第7話

そして、西脇が次の部屋へ入った直後。

「由美子?!」「触らないでください!」

西脇と上司がほぼ同時に声を張り上げた。日吉は部屋を覗く。

女性がうつ伏せに倒れている状態で、血は出ていないようだが、ペン立てが床で倒れ、ペンが散乱している。綺麗好きとの事なので、ただ寝ているだけの筈が無い。頭を鈍器で殴られたのだろうか? 先輩警察官が脈をとる。

「脈が無い。救急車と署に連絡を」

先輩警察官は後輩警察官へ指示を出した。


早川さんの言う通りになってしまった。ん? この女性……由美子? まさか?


日吉は頭が真っ白になって、フラフラとうつ伏せの女性に近づいた。

「日吉さん!!」

先輩警察官が日吉の右腕を掴んだ。その瞬間、日吉は我に返った。警察官にあるまじき行為をとろうとしていたのだ。現場げんじょう保存を忘れて、女性の顔を確認しようとしていた。

「す、すみません」

「どうしたんですか?」

「この女性……友人かも知れません」

「何ですって?!」

日吉は冷静になり、周りの状況を確認する。西脇を見ると口を手で覆っている為、ハッキリとは言えないが、ショックと言うより驚きや困惑の表情のように見えた。早川は死体というものを生で初めて見る筈なのに、全く動揺していない。西脇の心の中の映像を見たからなのだろうか?



被害者は西脇良平の妻、由美子24歳。日吉の同級生。死因は後頭部を鈍器のような物で複数回殴られた事による脳挫傷。凶器と由美子のスマホは見つかっていない。死亡推定時刻は今日、午後1時から3時の間。

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