髪留め、バードが、作ってくれたんだ、そうよね、アクセサリーを買う余裕なんて、無いもの。)
「木彫りの部分だけでいいんですよ。色つけや、部品は私がします。バードさんも、土台だけ作って、他は頼まれたと思いますが、違いますか?」
「ああ、全て買うのは、金額が高いから、土台を作って持っていって、色つけや、部品は頼んだから、俺たちでも買ってやれたんだ。」と目を伏せている。
「まあ、初めに奥さんに、作ってみては、どうですか?
お金はかかりませんよ。木片を使って、彫るんです。どうですか?」
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