白煙

9人は方方に散りながらも密集した

皆が今辿ってきた小道に目線を向ける


”広場”に戻った安心感と車のライトに浮かび上がるお互いの姿に9人でいるという妙な自信が沸き上がる

そして冷静さを装い今の出来事を恐る恐る振り返る


「声したよな!」

「ふう・・みたいなやつだろ?」

「おいおいまじか」

「みんな聞いてんじゃんかよ!」

「後ろにいたよ・・」

「見たのか?」

「いや、俺のすぐ後ろから声したから・・」

「どっかにいんじゃねーのか?」


広場を木々が囲んでいる

木々の先に先ほどの小道の入口がありその先に下る階段がある

その先は崖があり下は沢が流れている


9人は思い思いに車のライトが照らすその先に目を向けている


正面はライトに照らされておりそれなりに明るかった

ただ、目線を上に向けると光は無く真っ暗な闇だ


3台の車の前にそれぞれが程よく散開している

先ほどの興奮は冷めず所々で会話が弾んでいる


私は3台のうち、真ん中の車の前にいる


そのボンネットに腰を下ろし落ち着きなくあちこちへ目を向けている


私の隣には九州の先輩がいた

霊感が強いという先輩だ


「先輩、さっきの声は・・・」

「まあまあ、あまり言わない方がいい」

「先輩も聞きました?」

「・・もう少ししたら帰ろう」


そんなやり取りをしつつも周囲をキョロキョロしている私だったが、ここである違和感に気付く・・・


・・白い煙が漂っている・・


それは、私の正面、車のライトが照らす先から上に逸れた木々の上の方にあった。




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