第21話 マティー神父 side
アイクの誘いを断り、バルフォアボール邸を離れ、魔道具店へ向かった。
馬車を暫く走らせ、魔道具店前に馬車を止め、店の中に入ると、誰もいない。
「誰?少し待っててね。魔道具を見て良いわよ。」と店に誰か来たのが、判ったからか、店の奥から明るい声がする。
暫くして、少し、短めのブルーの髪、女性が出てきた。
「お待たせ、今日は・・・・」
「・・・・」
「いらっしゃいませ。マシュー様、今日は何の御用でしょうか?」
そこに、居たのは、公爵令嬢のエレン嬢だった。
学園時代エレン嬢とは、同じ公爵家という事で、顔見知りだった。
「昔、話をされに来られただけなら、お帰りできますか?仕事の邪魔になるので」畳みかけるように、言葉を放つ。
「あっ、済まない、魔道具の件で、こちらに伺った。」
「魔道具なら、どのような物が、宜しいのでしょうか?」
「済まない、今回の魔道具は、人に聞かれたくない。二人だけで、話せないか?」
「人に聞かれたくない魔道具って、私には作れないので、お帰りください。」
「エレン嬢、魔道具は作らなくても良いから、協力して貰いたいことがあるんだ。頼むから、話を聞いてくれ。」
エレン嬢が魔道具を作れる?魔道具士なのか?魔道具士ならば協力してもらおう。
「良いわ。中に入って。」店の奥へ通された。
店の奥は、作成中の魔道具や、作成用の道具などが整理されて置かれたいた。
やはり、店の奥は、魔道具工房になっていた。
エレン嬢は魔道具士になっていたと確信に変わり
「エレン嬢、何故?」と言い掛けた時、
「公爵令嬢のエレンは、もう何処にもいないのよ。今は、魔道具士のエマよ。」と微笑んでいる。
「僕は、マティーと呼んでもらえるかな。」と、口角が緩んだ。
「マティー、どんな魔道具が欲しいの?貴方が使うの?」
「いや、僕が使う訳ではないんだ。プレゼントをしたいからね。」
「もしかして、彼女へのプレゼント?だから、秘密?。良いわよ。どんな魔道具がいいの? 護身用かしらね。」
「可愛いけど、彼女には、難しいな。」
「もしかして、家の格差?」
「いや、違うよ。まだ2歳だよ。可愛い女の子だ」
「・・・・そう、子供が居たんだ・・・」
「おい、僕の子供では、ないよ。今、色々あって神父をしているんだけど、よく教会に来る子供だよ。」
「神父? 今、神父しているの?王宮の文官じゃなかった?」
「国王の命で、派遣されて神父をやっているんだ。」
「派遣?神父?最近は、神父不足なのかしら?それにしても、良いの?教会によく来るからって、魔道具をプレゼントって?2歳の子供でしょ。親御さん・・・」
「溺愛する、両親は揃っているよ。それこそ、両親の色が入った物をプレゼントにするぐらいだ。」
「それなのに、魔道具のプレゼント? 何考えてるの?」眉に皺を寄せている。
「エマ、ここから、悪いけど防音結界を張らせてもらうよ。」マティーは静かに防音結界を張った。
「マティーの防音結界は流石ね。綺麗ね。人に聞かれたくない事?
それにしても、どうして、2歳の子供に魔道具のプレゼントなの?」
「この、魔道具の工房がエマで良かったよ。多分、他の人だったら、話せなかったからね。今、僕の探している、魔道具は、魔力を吸いとる魔道具が欲しいんだ。」
「2歳の子供のプレゼントに? 何言ってんの?普通は、魔力を増やす、魔道具でしょ」呆れている。
「そう、貴族の普通はね。平民は違うよ。」
「両親のどちらかが、貴族なの?それとも、魔力が強いの?」
「捨て子だったんだ。だから、本当の両親はわからない。ただ、今、育てているのは、平民だよ、魔力があれば、王都の魔法学園に通わないといけないだろ、だから、魔力が無いようにしたいんだ。」
「どうして、神父をやっている、貴方がそこまで、するの?可笑しいじゃない。」
「そうだよな。僕もそう思うよ、ただね、拾われた時には、首が座ってなくてね、その時、頼まれたんだ。もし、貴族の子供でも魔力なしにして欲しいとね。村の魔力検定では、大丈夫かな?と言う程の魔力だったんだ。
その時は、甘く見ていたね。多分、大丈夫だとね。
1歳の時にね、魔力量があるから、属性を調べたら闇属性以外全て使えると解った。だから、下手に魔法を教えないでいると、知らず知らずに使ってしまうから、魔法を教えたら、最近は無詠唱で回復魔法のヒールも使うんだよね。」
笑い、自虐的に言った。
「マティー・・・・ それで、どうしたいの?」
「出来れば、魔力を吸い取る魔道具が欲しい。それも、子供が常時つけていてもおかしくない物が欲しいんだ。
そして、魔力検定の時に、魔力なしの判定になるようにして貰いたい。
そんな事できるだろうか?」
「直ぐには、無理よ。魔力を吸い取る魔道具って、罪人に課せられる手枷よね。
それを、子供に常時つけて、可笑しくない物って、暫く、考えさせて貰える。」
「頼むよ。それと、この事は、エマと僕しか知らない事だ。両親を含めて、知らないよ。その事は、肝に命じて置いてくれ。」
そこまで、話してから、防音結界を解除した。
今まで、一人で抱えていた、ケイトの秘密をエマに話せた事で、気持ち的に楽になってしまっている。
エマに話せた事によって、魔道具が、作られるかも知れないと淡い期待を寄せ安堵している。
「マティー、良かったら、今度、その子に会わせて貰える?」
「バルフォアボール領の村の教会にいつも来ている。村に来れば直ぐにわかるよ。」
一番の目的だった、魔力量を吸い取る、魔道具を探し、ケイトが、身につけても可笑しくない物を作ってもらう。
それには、口の硬い魔道具士を探す所からだった。時間がかかると思っていたが、意外なことに、公爵令嬢だったエレン嬢が、王都でも優秀な魔道具士エマだった事から、魔道具士を探し、依頼する事が早くに済んだ。
後は、魔道具士エマに託すことにし、早めに村に戻る事にした。
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