第4話
村長のギルの家を出た。馬車に乗って、教会まで来た。
馬車に乗っているからか、遠く感じなかった。
途中で、
「ギル、ここにケイトが、置かれていたの」馬車を降りた、レスが場所を教えていた。
(そうよ、寒くて、死にそうだったんだから。)
「そうか。ここなんだね。」ギルが、訝しげな表情をした。
「レス、分かったよ。馬車に乗って、教会に行こう」
直ぐに、ギルは明るい声で言った。
(ギル、『ここなんだね』って、暗い声で言ってたわね。
何かあるのかしら?)と思って、あたりを見回すと
急に、バードが顔を覗き込んできた。
「ケイト、どうした? お母さんは直ぐに戻ってくるよ。
心配しなくても大丈夫だよ。」とほほ笑んだ。
(あたりを見たから、レスを探してると思ったんだ)
「レス、ケイトが探していたよ。離れて、不安だったよだよ。」
「そう。私が抱くわ」嬉しそうに、
「出発しても、大丈夫かな?」ギルは、明るく声をかけた。
「はい、出発しても、大丈夫ですよ」とレスが答えた。
出発して、直ぐに、教会に着いた。
馬車から降りて、教会の礼拝堂に入った。
3人とも、祈りを捧げてると、神父が、後ろに立っていた。
「バード、レス、・・・」神父が黙ってしまった。
「マティー神父、相談が有って来ました。」ギルが神父に向かって言った。
「ああ もしかして、この子の事かな?」と
「そうです・・・・」とギルが言い終わる前に、神父が、
「ここは、冷えるね。執務室に行ってから、話を聞こうか。後についてきてもらえるかな。」
レスが、
神父の執務室は、執務用の机と、大きな応接テーブルとゆったりとしたソファーがあった。
「腰を掛けなさい。」と言ってソファーに促された。
「ギル、君が来たと言う事は、込み入った話かな?」とほほ笑みながら、ギルを見ていた。
「そうですね。少々、込み入ってますかね。」とギルが言った。
最後に、バートが入ってドアを閉めたにも関わらず、神父は、もう一度、扉の前に行き閉める仕草をした。
「レス、その子をこの、テーブルの上に置いてもらってもいいかな?取って、食べたりしないからね。」と笑って言った。
(取って食べないって言っても、晩餐のメインディッシュの様じゃない。)
「話を聞かせて貰おうかな。まずは、この子は、どうしたのかな?」
「昨日の帰り道で、森の入り口で見つけたんです。そして、連れて帰りました。」バートが言った。
「私達に、神様からの贈り物だとおもったのです。」レスが続けて言った。
「そう、それなら、ギルが、僕の所に連れてくることは、無いと思うけど、ギルは、何を考えて、僕の所に連れて来たのかな?」
「マティー神父、この子が、今、身に着けているのは、昨日の状態のままです。司祭も、お気づきでしょう。
そして、来る前に、この子が、置かれていた場所も確認しました。」
「ギル、君が言いたいことは、凡そは見当がつくが、僕は、そこまで力はないよ。」と苦笑いをしていた。
「マティー神父、バードもレスも神様の贈り物として、この子は、キャッシー ケイトとして育てるそうです。親が現れたとしても、自分たちが生きている間は認めないと。決意は固いです。
マティー神父もご存じでしょ、彼たちの事を」
神父は、黙って聞いていた。
「ケイトが今、身に着けている物は、多分貴族の物だと思います。ただ、この国で、貴族が攫われたと言う事は聞きません。だから、もし、この国の貴族の子であったとしても、名乗り出ないでしょう。
ただ、ケイトが置かれていた森の入り口は、隣国との境です。
もしですよ、隣国の貴族の子供なら、この国では、情報もないし、捜索依頼も来ません。」
「そうだね。なら、問題なく育てられるよね。」
「一つ問題が、」
「僕は、持っているけど、君たちは、持っていないよね。」
「そうです。全員ですよね。魔力検定・・・」
「5才の時だね。」
「魔力を持っていると、王都の魔法学園に入学は義務ですよね」
「そうだね。貴族の子だよね。多分、魔法学園だね。」
(この神父、答えが解っていて、技と村長に言わせてるわ。
「マティー神父、田舎の教会の魔力鑑定の水晶って、5年後に壊れるもんですか?」ギルが口角を上げて、聞いた。
「もしかしたらだけど、その水晶は、神様の贈り物を鑑定する時は、壊れるのかもしれないね。神様の贈り物を鑑定する事は、出来ないからね。」と目を伏せ、呆れた表情で、答えていた。
「ギル、君は・・・ 僕は王都の教会に戻りたかったんだけどな。暫くは、戻れないね。」苦笑いになっていた。
「マティー神父は、王都に興味が無いと思ってましたが、違いますか?」と、にやけながら言った。
「
「ケイトだったね。どれ」神父が、
(マティー、
抱き上げられると同時に、身体の中に熱い何かが、回るような感覚がした。
「
(初めて、男の人に抱かれたのに・・・何よ。
それに、赤ちゃん言葉しかでない。)
神父がニヤリとした。
「ほー これが、解るのかい? そうか。安心をしなさい。
ケイトと僕の秘密だよ」
(何が、ケイトと僕の秘密よ、気持ち悪い。何をしたのよ!)
「マティー神父、何をしたのですか?ケイトが、嫌がってるじゃないですか。渡してください。」バードが怒っている。
レスは心配そうに見て、取り上げようとしている。
「何も、していないよ。ケイトが可愛いから、ちょっとからかっただけだよ」と言いながら、レスに
渡した後、厳しい表情になって、
「3人とも、お願いと約束なんだけど、
まず、今、ケイトが身に着けている物全て、僕に、預けて欲しい。そして、身に着けている物を見た者は、3人以外にいるかな?もし、いれば、口留めをする事、
ケイトが身に着けていたものは、平民の物だと言い張るように。
次に、年齢に応じて、文字を覚えさせたりする。
出来れば、週に1日、ケイトに会わせてもらえるかな。」
と言った。
「身に着けている物は解りました。
週に1日と言われますが、物心着いた時でいいですか?
文字は、本を読む程度なら、解りますけど、書くことはしないから」と バードが言うと
「教会に来るのは、早くからの方が良いだろう。
神様の贈り物だから、顔を見せて貰わないとね。
後、文字の件だけど、ケイトが興味を持ち始めたら、僕が時間を見ながら、教えてもいい」
「マティー神父、もしかして、魔法学園に入学すると思っているのですか?その為ですか?」ギルが睨みつけた。
「ちょっと、違うかな。魔法学園は考えていないよ。
それに、ケイトはこの村に残ってもらうのが一番だとも思っているよ。」
「そうしたら、何故? 週に1日会わせろとか、文字を覚えさせるとか、村に居るのなら、必要がないと思いますが」バートはマティー神父を睨みながらいった。
「理由として、僕がこの地に赴任してきいて、1年経つけど、村の人達を見ていて、他の村よりも文字を書ける人が少ないんだ。
今回、神様の贈り物と言ってるケイトを利用させて貰って、週に1日来るときに、子供に文字を教える。
子供が文字を覚えると、大人も覚えていくからね。
だから、魔法学園とは関係ないよ。」とマティー神父は口角を上げた。
「そういう事なら、ケイトを週に1日連れてきます。」バードは、渋々納得して了承した。
「ギル、ケイトがここに来ることになれたら、村の子供たちに教えて貰いたい。それくらいお願いできるだろう。」
マティー神父は、ギル達を見ながら、言った。
「それくらいは、出来ますよ。
所で、マティー神父、この村は、他の村よりも、文字が書けない人が多いって、本当ですか?」
ギルは、訝しげに聞いた。
「ギル村長、僕は、領主のバルフォアボール辺境伯様から、依頼されて、ここに来させられた。辺境伯様の領地内は、この村以外は、文字の読み、書きが出来るんだ。この村は、一部の人だけだよね。」
「そうですね。村長の僕と村の数人ですね。他の人は、畑仕事で、時間が無いから・・・」と伏目になった。
「大人は時間が取れないけど、子供は取れるよね。
でもね、子供に教える人がいないからだよね。
始めから、文字を覚える為に、子供は教会に来ないからね。
だから、切欠として、ケイトの相手をしてもらいながら、子供達から文字を覚える様にするんだよ。
3人とも、協力を頼むよ。」と口角を上げてニヤリとした。
(識字率が低い村だったんだ、村の子供達と遊ぶ・・・
もう一度、最初から・・だよね。
「
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