第1章 転生しました
第1話
どこにでもいる 一人の女性だと思う。
敢えて言うなら、両親は普通なのに、
少し、身体が丸かった。ドラム缶の様な体系だった事。
顔の個々のパーツはそこそこだけど、顔の大きさと配置が、良くなかった事だった。
理由は、両親ともに一人っ子、そして、
どちらの、祖父母にしても、孫は私一人なのだ。
甘やかされていたと自覚はしている。
幼い頃は、食べたい時に、好きなだけ食べさせてもらい。
行きたいと言えば、何処にでも行かせて貰っていた。
両親は、教育熱心では無かったが、学力が無ければ、嫁ぐ時に大変だろうからと、幼い時から、塾などに通い、学力をつけていた。
中学生になり、他の女生徒より、三回りほど、身体が大きく、周りの男子からは、豚、ブス、ドラムと心の無い言葉を浴びせられた。
運動をして、痩せる努力は全くしなった。
太っていると、動くのは、面倒なのだ、だから動かないそして、太るのループに陥っていたから。
容姿が駄目なら、学力で見返そうと、必死に勉強をした。
中学、高校と学力では、学年上位にいつも入っていた。
しかし、それに比例するように友達はいなくなっていった。
大学受験では、難関大学に挑戦して、入学も出来た。
高校の教師達は、難関大学の合格者が出た事を自分たちの指導だと自慢していた。
高校の先生よりも、塾の講師の方が、指導は上手だったけど敢えて口にはしない。
まあ、寝る間も惜しんで、勉強したのは
難関大学に合格して、両方の祖父母と両親は、『努力したから、合格出来たんだよ』と 喜んでくれた。
しかし、高校の同級生は誰も、声は掛けてこなかった。
隣に座っていた同級生には、「おめでとう!! 努力したからだよ」「頑張ったじゃん」などと声が掛けられていた。
私は難関大を受かったのに下を向いていた。
友人と呼べる人はいない、実際に誰も声を掛けられないと、寂しさと虚しさを感じた。
大学に通い始め、ゼミ、講義など真面目に受けていた。
定期試験や論文などは、教授からは褒められる程だった。
ここでも、声を掛けてくれる人はいなかった。
そして、自分から声を掛ける勇気も無かった。
大学3年になり、就職活動を始めた。
中々自分がしたいと思うような会社の合格がもらえずにいた。
一次審査は合格するのだが、最終面接で落とされる、パターンになっていた。
面接で落とされるのは、やはり容姿の問題だろうか?
少しは、食事とお菓子を控えて、少しは痩せたと思っているが、
それでも、二回り位太っている。
両親からは、『仕事もだけど、早く結婚して、子供が沢山出来ると良いわね。』と言われる様になっていた。
この頃、両親の親、祖父母が無くなっていたからだ。
大学に入り、続けて、亡くなってしまた。
両親ともに一人っ子だったから、葬式も大変だった。
両親の祖父母は兄弟がいたので、両親の伯父や伯母はいるし、従兄弟も居た。
葬式後に母が「式部 貴方には、伯父や伯母も居ないし、従兄弟も居ないのね」と言った。
大学4年でやっと、就職先がきまった。
大手スーパーだった。
両親は、仕事は無理せず、早く結婚して、孫でも見せて欲しいと
言っていた。
やっと、入社したのだから、仕事実績を積もうと思った。
そこで、配属されたのは、本社勤務でなく小さなスーパー。
店長の指示で、最初の頃は、惣菜部門で、キャベツの千切りはまだ良い、天ぷら唐揚げなどの揚げ物担当になると、油で気分が悪くて、食事が出来なくなる。
油を使う、惣菜担当はパートは嫌がっていたから、 よく担当にまわされた。
次は、開店前に商品出し、賞味期限を確認しながら、先入先出を行う。
担当のパートさんが休みの時は、代わりに全ての商品出しを行った。
たまに、間違って、賞味期限が早いのを後に置いていると、次の日にパートさんから、「やっぱり、社員さんは良いわよね、商品出しも、出来なくても、高学歴で高い給料もらえるんだから、パートとは違うわ」などと嫌味を言われた。
「すみません。ちゃんと確認したのですけど」
「つもりで仕事されてもね」と渋い顔をされる。
商品出し、総菜の揚げ物作りにレジ打ちと、忙しい所に回されるのだから、一つの担当だけのおばちゃんと違うと叫びたかった。
パートのおばちゃん達の仕事の応援。
後方支援と言う名目の仕事だった。
パートのおばちゃんが強い。若い社員よりも、力を持っている。
いざとなれば、すぐに辞めてしまう。人員不足になると困るから、ご機嫌を取りながらの仕事をしなければならなかった。
セールが行われる日は、昼休み時間もない。
パートのおばちゃんは、時間通りに休憩をとる。
決められた仕事以上はしない。
スーパーと言うサービス業の為に、土、日、祭日は必ず出勤していた。
世間で言う、ゴールデンウィーク、シルバーウィークなど経験をした事がない。
パートのおばちゃんは、家庭があるから、休むけど
社員なのだから休めない。
両親が、仕事を辞めて、他で働けば、人並みの休みの取れる職場に、転職を勧められていた。
それでも、働いた。
突然の出来事だった。
両親が交通事故に巻込まれて、亡くなった。
両親ともに、一人っ子、伯父伯母も従兄弟も居ない。
私も一人っ子、悲しくても、一緒に悲しんでくれる人が居なかった。
とうとう一人になってしまった。
今まで住んでいた、家は広く感じた。
一人は寂しかった。
寂しさを紛らわす為に、あれ程、両親が転職を勧めたにも関わらず、仕事を続けた。
仕事を続けて、やっと本社勤務になった。
同期入社でも、三流大学卒でも、美人だと本社の総務、容姿で選別されていた。
それでも、腐らずに、まじめに仕事に取組み、本社勤務になった。
全スーパーの総菜担当だ。体よく言えば、欠員補充人員。
でも、やっと、だった。本社勤務。
パートのおばちゃん達の急な休みにも、その埋め合わせにシフトに入り仕事をした。
それでも、腐らずに、仕事をこなした。
そして、やっと、課長補佐になれた。
仕事中心の生活をして、やっと慣れた職位だ。
でも、それは、課長補佐。ただの補佐
男性社員よりも、多く働き、仕事の努力が認められたと思った。
同期の女性は、結婚し、子供の出産や小学校に上がる時に、辞めて行った。
同期の女性は私一人、同期の男性社員は、課長職以上。
男女平等と言いうけど、やはり、男女の違いは出てくる。
必死に働いていても、上役は男性、やはり派閥も男性有利に働く。
やっとだった。
大げさに言えば、
パートのおばちゃん・・・
そう、仕事を中心に生活している
でも、実際は、若手社員の彼女からすると、
たまたま、給湯室で「むらさき、自分は若いと思ってるよ。パートさん達をおばちゃんだって、笑っちゃうよね。」と影口を叩かれていた。
敢えて、おばちゃんと呼んでいるのだから、言われることも、解っているし、知っている事だ。
彼女からすれば、親と同じくらいの年齢なのだから、仕方がない事だろう。
しかし、彼女には、言っていた「仕事中心の生活をして、やっと掴んだ役職なのよ」と
彼女は去年入社して、私が課長補佐として教育指導を担当した子だった。
彼女は、スタイルも良く、顔の作りも良かった。
そして、男性社員から、良く声を掛けられ、仕草も可愛い。
だから、
其れよりも、何か問題があると、すぐに男性社員にむらさきから、怒られると言いに行っていた。
彼女が、一人前の社会人として、仕事に責任を持ち、上司を敬う様な人材に育てたかった。
男性社員の教育の方が楽だったかもしれないと思った。
彼女が、同意を求めた相手は、
「仕方がないんじゃない。あの容姿だけど、自覚がないんだよね。まだ、自分は若くて、出来ると、勘違いしてるんだから、課長補佐になったのも、会社として、男女平等に扱ってると社会へのアピールだし、
入社自体も、理系の大卒の女子あの頃は入社させて、男女平等です。と社会へのアピールだったよ」
と笑っていた。
彼女が吹聴している事は、風の噂なら、ここまで胸に突き刺さる事は無かったろう。
同期から発せられた言葉、本当の事だろう。
入社して、小さなスーパーに配属。嫌がらせの様な仕事を振って、休みも平日 自分から辞める事を会社は、求めていたのだろう。
今回は、女性で辞めていなかったから、役職を与えた。
「そっか、社会へのアピールで、課長補佐になれたんだ。
必死に働いた結果じゃないんだ。」虚しさが増した。
その日、会社入って初めての、有給休暇の願いを出した。
誰も居ない家に帰ってから、虚しさを紛らわす様に飲みたかった。やけ酒だった。
でも、どんなに飲んでも、酔えなかった。
一人、愚痴りながら、ワインを開け、酒を飲み、ここまでは、しっかり覚えている。
そうだ、酔えなくて、酒を買い足しに、家を出た時に、突然、車が出て来た。
もしかして、酒を買いに行くときに、車に跳ねられて死んだ?
まあいいか、もう、何もないのだから。
そう言えば、
テーブルの上に、さっき迄飲んでいた、空き瓶が・・・
女性の部屋じゃないよな。
掃除、洗濯はしているけど、食事はスーパーの総菜と酒だったし
冷蔵庫は酒と氷・・・
独身男性の部屋と間違われるわ。
せめてもの救いは、整理整頓がされているって事だけか。
誰も、
葬式って、誰が出してくれる?
葬式の心配はいらないか。
私の人生って・・・・
何だったのだろう?
何も残らなかったな。
でも、今。
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