アイスコーヒー、何で飲むか?
アーカーシャチャンネル
それがきっかけだった
【有名バーチャル配信者、コンビニA社のアイスコーヒーをコンビニB社と語って炎上】
今、SNS上で話題となっているニュースの一つが、これだった。何故と言われると疑問が残るだろうが。
【コンビニB社から金をもらっているのでは?】
【違うな。コンビニA社を炎上させたいのではないか】
【それであれば別の手段を使うだろう。わかりやすいミスで炎上なんてありえない】
【他の話題から遠ざけるためのフェイクニュースか?】
【もしくは、アフィリエイト目当てのものかもしれない】
様々な憶測は存在するが、その半数近くはこのニュースがフェイクニュースだという事。しかし、『バズり』目当てのユーザーが炎上を広げるために拡散しているため、こうした意見があったとしても伝わらないのが現状だろう。
「しかし、これがなぜに炎上したのか? アイスコーヒーを飲んでいただけではないのか」
この人物がSNSをチェックし、このニュースを見て疑うのは当然の話だ。
【この飲んでいるタンブラーに問題がある。B社のコンビニで使われているデザインだ】
【写真自体合成では? 飲んでいたのはリアル配信者ではない。それを踏まえれば合成画像はいくらでもできる】
【あれをB社のデザインというには無理があるだろう。第一、ロゴマークに見えるような部分があるのか?】
炎上しているのはバーチャル配信者、いわゆるアバターを使って配信活動をしている。
【逆に、あれをなりすまし配信者とは考えないのか?】
【いわゆる特注アバターでなければ、なりすましアバターをカスタマイズするのは容易だ】
【しかし、そこまでの労力を使って炎上させる理由がない。悪意でもあれば話は別だが】
結局、一連のつぶやきまとめを見ても結論は見いだせず、このアイスコーヒー論争はいわゆる釣りや晒しの類として、まとめを見ていた人物はスルーしようと考えた。
「アイスコーヒーの味などに言及した覚えはないのに」
今回の炎上しているバーチャル配信者の方は、炎上した理由を察してはいるのだが……何故に炎上したのかはわかっていない。
「自分は、ただアイスコーヒーをタンブラーで飲んでいただけ……」
アイスコーヒーをコーヒーカップではなく、タンブラーで飲み、配信をしていただけである。
【コンビニB社から金をもらっているのでは?】
【違うな。コンビニA社を炎上させたいのではないか】
バーチャル配信者の中には企業案件としてコンビニのコラボもあるだろう。しかし、他社にネガティブイメージを植え付けるような配信者を他の企業が採用するのか?
【他の話題から遠ざけるためのフェイクニュースか?】
この時期は、外出自粛、些細なぶつかり合い、特定ジャンルの批判炎上など……そうしたネガティブなニュースが多く、拡散していたニュースを見てストレス発散させるために炎上という低レベルな炎上も散見された。
【この飲んでいるタンブラーに問題がある。B社のコンビニで使われているデザインだ】
【写真自体合成では? 飲んでいたのはリアル配信者ではない。それを踏まえれば合成画像はいくらでもできる】
確かにCG合成技術は発展しており、こうした細かい部分の修正は容易だろう。しかし、生配信でそこまでのことをやるには相当な技術が必要だ。
【あれをB社のデザインというには無理があるだろう。第一、ロゴマークに見えるような部分があるのか?】
改めて彼女は、アイスコーヒーを飲み干したタンブラーをチェックする。そのタンブラーにB社のコンビニロゴはないし、A社のロゴもない。
【しかし、そこまでの労力を使って炎上させる理由がない。悪意でもあれば話は別だが】
スレの後半で言及された発言、確かに悪意を持って炎上させるような人物はゼロではない。些細な炎上でさえ、悪意をこめただけで炎上のレベルは跳ね上がるのだ。
「やはり、そういう事か」
そして、彼女はある選択を取ることにする。WEB小説という手段も考えたが、あくまでも『桶は桶屋』という考えを持っているため、小説ではなく配信という手段を取ることにした。
アイスコーヒー論争で炎上してからわずか三日というタイミング、彼女は再び生配信を始める。
『皆さんに伝えたいことがあります。とあるまとめサイトで話題のアイスコーヒー論争です』
画面に映し出されたのは、女騎士と言えるようなアバターの女性、つまり今回の一件で炎上していたバーチャル配信者だ。
『このタンブラーを見てください。これがB社のロゴに見えますか?』
彼女が画面で見せたもの、それはあの時に飲んでいたアイスコーヒー、それを注いでいたタンブラーである。
【まとめサイトで言っていたのと違う】
【どういうことだ? あの画像が偽物だったと?】
【やっぱり、生配信の画像と違っていたか】
実は、この画像が偽物だという事は配信者本人がまとめサイトに取り上げられた段階で知っていた。しかし、それでも言わなかったのには理由がある。
『この画像を発見したその日の段階で内容は把握していましたが、感情的になって正体バレをしてしまう危険があるなら、様子を見ることにした次第です』
自分が感情的になって指摘しても、他のまとめサイトが炎上させるために記事としてアップする……そう考えた彼女は、まとめサイトを泳がせていた。最終的に、それが正しかったことになるが。
『感情的になって否定しても、そこを悪用して炎上させる他のまとめサイトがいるでしょう。だからといって規制法案などを……という極論も正しいかと思うと、それも違います』
次の瞬間にとった行動、それは何とアイスコーヒーをタンブラーにそそぐこと……つまり、炎上した元凶の行動をとったのである。
『この些細な行動でも炎上させようという人物は、悪意を持って記事を書いて拡散するでしょう。一方で、信者が擁護したとしても……その争いで炎上するのも明白です』
タンブラーにそそいだアイスコーヒーを彼女は飲み始める。これを見て、視聴者はどう思うのかはそれぞれの自由と考えるだろう。
『SNSの悪意を持った炎上、それは『バズり』勢力やブラックマネーなどに悪用され、それが次第に犯罪となっていくのです』
アイスコーヒーを飲み干し、彼女は一呼吸おいて宣言した。悪意あるSNS炎上は負の感情を生み出すだけで誰も得はしない。ネガティブ情報の発信なんて、もってのほかだ。
『何の情報を配信するか……そこまで縛ることはしませんが、悪意ある配信やネガティブニュースの拡散に自分を利用するのは、犯罪行為と同等なのです』
バーチャルアバターの二次創作が存在し、ファンアートだけでなくファンフィクションも存在するような時代に、彼女は宣言したのだ。ネガティブニュースの存在がSNSの悪意を増長させているのだ、と。
『まとめサイトなどは鵜呑みにせず、そこから自分の意見を発信できるようにするのが一番重要なのよ』
こうして、彼女の緊急生配信は終わった。この配信を見て、どのような反応をするのかは人それぞれだが、間違ってもこの配信を悪用してネガティブニュースを拡散し、現実世界を混乱に陥れるのだけは勘弁してほしい、そう彼女は願っている。
アイスコーヒー、何で飲むか? アーカーシャチャンネル @akari-novel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます