第23話

ジャンとアビーが、子供達の相手をし、文字を教え始めてから数ヶ月経つ頃、バルフォアボール辺境伯が、二人の様子と、教会の様子を見に来ていた。


「アイク、子供達の様子を見て、どうだ。」

マティー神父は、バルフォアボール辺境伯を昔の愛称で呼んでいる。


「ジャンもアビーも上手に子供達に、教えているな。」


「文字が覚えられるから、子供達も増えて来ているしな。

最近は、大人も文字を習いたいと言って来ているんだ。」


「予想以上の成果だな。」


「ああ、いい事だが、場所が足りないよ。」


「そうだな、村長と相談してみよう。」


そこへ、教会から出てきた、ドミニク神父が、

「バルフォアボール辺境伯様、こちらにいらしたんですか?

教会の中で、ゆっくりお話しください。」と、声をかけた。


「ドミニク神父、いつも、ジャンやアビーが世話を掛けているね。此方としては、助かっているんだ。これからも頼む。」


「そうですね。出来るだけ、手伝いたいと思っています。

でも、今は、ジャンとアビーだけでも充分に手が回っていますよ。」

とドミニク神父は口角を上げニヤリとした。


(最近、ドミニク神父性格が、悪くなったんじゃないの?

単に、マティーは仕事をしていない様な言い方じゃない。

そりゃ、ケイトと一緒にいる事が多いからね。

仕事サボっている様に見えるでしょうけどね。

執務室では、しっかり仕事してますよ。ケイトがいると、仕事をしていないように見えるでしょうけどね。あたしは、仕事の時の邪魔はしないわよ。)


バルフォアボール辺境伯は、マティー神父を見た後、ケイトを見ながら、「ケイトだったよね。今日もお利口さんだね。大人しね。」と言いながら、頭を撫でた。


「うん、おしごと、じゃま しない。邪魔はしてないわよ」とケイトは、バルフォアボール辺境伯にアピールをした。


バルフォアボール辺境伯は、村に2日滞在し、王都にある屋敷に戻っていた。


バルフォアボール辺境伯が、王都に戻り数日が経った日、馬車が来た。

辺境伯が乗るような馬車でなく、小さな馬車だった。


その時、マティー神父とケイトは、外の庭の手入れをするのに、外にいると、突然、教会の前に、馬車が止まり、馬車からは、ブルーの髪の短い女性が降りて来て、

「やっと、着いたわ、流石、辺境の地よね、遠いわ」と呟く女性の声がした。


「エレン嬢・・・・ あっ、エマ、よく来てくれたね。連絡をくれれば良かったのに、何も連絡がなかったから。」と微笑んで、迎えている。


(誰?マティーの恋人かな?会えて嬉しいそうじゃない。邪魔はしないようにしないとね。)


「こちらこそ、突然にすまないわね。例の件で、来たのよ。この子ね。」にっこりと目を細めて、ケイトを見ている。


「マーぷ、あっち いく」と言う。


「ケイトも一緒にでいいんだ。 エマ、執務室でまずは、旅の疲れを取ってくれ。」と言い、教会の執務室に向かった。


教会の中に入ると、アビーが執務室にお茶を持ってきた。

子供達に本を読む事もだが、教会での侍女の仕事もしてるからだ。


アビーが執務室を出た後、エマと言う女性、マティー神父とケイトの3人になった。

マティーは静かに防音結界を張った。


(外の音が、聴こえないわ。本で読んでいたわね。防音結界だったわよね。でも、マティーが魔法を使う所、初めて見たわ。他にも色々使えるのかしら?)

と不思議に思っていると、

「マティー、何時もながらに、防音結界見事ね。」微笑みながら、ケイトをみている。


(何故?ケイトを見ながら微笑んでるの?)


「エマが来た、と言うことは、例の物の話だろ。必要だから、結界を張ったんだ。」


「そうよ、でも、本当にこの子にするの?」


「そうだよ、君なら、わかるんじゃないかな?」


「初めまして、私は、魔道具士エマよ、よろしくね」とケイトに笑顔で挨拶をしてくる。


「ケイト、れすです。」と2本指を出して、答える。


「そう、二つなのね。ケイトお利口さんね」と頭を撫でると同じに、体中に何かが流され、気分が悪くなった。


思わず、頭に乗せているエマの手を払い除けた。


「ケイト、ごめんね。少し、気分悪くなった?ごめん、もう、しないわ」と目を細めながら、謝ってきた。


「もう、しない、やくそく」と言いなが、エマを睨む。


「ケイトちゃん、本当よ、もうしないわ。確かめたい事があっただけなの。ごめんね」と、俯いた。


「なら、いいよ。マーぷのおともだち?」と頭を傾けて聞くと。


「そうね、昔のお友達、今はね、ケイトちゃんの事で来ているのよ。ケイトちゃんは、マーぷの事好き?」


(好きだけど、恋愛感情じゃないと思うけどね。)

「マーぷ、すき」


「マティー、この子の居ると所で、話しても大丈夫なの?」


(普通は、子供のいる所で、大事な話はしないわよね。)


「大丈夫だ、ケイトは内容は知っているよ。それに、ケイト内緒だよ」と言って、人差し指を口に当てる。


ケイトも、人差し指を口に当て「ないしょ」と返事をする。


「二人の合図なのね。じゃあ、今の状況を話すわね。

マティーに依頼された物は、作れるわ。何個かを試しに作ったの。それでね、少し、ケイトちゃんに身につけてもらって、試したかったから、ここに来たって訳」


「出来たのか?」目を大きく見開いてびっくりしている。


「試作品だけどね。」


(何を作ったの?試作品って何?でも魔力なしにする事が出来る道具?)


「ケイトちゃん、これを持ってみて。」


小さい石ころを持たされた。


「ケイトちゃん、さっきと同じことするわね、」

エマは、ケイトの頭に手を乗せる。


(何かが、スーと流れていくだけね。さっきと全然違うわ。

この石に何か秘密があるのね。)







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