第18話

暫くして、王都の教会から神父様が一人、赴任されてきた。

そして、ジャンと、アビーは、バルフォアボール辺境伯様から、教会で子供達の面倒を見る使用人として、雇われる事となった。

バルフォアボール辺境伯様の屋敷で、基本的な仕事を三ヶ月間の研修が終わってからの配属と言う形になるらしい。


新しく赴任してきた神父様は、ドミニク神父と言って、マティー神父より、少し若い、20代後半位の青年だった。

村の若い女性も、結婚している夫人達もドミニク神父の顔立ちの良さを噂していた。



昨日、ケイトは、バードとレスから、2歳の誕生日祝いをもらっていた。

平民が、誕生日会などは、出来ない。それは、金銭的に余裕がないからだ。それでも、両親からプレゼントをもらう事はあった。必要で、普段使う物を少しだ品の良い物を年に1度買ってもらえる。

1歳の誕生日のプレゼントは、靴だった。

2歳の誕生日の今回は、髪留めを欲しいと頼んでいた。


「ケイト、今日は、誕生日だね。開けてごらん。」と言って、小さな小箱を渡してくれた。

バードは、ニヤニヤとしている、レスは、ほほ笑んで見ている。

渡された、小箱を開けると、中には、赤い薔薇の花に鮮やかな緑の蔦が周りを囲んだ、木製の髪留めだった。


「わー、髪留め、おととおかの色が入ってる。ありとありがとう

目一杯の喜びをバードとレスに見せた。


「ケイト、髪につけてみる?」

「うん、おがいお願い


レスが、上手にケイトの髪に髪留めをつけ、バードに見せると、

「ケイト、似合ってる、可愛な。やっぱり、俺たちの色にして良かった。」と目を細める。


「ケイトも、少しだけお姉さんに見えるわね。」と優しいく見つめていた。


これは、昨日の誕生日プレゼントをもらった時の話、そして今日は、ドミニク神父にマティー神父は仕事の内容をケイトの手を引きながら、教えている。


「マティー神父、その子は?」と不思議そうに聞いてくる。

「僕の、子供だけど。」と平然と言って退けている。

「いや、違うでしょ、今朝、バードと言う、赤い瞳の人が連れて来たから、彼がお父さんでしょう。その髪留め、お父さんの心配が、わかりますよ」とニヤリとしている。


「マーぷ おと違う せんせい」とドミニク神父に説明をした。


(マティー神父、辺境伯様には、彼女というし、今日は父親?

流石に彼女はないと思ったけど、父親なら、妥当なとこよね。)


ケイトは、髪留めを、マティー神父とドミニク神父に自慢するように見せた。


ドミニク神父が、「可愛い、髪留めだね。とても似合っているよ。それに、お父さんは赤の瞳、お母さんは、緑の瞳だろ。ケイトは、両親からとても愛されているんだね。」目を細くして、見ている。


マティー神父は綺麗な碧眼を持っている。

ケイトの身につける物には、青色が全く使われていない。


「マティー神父、ケイトのご両親が、心配されているのですね。

ケイトの身につけている物には、青色は全くないですよね。」とニヤリとした。


「心配しすぎだろうな、年頃になったら、ケイトは苦労するだろう。」と笑って答えている。


「どうして、ケイトだけいつも連れているのですか?

他の子供達も不思議がらないのですね」


「生まれた頃から、来ているから、僕も父親みたいなものかな。それに、他の子供達が、来た頃には、ケイトは僕の傍にいたからね」と笑って答える。


(魔法の本を御伽話のように毎日読んでいるから、もし、魔法を使って人に見られた時に、対処する為でしょ。ドミニク神父には、そりゃ 言えないわよね。


時々、転んだ時に、擦り傷などの小さな怪我をした時は、見られないように気を付けながら、『ヒール』と心の中で唱え、怪我の場所をそっと触れ、治していたら、マティー神父に、見られれからは、いつも傍にいるようになったのよね。)


「神父が、王都に行っている間は、僕が側にいて、面倒を見ますね。」


「そうだね、ケイトが来た時には頼むよ」と少し眉を顰めていた。


(マティー神父が、王都に行っている間は、教会に連れて来ないようにとギル村長とバード、レスに話していたわよね。

多分、魔法を使わないか?心配だからだろうけど。)


「神父の留守の間に、ケイトと仲良くなっておきますね」

「出来ればね」とマティー神父はニヤリと口角を上げていた。


マティー神父は、1週間、教会を離れ、王都に出向いて行った。


「ケイト、今日はね、お父さんと一緒に畑、仕事をしてみるか?」とケイトを抱き上げながら、聞いてきた。


「うん、一緒、行く」と笑って、答える。


(マティー神父からは、自分が、不在の時には、出来るだけ、教会に連れて来ないようにと、言われて嬉しそうにしていたけど、それにしても、バードったら、目尻が、下がり過ぎよ。)


「レス、今日は、ケイトを畑に連れて行くよ。いいだろ。」


「いいけど・・・・怪我させないようにね。最近は、動けるから目が離せないのよ。家のお手伝いをさせた方が、いいと思うわよ。」


「それなら、午前中だけは、どうだ?

今日の午前中は、ギル達と今度の作物の打合せだからな」


「・・・・いいわよ。」眉を下げながら、渋々ながら、認めた。













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