地元

私は高校を卒業後、都内の専門学校に通っていた

そこでしか取得出来ない資格を取るために全国から多くの生徒が集まっているような学校だった


専門学校というのは年齢層も幅が広い


私はそんな中にあって比較的多くの友人に恵まれ、それなりに充実した学校生活を送っていた


丁度車の免許も取得し、暇があれば友人と行く当てもなく車でどこかに出かける

夜な夜な出かける

帰りが朝方になることも珍しくなかった

そんな日々がただ楽しかった


その中に一人、奥多摩から通っている友人がいた


奥多摩・・・


私の中にふと、ある言葉が過った


・・・いつか思い出すだろう・・・


ああ、あの時の言葉だ


私は急に思いついたかのように、あの時きいた場所を知っているか尋ねた


「知ってるよ」


奥多摩の彼はそう短く答えた


「地元だからね」


私の中でこの時、腹は決まった


「今度、行かないか?案内してほしい」


彼はあきれたように笑いながら


「はあ?あんなとこに何しにいくんだよ」


私は目的をストレートに告げた


「幽霊が見たい」


彼は顔を硬直させ、


「絶対に行かないよ。絶対に行かない。別に霊が怖いとかじゃないんだ。あそこは行っちゃいけない。地元でもそういうところなんだ・・・」



・・・それから間もない、夏の夜


学校の近くの集合場所には、私を含め男ばかり9人と、3台の車が屯っていた


奥多摩の彼は道中で合流することになっている

行くことを最後まで拒んでいた彼だったが、近くまでの道案内だけでよいという条件で何とか来ることになった


話しは早かった

何かがきっかけで私が聞いた話が仲間内で広がり、年長者であった先輩の一人がみんなで一度行ってみないかと言い出したのだ


その先輩は九州の人で、ほんとか嘘か、霊感が元々あるのだという

何もわからない者たちだけでそういう場所に行って何かあってからでは遅い、引き際を見ることが出来る人間がいないと危ないという


先輩自身、その場所に興味があるのは事実だが、とにかく現地で何かあった際には絶対に自分の言うことを聞くということを条件として皆に約束をさせた上での、同行であった


9人を乗せた3台の車は、夜の幹線道路を奥多摩に向け、走り出したのだった・・・






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