第20話 マーティ神父 side

バードとレスが、ケイトを教会に連れて来てくれた時、その後ろには、子供達も一緒にいた。


まずは、最初の1歩だった。バードとレスは、ケイティのお墓に行く時に、ケイトを置いていってもらい、後ろの子共達と一緒に本を読み聞かせる事をした。


驚いたのは、ケイトが、泣かなかった事だ。

ギル村長と一緒に来た時にも、大人しいかったが、本を読んでいる時には静かに本に興味を持って、見ているように感じていた。

次の日にも、ケイトに本を読んであげるからと言い、子供達に来るように促した。

それから、毎日のように、子供達が集まり、本を読み、次第に文字を教えるようになった。

子供達が、文字の読み書きができる事を知ると、次第に人数も増えて来た。


3年目の今は、ジャンやアイビーの様に文字を書ける子も増えてきた。

二人は、12歳になったら、村を出る予定だったから、アイクに頼んで、使用人として、教会で仕事をする様にしてもらった。


村からの応援もあるが、出来れば、同じ人が都合が良い、それは、教会本部から、神父の交代があった時に、負担が少なくなるからだ。

そして、今回は応援要請にしている。


俺が、王都に戻りたい事と少し魔法の勉強がしたいと言う理由にしたが、ケイトが魔力検定を受ける時に、魔力なし、の判定にしたいと思ってしまったからだ。


最初の頃はまだ、六ヶ月の赤ん坊に本を読んでいるのは、周りの子供達の為に、読んでいた。

赤ん坊が、興味を持って見ていても、本の内容もわかるはずも無く、子守唄代わりに聞いていれば良いくらいにしか思っていなかった。

でも、様子を伺うと、文字を追っているように思えるし、多分だが、最近では、本を読んでいるようにも思える節もある。


ケイトが、1歳になった時に、どの属性の魔法が使えるのか、少し興味が湧き、手持ちの水晶で、調べてみる事にした。

闇属性以外全ての属性が使える。高貴族の子供に違いないだろう、もしかしたら、隣国の貴族かも知れないと容易に思いつくことも出来る。


そして、ケイトが何も解らずに魔法を使ってしまうより、魔法を教え使ってはいけないと諭せば良いのではと思い、他の子供達に文字の書き方を教える時には、ケイトには、子供達の帰った後に、魔法の本を読んで聞かせる事を始めると。

やはり、魔法の本を読み始めると、理解しようと、聞いているのだ。

少し試しに、簡単な治癒魔法ヒールを教えたが、やはり、片言しか、喋れない、ケイトは、シールとしか詠唱が、言えなかった。

魔法は、詠唱なしでは、発動しない、片言で詠唱を唱えても、魔法は発動しない。

ケイトは、何度もヒールを言えるように繰返し何度も練習をしたが、言えないのだから、魔法は発動しない、何も問題はないと安心をしていた。

魔法の本を読むと、興味を持っているのが、分かるから、いつも、読み終わった後は、魔法を使わないように、「内緒だよ」と人差し指を口に当てると言う合図をして終わりにするようになっている。

ケイトも、多分わかっているのだろう、「ないしょ」と言って、人差し指を口に当てる。


ケイトが転んだ時に、見てしまった。

足の擦り傷に手で、撫でている。その後だ、擦り傷が、消えていた。

手で撫でた時に、擦り傷を治したのだろう。

いつの間にか、魔法を使えるようになっている。

それも、無詠唱でだ。

魔法は詠唱が必要だ、無詠唱で使える事は、魔力量は想像よりも持っているのかも知れない。

ケイトは、周りを見て、使っているようだが、もし、他の人に見つかる訳にいかない。それからは、教会にいる間は、いつも傍にいる様にしている。


俺が、王都に来る際に、ギル村長、バード夫妻には、「僕が居ない時には、ケイトを教会に連れて行かないように」と言ってから出発した。

彼らも、ケイトの魔力の件については、心配しているから、ドミニク神父だけの時には連れて行かないだろう。


もうすぐ、馬車は、王都に着く。

王都にある屋敷に戻り、神父の服、カソックから、貴族服に着替えてから、王宮へ向かう。

宮廷から派遣されているから、毎月の報告書をあげているが、

まずは、国王に謁見し、現在の識字に関しての報告し、2年前に誘拐など無かったかを調べる事だった。

次に、神父の派遣に応じてくれた、教会本部への報告と済ませ、そして、王都にいる、アイクの屋敷に向かった。


屋敷に着き、応接室のソファーに掛け待っていると、アイクが入って来た。


「マティー、久しぶりだな。やはり、そちらの方が、しっくりくるな。」と笑いながら、入ってきた。


「アイク、そう言うなよ、今は神父をやっているんだからな。」


「頼んだ、俺が言ってはなんだが、まだ、王都には、まだ帰れそうに無いか?」


「まだ、戻れそうにもない。ジャンとアイビーの様子はどうだ? 」


「あの二人は、飲み込みが早いから、村に返して、教会の仕事を任せられそうだよ」


「それなら、良かった。本部教会から、神父が途切れないように赴任してもらうようにしないとな。それと、今の教会では、子供達が増えてきたから、場所が足りない、考えてもらえるか?」


「それは、文字を教える為の学校か?教師も必要になるのか?」


「いや、多分、教師はいらないだろ。多分、ジャンかアイビーの何方がか教えていくようにすればいいし、そのうち、文字の読み書きが出来る者も増えるから、大丈夫だろ。」


「マティー、今日はもう用事はないだろ、この後」とアイクが言いかけた時


「アイク、悪い、これから、別の用事があるんだ。」


「そうか、今度は、時間を作ってくれ。」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る