霞鳴

「行けるのかこれ」


それは小さな入り口だった

まるで木々の中にそこだけくり抜いたように開いている


”ここ”に到着してそれなりに時間も経っていた


思い思いに車の前に塊り、思い思いに暗闇に目を凝らし、そんな時間を過ごしながらも不可解な現象は未だないことを、良しとせず、退屈と思う気持ちは時に無謀とも言える根拠のない強気と変わることがある


それは刺激を求めているのか、それとも”霊を見る”という漠然とした目標に対して少しでも努力したいという探求心なのかはわからない


9人は密集した


この小さな入り口をくぐると下へ下る階段が続いていた

手元に何も灯りが無いのでまず足元が見えず危ない

しばらく車のライトを光源としていたために暗闇に目が追い付かない


「見えない見えない!」

「おいそんな押すなよ」

「待った、ゆっくり」


小さな細い階段を密集した9人が進む


しかしそれは直ぐに終わった


その階段は少し下るとそこで行き止まり終わっていた


当たり前だが沢の音が先ほどより一層近い

それは真下から聞こえる

行き止まりの先が崖であることがわかる


展望台だろうか・・一体何のために・・・

それはあまりにも中途半端であった


「戻ろうか」


沢の音を背にして男たちは階段を上り始めた・・・


・・・


その時だった


・・・


「ん?」

「おい!!」

「ふざけんなよ!!」

「静かに!!」


・・・


男たちは足を止める


・・・


「・・聞こえたよね?」

「女の声したよな!?」

「まじでふざけんなよ!」


・・・


『 ふぅ・・ん・・ 』


・・・


二度目のそれははっきりと耳に届いた


後ろだ


我々の後ろからだ


「早く上がれ早く上がれ」

「何だ今の?誰?」

「いいから行けって!!!」

「押すな!危ない」

『 ・・・ううぅ・・・ん 』

「??あ??」

「後ろになんかいるぞ!」

「行けよ早く!!!!」

『 ぅうううううぅぅぅ 』

「何何?」

「やめろまじで!」

「俺じゃねーよ!!」


9人の男たちはこの短い階段を上ると吐き出されるように入口から飛び出した


そこには変わらずエンジンかけライトを照らし続けている3台の車が並んでいた。









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