第38話

バードが、亡くなって、一年が過ぎようとしている。


レスと二人の生活。始めの頃は、色々な事に慣れず、何もかもをレスが、一人で無理をしながらでも、やっていた。

どんなに、ケイトが、手伝うと言っても、させてもらえなかった。

ある日、レスが、過労で倒れてた。


ベットに横になっている、レスに向かって、怒った。

「お母さん、嫌だーー、どうして、無理ばっかりして、私、お母さんが、居なくなったら、どうすればいいのよ。」


「ケイト、ごめん、無理してるつもりはなかったのよ。」微笑んでくれている。


「いくら、父さんが笑って過ごせったって、今は、無理してるんだから、辛い時は、辛いでいいじゃない。お母さん、お願いだから、長生きしてね。私も手伝うから。」


バードが亡くなって、畑、家事、薪集めなど、男の仕事も女の仕事も、レスは一人で熟そうとして、倒れたのだ。


レスが、過労で倒れた事で、ギル村長を始め村人達は、バードの畑を村の畑とし、その作物や収益は、レスの給金として、支払い、レスは、学舎と教会の雑用係で雇われる事になった。


それからは、ケイトは、家事を任せれるようになっている。時間があれば、魔法の勉強をしているが、レスには、内緒した。


バードが亡くなった、あの日、バードと最後に話せた事は、レスとケイトだけの秘密になっている。それから、レスは、魔法については、何も言わない。


やっと、バードが居ない生活に慣れてきた。

いや、レスと二人の生活に、無理に慣れ様としている。


「お母さん、無理してない?なんか痩せたように思うの。教会の仕事が多いの?サイモン神父に代わってから忙しそうだもの。」


ドミニク神父は、王都の教会本部へ戻り、交代でサイモン神父が王都から着任していた。


「サイモン神父も優しいわよ。だたね、片付けが苦手みたいなの。」


「何それ?」


「物がどこにあるかわからないから、探す、探すと散らかる、散らかると、また物がどこにあるかわからなくなる。って悪循環なのよ、だから、片付けで忙しくなってるの。」


ケイトでも片付け出来るのに。今度、サイモン神父に片付けを教えないと、いけないね。」


「そうね、少し厳しく教えてもいいわよ。」と笑って話をするようになっていた。


愚痴を言いたい時には、ケイティの横にある、バードのお墓に話しかる。


「お父さん、ケイティと楽しく過ごせてる?最近、お母さん、痩せてきているの。無理しないでって言ってるのに、無理はしてないって言うのよ。

あたし、一人になるのは、嫌なの、お父さん、お母さんに言ってよ、ケイトに頼れって。ケイトを一人にするな。って。ケイティには、悪いけど、もう少しお母さんをあたしに貸して、お願い。」


バードからの返事がない事は解っているけど、こうやって、時々レスの事を話しかけている。


ギル村長を始め、村の人達は、レスとケイトの生活を気にかけ、よく様子を見にくる。


今日は、サリーが、おかずを持って、来てくれた。

「ケイト、これ多めに作ったの。お母さんに食べさせて。」


「サリーさん、いつもありがとう。助かります。」


「ケイト、最近、お母さん、また痩せたよね、食べてないんじゃない?それとも、寝てない?また、無理してるんじゃないのかい?」


「うん、あたしも、心配なの。お母さんに聞いたら、何もないって、言うし、でも、食事の量が少ないの、一生懸命に作ってもあまり食べてもらえない、無理に食べると、戻してしまうから、強く言えないの。」


「そうだね、ケイト、今度、お母さんを一日貸してもらうよ」


「はい、大丈夫ですけど・・・・、お母さんの事、頼みます。

あたし、お母さんしかいないんですよ。お願いします。」

サリーに深々と頭を下げて、頼んだ。


暫くして、領主様の指示で医師がこの村にやって来た。

話を聞くと、この村の大人達、全ての健康を見に来たと。


「ケイト、お母さんいる?」

「居ます。ちょっと待ってください。お母さん、サリーさん、迎えにきたよ。」

「はーい、今、行きます。」


教会の隣の学舎に、医師が来て健康診察を行っている。

男性と女性に分けて、全員の健康診察だった。


健康診察に興味があって、ケイト達、子供も一緒も付いて行った。


学舎には、沢山の大人が列を作っている。

ふと、見ると、ギル村長とバルフォアボール辺境伯が、様子を伺っていた。

そこに、サリーがギル村長の所に駆け寄って、頭を下げ、挨拶をしているようだった。

挨拶が終わったのだろう、すぐにレス達の所に戻って行った。


(健康診断よね。サリーがギル村長に頼んだの?バルフォアボール辺境伯に村長が頼んだ?これって、レスの為に頼んだの?まさか〜、レス一人の為って事は、ないよね。)


「ケイト、裏から見ようぜ」とピータが声を掛けてきた。

「うん、行くわ、ちょっと待って」


裏に周り、窓からそーっと覗いてみると、

医者が、少し話した後に、手をかざすだけ、だった。


「ねえ、あれ、何?手を翳すだけ?」

「そうだな。俺でも出来るかも。」


「こら、二人とも、何してる。こっちに来るんだ。」

そこには、懐かしい、姿があった。



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