第8話
今回の事件担当の中村刑事が到着した。日吉は中村刑事に経緯を説明した後、邪魔をしないように見守る。
中村刑事は西脇に尋ねる。
「今日の午後1時から3時の間、どこに居ましたか?」
「場外馬券場です。今日はこの家で朝食をとった後、9時半に家を出ました。その時、妻に見送ってもらいました」
「競馬が趣味なんですか?」
「ええ。特に予定がなければ、毎週土日は競馬をしています。場外馬券場には防犯カメラがあると思うので、映っていると思いますよ」
その後、場外馬券場の防犯カメラで西脇が確認された。だが、調査を進めると、何と最近、由美子に多額の保険金が掛けられていることが分かった。受取人はもちろん、夫の西脇良平だ。
念の為、早川にもアリバイを確認したが、午後1時から3時の間に自宅駐車場の防犯カメラに2度映っていて、犯行は無理そうだ。
「因みに日吉さん、アリバイを確認させてもらって良いですか?」
「えっ?! ああ、そうですね。えっと……午後1時から3時は自宅に居ました。証明してくれる人は居ません」
まさか、警察官の自分が疑われると思わなかった為、挙動不審なリアクションをとってしまう。
「スマホを確認させて頂いて宜しいですか?」
日吉はカバンからスマホを取り出すと、重大な事に気が付いた。その様子を中村刑事は見逃さない。
「どうかされました?」
「……昨日、彼女と電話で話しました。いや、もちろん、私が殺した訳じゃないですよ」
テンパり過ぎ。日吉は更に疑われる事になる。そもそも、日吉はプロボクサー。凶器が無くても素手で殴り殺せると言う事は周知の事実だ。だが、これだけ怪しくても日吉は警察官。身元がしっかりしているので、いきなり逮捕されるような事は無い。
西脇がかなり怪しいながらもアリバイが確認された為、逮捕とはならず、逆に、日吉の方が怪しい感じになってしまった。今日のところは、中村刑事に連絡先だけ教えて自宅へ戻った。
早川の能力を信用するなら、西脇が山村さんを殺している。それに、西脇の表情の変化が気になる。必ず事件に関わっている筈だ。アリバイ偽装なのか共犯者がいるのか。山村さん……こんな事になるなんて……。
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