第4話 人間怖い!!

 触手は私の首や手足、腰を締め付けて苦しめる。


 もう! どうしたらこの触手は解けるのよ!?


 絡まる触手の中で暴れる私を悪魔は6つの瞳で、じっくりと眺める。

 まるで大人の足に幼子が弱々しい力で殴り付けているのを、無駄なあがきと見下ろすようだった。


 幽霊である今の私は脳ミソがないから若干考えが足りないので、動物みたく本能で反撃することしか出来ない。

 暴れ回って触手に噛み付く。

 悪魔は以外にも敏感で、慌てて私を投げ放なって絡む触手を解く。


 悪魔がたじろいだスキに上空へロケットのように飛び上がり逃げた。


 こうなったら地縛霊にこだわってられない。

 このまま大気圏の外へ出て、しばらくの間、宇宙空間で漂っていよう。

 さすがの霊界アベンジャーズも宇宙までは追って来れない。


 あ〜あ、せっかく安住の地を見つけたと思ったのに、また居場所を無くしちゃたなぁ……。


 私は益々勢いを付けて加速。

 雲を貫きグングンときらめく天体が視界に迫って来ると、ついに大気圏の外へ辿り着いた。

 地球の大気圏と宇宙の狭間の境界線では、人の血液は沸騰するけど、幽体の私には関係ない。

 ロケットと同じ速さで真上に飛行したって、全身がバラバラになって燃え尽きることもない。


 幽霊最高!!


 目をつむり暗黒宇宙を優雅に泳いでいると、幽体を何かで縛られたような窮屈な感覚におちいる。

 全体が痺れて目眩まで始まった。


 目を開けて自分の幽体を確認すると、雷が針金のように巻き付いている。

 

 今度は何ぃぃいい!?


 そのまま地球の中まで雷に引きずり落とされた。


 廃墟村上空まで牽引されると不思議なことに、村を取り巻く森からサンゴ礁のような数えきれない雷が放たれ、空へ広がっていた。


 サンゴ礁を模した雷のフィールドへ落ちると、繭の中へ入ったように取り込まれ、幽体が電撃で痺れる。

 手も足も引き千切られそう。

 体の表面が日焼けしたようにジリジリと焼けていく。


 雷の発信源は廃墟村。

 しばらくして村から放たれた雷は消えたけど、2回目の村から放たれた雷に打たれ意識が遠のく。

 幽霊の私は村の地面へ落下した。


 気が付いた時には雷の爆心地。


 廃墟村では科学者が撮影隊へボックス型の装着の説明をしていた。


「これは電磁波発生装着です。このモニターで幽霊のエネルギー波を感知し、装置から伸びるアンテナから強い電磁波を発生させ霊に当てます。そうすることでエネルギーが相殺して霊は消滅します」


「つまり電磁気を使ったハイテク除霊ということですね?」


「非科学的な表現ですが解りやすく言うと、そうなります」


 私は悟った。

 もはや、宇宙にすら隠れる場所が無い、と。


 科学者はモニターに映る影を見て興奮していた。


「おぉ! 今ます。霊は今、我々の側にいますよ。電磁波、オン!」


 私は一目瞭然に飛んで逃げる。

 こうなったら廃墟村から脱出しないと、と思い立ち廃墟村の出入り口まで飛ぶと、見えない壁に頭がぶち当たり目眩を起こす。


 何が起きたか周囲を見る。

 すると、木々の間に御札が貼ってあった。

 護符によって張り巡らされた結界。


 なんでこんなものが?


 その張本人がわかった。


「ウヒヒヒッ! み〜つけた〜」


 ぎゃぁぁぁあああ!!!


 霊媒師、霊界ババァが私を逃さない為、木々を利用した護符による結界を作ったのだった。

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