第3話

 3人で村長の家に向かった。

村長の玄関で出迎えてくれた女性が、レスの腕の中にいるあたしを見て、驚いたのか、眼を見開いたままだった。

玄関先でドアの扉を開きそのまま立っていた。


「ティフ 久しぶり。ギルはいる? 寒いから中に入れて貰えるかな?」とバードが言うと。


「あっ そうね。寒いから、早く中に入って、直ぐにギルを呼んでくるから、応接室で待ってて」

と言って、部屋を案内をし、直ぐに居なくなった。


その応接室に、バード、レス、レスの腕の中にる、あたしの三人と村長とがテーブルを囲んでいた。


村長はギルバートと言いギルと呼ばれていた。30代の若い青年だった。

(村長って、お爺さんと思っていたら、若いわ、イケメンね。)


「ケイティの事は、残念に思っているよ。」

静かな声で言った。

レスの腕に抱かれているあたしを見て、やはり、驚いいる。

「この子は?」と聞いて来た。


「昨日、教会から帰る時に、森の入り口で、泣いているのを見つけて、連れて帰ったんだ。出来ればこのまま育てるつもりだ。」バードが、あたしの頭を撫でながら、言った。


「教会の帰りね・・・ 

君達の事は、僕を始め村のみんなが、心配していたんだ。赤ん坊が、突然に息を引き取るって事は、たまにあるんだよ。と言っても、二人とも、自分を責めていたから、心配だった。

それにしても、教会の帰りにね・・・・

やはり、育てるつもりか。

そうだね、この子は、髪の色や瞳の色を見て、本当に君達が、親だと言っても大丈夫だろう。

それに、村のみんなも、育てるなら問題はないけど、もし、この子の親が現れた時には、どう対処する?」

訝しげに聞いてきた。


「森に捨てたのですよ。親と言う事は言わせませんよ。それに、両親が揃っていなければ、解らないじゃないですか。両親から瞳の色や、髪の色を貰うのだから。」

バードがギルに必死に訴える。


「そうだね。捨てられたのだったら、問題はないよ。

ただ、今、着ているのは、森の中に居た時の服だろ、この子が、身に着けている物は、多分、貴族物だと思うよ。この御包み縁が金の刺繍だよ。」と御包みの縁を指している。

「そのうえに、来ている物は、シルクだよ。

僕達は、木綿だからね。生地から違うじゃないか」

とギルは指摘を続けた。


「でも、森の入り口に置き去りですよ。」バードが言った時、レスが、強くあたしを抱きしめた。


「君たちの気持ちは、解っているよ。

ただ、客観的に事実を話しているんだ。

この子が、貴族の子で、何らかの事情で、攫われ、捨てられたとしたら?

もし、この事実が分かった時に君達はどうするだ。

この子には、その事実を隠すのかい?」


(あたし、貴族だったかもって・・・ 

攫われて、捨てられたんでしょ。捨てられてから、あたしの記憶が蘇ったのだから、その前の事は知らないし、このままがいいよね。)


「それでも、僕らがは、親と言わせません。

それに、もし、攫われたのだったら、村長にも、連絡が来るのではないですか?」


(言ってくれてありがとう。それに捜索願が出ていないのだったら、問題ないでしょ。村長さん)


「そうなんだけどね。今は、どこからも、赤ん坊が攫われたという捜索の依頼は来ていないよ。

だから、連絡が来るまでは、君らが育てても、大丈夫だと思う。

それに、髪の色や瞳の色は、君達からもらった物と言えるからね。ただ、教会には連絡をしないといけないね。」

ギルが眉を顰めた。


「教会に・・・ 孤児扱いにする為ですか? その必要はないでしょ。僕達が育てると決めたのだから。」


「それだけではないよ。まず、さっきも話したけど、この子が貴族だった時だよ。」


「それは、さっき言ったじゃないですか、僕たちの子供です。親と言わせませんって。」バードはレスの腕に居るあたしを取り上げて、抱きしめた。


おぎゃー おぎゃーそうだ、そうだ

しっかり意見は言おう。赤ちゃん言葉でも。


「どうした? 心配しなくても大丈夫だよ。」

バードの腕の中にいるあたしを愛子ながら、微笑んだ。


「うーん 関係あるよ。僕もだけど、君達は、魔力は、持っていないよね」


(魔力って、魔法が使えるの?この世界、ファンタジーの世界だ。やっぱり夢の中?)


「持っていません。」バードに抱かれているあたしの顔を見ながら、静かにレスが答えた。


(へー 魔力持ちと魔力を持っていない人がいるんだ。)


「僕達、平民は魔力を持っていないのが、普通だよね。でも、貴族は魔力を持っていて、魔法を使うじゃないか。

それに、教会で、全員が、5才の時に魔力検定を受ける事は、義務になっているよね。もし、仮にだけどこの子が、貴族の子で、魔力を持っていると判定されたら?」

そこまで言って、バードとレスの二人の顔を見た。


「君達も知っていると思うけど、村の教会の判定は簡易な物だよね。そこで、魔力を持っていると判定されたら、王都の教会で、魔力検定をされて、王都の魔法学園に入学する義務が生じるよね。」


「それは・・・」バードが眉を顰めて、あたしの顔を見つめた。


「そう、この村を出て行く事になる。一度、村を出ると、帰ってこれないよね。それに、平民が、魔法学園に入って、貴族と同じ様に勉強するんだ。考えてみろよ。」

ギルは、バートを見て、言った。


「そうだな、まず、文字を読めない。言葉を選ばないと、不敬に当たってしまう。食事にしても・・・・」

バードは目を伏していた。


「ギル、教会に連絡って」バードの腕の中にいる、あたしを見てレスが、聞いた。


「そうだよ。教会に事の経緯を説明しておく、神様からの贈り物だよ。神父も解るだろうからね。所で、この子の名前は?」


(そう、今まで、二人とも赤ちゃんって呼んでたんだ

名前・・・ どんな名前になるのかな?)


「キャサリンで愛称はケイトって決めたのですよ」


(へー あたしキャサリン 愛称はケイト って事は、普段はケイトって呼ばれるんだ。)


「キャサリンね。本当に生まれ変わりだと思っているんだね。

神様の贈り物だからね。」

ギルが、微笑みながらあたしの顔見ていた。

「ケイト 健康で、お父さんとお母さんを幸せにしてくれ」


「・・・・ 大事に育てますよ。」

バードが静かに、ケイトを見て、言った。


「ティフ・・・ 来てもらえるかな?」とギルが呼んだ。

ティフと呼ばれるやはり30代の女性が応接室に来た。


「ギル、もう話は終わったの?」とあたしを見ながら、言ってる。


「ああ、君にも紹介をしないとね。この子は、バートとレスの子供になった、キャサリン。愛称はケイトだ。」と紹介された。


「キャサリン・・・・ ケイト・・・ 」ティフの頬には大粒の涙が流れていた。

「ギル、この子は・・・・」と言うと

「ああ、バードとレスが、昨日、教会の帰りに、森の入り口で見つけ保護をしたんだ。そして、この子は神様からの贈り物として、彼たちの子供として、育てる事になったよ」

ティフに向けて眉を顰めながら言った。


ティフは、バードとレスを見ながら、

「二人とももう大丈夫なのね。ケイティの事はとても残念な事だったわ。忘れる事は出来ないでしょうけど、今は、神様からの贈り物・・・ ケイトを育てる為にも、前を向いて歩くのよ。」と笑顔に戻っていた。


「ティフ 今から、教会に行って神父に会おうと思うんだ。

馬車は使えるかな?悪いけど準備頼める?」

「ええ 大丈夫よ。3人も一緒かしら、それなら、少し待ってて。すぐ準備するわ」

ティフは馬車の準備の為、席を外した。


「ケイトは、お利口さんだね、僕達の話の邪魔にならない様に泣かないね」とギルが頭を撫でながらいった。


(そりゃそうですよ。中身は40才のおばさんよ。

話の邪魔はしないわよ)



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